[要旨]
株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、多くの仕事では高度なスキルは必要がないため、最初は、各従業員のそれまでの経験の差によってスキルの差が現れるものの、経験を重ねることによって、その差は縮まってくるということです。そして、そのような状態になると、組織全体として成長のスピードが高まるため、リーダーは、組織がそのようなステージに至るよう促すことが大切だということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「リーダーの仮面-『いちプレーヤー』から『マネジャー』に頭を切り替える思考法」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、リーダーはトッププレーヤーになってはいけないということであり、なぜなら、リーダーにはマネジャーとして組織全体を俯瞰し、組織を指揮する役割があり、この役割に徹することが、組織全体の成果を高めることになるからということについて説明しました。
これに続いて、安藤さんは、多くの仕事において高度なスキルはほとんど必要ないということについて述べておられます。「身も蓋もないことを言ってしまうと、多くの仕事において、高度なスキルは必要ないことがほとんどです。もちろん、専門的で職人のような職種ではスキルが必要かもしれませんが、ホワイトカラーを中心とした会社員であれば、事務スキルもコミュ二ケーションスキルも、一定のところで高止まりします。そもそも人間の能力に、『そこまでの差はない』と考えたほうがよいでしょう。
ただし、新入社員であれば、結果の差は大きく出ます。それは、『これまでの経験と任された仕事がどれくらいマッチしているか』の差があるからです。バイト経験豊富で人と話すことが得意であるとか、勉強熱心なので默々と作業することが得意であるなどの違いからくる差です。しかし、そんな能力の差は、すぐに埋まります。経験を積み上げていくと、どんどん人間の限界値に集約されていきます。メンバーたちに差がなくなっていくわけです。
そうすると、切磋琢磨が起こり、トップの座が何度も入れ替わるようになり、全体のレベルが上がっていき=す。どんどんメンバー間の差が縮まりながら、全体としては伸びていく。これが正しい成長の状態なのです。識学では、数百人のコールセンターの営業成績の数字を分析したことがあります。そこでも、同じような結果が出ました。コールセンターで必要なスキルは、そこまで難しいものではありません。
元々電話営業の仕事を経験していたような人が最初の頃は有利で、トツプと最下位の差は大きく開いていました。しかし、話すことが苦手だと思っていた人も、やっていくうちにスキルを身につけていきます。ロベタな人でも一度コツをつかむと、ものすごい勢いで成長していきます。組織がこのような状態になると、全体の成長スピードが格段に伸ぴる瞬間がおとずれます。そうなるように全体のステージを引き上げるのが、リーダーの仕事なのです」(245ページ)
安藤さんのご指摘を読んで、確かに、私が大学卒業後に勤務した銀行業務も、ほとんどが、銀行に勤務してから覚えたものだということに気づきました。これは、銀行業務に限らないことですが、銀行業務は、ほかの仕事をしている人から見ると難しい仕事に思える面もあるかもしれませんし、そういう部分もあるかもしれません。だからといって、限られた人にしかできない仕事かというと、特に、新卒の人であれば、数年で多くの仕事を身につけることができます。
安藤さんは、「多くの仕事に高度なスキルは必要ない」と、少しきつめの表現をしていますが、これは、裏を返せば、多くの仕事は誰にでも習得できるということをご指摘しておられるのだと思います。そこで、会社の業績を高めるためには、従業員の方に、早く仕事に関するスキルを習得してもらうことが、最短で業績を高める方法だと思います。したがって、それを促す役割であるリーダーの役割が、業績に大きく影響するということなのだと思います。だからこそ、リーダーは、リーダーの役割に徹しなければならないとも言えるのでしょう。
2025/7/13 No.3133
