[要旨]
株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、リーダーはトッププレーヤーになってはいけないということです。なぜなら、リーダーにはマネジャーとして組織全体を俯瞰し、組織を指揮する役割があり、この役割に徹することが、組織全体の成果を高めることになるからだそうです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「リーダーの仮面-『いちプレーヤー』から『マネジャー』に頭を切り替える思考法」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、部下が上司を評価する360度評価は行うべきではなく、なぜなら、目標を決める権限のない人が、責任ある立場の人間を評価することは矛盾しており、また、部下からの評価は無責任な感想でしかないからだということについて説明しました。
これに続いて、安藤さんは、リーダーはトッププレーヤーになってはいけないということについて述べておられます。「リーダーは、チーム内で健全な競争が起こりはじめたら、管理することがメインの業務になっていきます。たとえば、6人部下がいるとしましょう。そのうち4人が目標を達成して、2人は未達でした。その2人に対して、『お前、成長できていないぞ、頑張れ』などと鼓舞したり、話を交えて説教したりなどはしてはいけないことです。
ここまで何度も述べてきたように、仮面をかぶり、淡々と次の行動を考えさせるしかありません。自らの置かれた状況が『ヤバい』ということを正しく認識させるのです。もし、競争したくなくて成長を諦めた人は辞めていくかもしれませんが、それを食い止める努力は、リーダーには必要ありません。また、リーダーにもプレーヤ―の気持ちが残っているので、『なんでできないんだ』というネガティプな感情が生まれるかもしれません。
しかし、リーダーはつねに『一定』に部下を見る必要があります。あくまで『一定の環境』の中で競争が起こっている。その状態を保ちます。リーダーが感情で動いてしまうと、健全な競争が起こらなくなってしまいます。『渡り鳥の群れ』を見たことはあるでしょうか。いちばん速く飛ぶ鳥が先頭になって、それにみんながついていっている。そんな姿です。
ここで重要なのは、『先頭の鳥がリーダーではない』ということです。リーダーは、さらに上から全体を見渡し、指揮する立場にいます。先頭の鳥は、部下の中のトッププレーヤ―です。そして、先頭の鳥が速くなれば、群れ全体のペースも速くなります。競争している中で早く成長する部下が1人出てきたら、そこにチーム全体が引っ張られていく。これが理想のイメージです。
伸びる組織は、先頭のメンパーとの差がどんどん縮まっていき、全体が成長していきます。伸びない組織では。リーダー自らが先頭の鳥となり、トッププレーヤ―としてチームを引っ張っていこうとします。プレイングマネジャーの場合、リーダー自身も飛ぶ必要があるからです。しかし、リーダーはトップになってはいけません。あくまでマネジャーとしての仕事を優先させるべきだからです」(242ページ)
安藤さんは、「リーダーは、さらに上から全体を見渡し、指揮する立場にいます」とご指摘しておられます。このことは、ほとんどの方がご理解されると思いますが、実践されないことも少なくないと、私は感じています。その理由として考えられることは、リーダーがプレーヤーとして評価されたいという気持ちが残っているからだと思います。そして、自分がプレーヤーとしての手本を示すことで、部下たちの能力や成績を向上させることができると考えるのでしょう。
しかし、これについては、安藤さんもご指摘しておられるように、リーダーはマネジャーとしての役割を果たさなければなりません。というよりも、リーダーがマネジャーの役割を果たすからこそ、組織全体としての成果が高まると考えるべきでしょう。とはいえ、プレイングマネジャーとして活動しなければならない立場の人も現実にはいると思います。ただ、その場合であっても、その人はマネジャーに軸足を置いて活動しなければならないと、私は考えています。
これに対して、「プレイングマネジャーがトッププレーヤーとしてお手本となる活動をして、それに他のプレーヤーがついていく方が、全体の成果も高まる」と考える方もいると思います。しかし、そうであれば、プレーヤーたちは組織として活動する必要性はなくなります。組織として活動して成果を向上させていくという前提では、マネジャーの役割を後回しにすることの方が問題といえるでしょう。
2025/7/12 No.3132
