[要旨]
公認会計士の金子智朗さんによれば、経営環境の変化に合わせて、会社の役職員も行動を変えなければならないものの、新しい行動には失敗がつきものであることから、それを躊躇する人は少なくありません。しかし、失敗を恐れて行動を変えなければ業績は下がってしまうことから、経営者の方は、部下たちに対して、失敗することを批判せず、行動を変えようとしないことの責任を問うようにしなければならないということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。(ご参考→ https://x.gd/OmMzO )前回は、金子さんによれば、経営者の方の中には、「売上を上げろ!」と叫ぶ方が少なくないそうですが、そのための具体策まで言及しなければ、部下たちは行動ができないので、行動指針を示し、それが企業文化として定着させるための働きかけを経営者の方は実践しなければならないということについて説明しました。
これに続いて、金子さんは、人は変わることを嫌う性質があるので、経営者はそれを前提に組織の活性化をしなければならないということについて述べておられます。「行動力に欠けるとは言つても、全く何もしていないわけではありません。当然ですが何らかの行動はしています。来る日も来る日も会社に行って1日何時間も会社で過ごすわけですから、さすがに何か行動していなければ間が持ちません。
新しいこと『行動力に欠ける』というのをもう少し丁寧に言えば、今までと違うこと、をなかなかやろうとしない、ということです。人というのは、とかく変化を嫌う生き物のようです。確かに、前例のないことや新しいことをやろうとすれば、最初は失敗するかもしれません。多くの人と調整も必要でしょうし、批判を受けることもあるでしょう。しかし、何事も最初は『初めての新しいこと』です。その新しいことにチャレンジする人がいなかったら、今ある現実は何ひとつ存在しないのです。
私は寿司の中でもウニは好きなネタの一つですが、最初にウ二を食ベた人は本当に偉いと思います。あのトゲトゲした外観を見てもそうですが、ドロっとした黄色い中身にしても、よくあれを口にしたものだと思います。しかし、その『初めて』があったからこそ、普通にウ二を食ベられる今があるのです。赤ん坊の頃や子供の頃は初めてのことばかりですが、大人になるにつれて知識が増え、接する社会の複維さも増してくるために、新しいことを受け入れる余裕がどんどん減ってしまうのかもしれません。
ただ、最近は、新しいことに対する抵抗感は何も大人に限ったことではないようです。先日、ある学校の先生が仰っていましたが、最近の子供は、新しいことをやろうとすると、すぐに『えー、無理ぃー』と言うそうです。今の子供たちは、多くの習い事や塾で大人以上に疲れ、新しいことを受け入れる余裕がなくなっているのかもしれません。もしそうだとしたら深刻なことです」(216ページ)
松下幸之助さんは「現状維持は後退の始まり」と言ったと伝えられていますが、このことはほとんどのビジネスパーソンは理解しておられると思います。経営環境は、日進月歩で変化しているわけですから、自社は現状維持であっても、外からみれば、相対的には後退していることになってしまいます。
ところが、この「現状維持は後退の始まり」ということばは、真新しさを感じないくらいに使い古されているにもかかわらず、未だに現状維持をする会社は少なくありません。もっと深刻なのは、意識しているかいないかにかかわらず、表面的には変わるため行動をしているふりをして、実際は変わらないことを選んでいる会社、経営者、従業員もたくさんいることです。
なぜ、そのようなことが起きるのかというと、失敗が起きると、どうしても、失敗した会社、経営者、従業員が批判の的になってしまうからでしょう。「成功は失敗の母」と言われている通り、失敗することは成功に近づくことです。すなわち、「成功の反対は何もしないこと(変化しないこと)」であるにもかかわらず、実際は、「成功の反対は失敗」という考え方で評価されることが多いのでしょう。
では、この状況を変えるにはどうすればよいのかということですが、これも言い尽くされているように、「悪い知らせほどありがたい」という姿勢を経営者の方が示すことです。例えば、経営者の方が、「失敗をすぐに報告すれば、失敗の責任は問わないが、失敗を報告しなければ、報告しなかったことの責任を問う」と部下に宣言し、それを実践することです。
とはいえ、失敗による損失は発生するので、それを部下に問わない問わないことにするのであれば、経営者か会社が代わって負うことになり、経営者とすれば、きついと感じるかもしれません。でも、そうしなければ、組織は活性化しません。すなわち、経営者には悪い情報は届かず、経営判断を誤ることになり、気づいたときには経営者は裸の王様の状態になっているということにもなりかねません。
私が述べるまでもなく、不祥事を起こしている会社の多くは、経営者が裸の王様の状態になっています。こう考えると、部下の失敗を黙って引き受けることの方が得策と考えることができます。ところが、これも「言うは易し、行うは難し」です。もし、部下から悪い報告が来たときに、社長は言葉では部下を叱責しなくても、表情は怒っていて、部下を委縮させてしまうということは少なくないと思います。そのような方が社長の会社は、「事なかれ主義」が根付いてしまい、誰も失敗しないことを最優先することになるでしょう。
私も、仮に社長の立場になったとき、部下の方から、「さっき、大口取引先の社長を怒らせてしまい、取引解消を伝えられました」と報告を受けたとき、うれしそうにして、「報告してくれてありがとう」と言えるかどうかというと、自信がありません。それくらい、社長の立場は辛い役割を担わなければならないのだと思います。でも、それができなければ、前述したように、行動しない人、変化を嫌う人しかいない会社になり、業績を悪化させてしまうことになります。
2026/7/9 No.3494






