[要旨]
公認会計士の金子智朗さんによれば、経営者の中には、自社には優秀な従業員がいないと嘆く人が多いようですが、現実には優秀な従業員を雇うことは宝くじを当てるくらい困難であり、いつまでも青い鳥を追いかけるより、今いる人材を育成することの方が早道だということです。
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今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、日本の会社の生産性が低いのは、日本の会社のサラリーマンがスキルを高めるための努力をしていないからでるということについて説明しました。
これに続いて、金子さんは、日本の会社の従業員のスキルが低い要因は、経営者や幹部が従業員を育成しないからということについて述べておられます。「超大企業から関連会社に天下ったある社長で、『ウチの従業員はバカばかりだ』と人目をはばからず口にする人がいました。頭がいい(と思っている)トップに限って、従業員はみな無能に見えるのかもしれません。これは人材が不足しがちな中小企業に限ったことではありません。有名大学ばかりから好きなだけ人を採用できる大企業であっても同じです。
『有能な人材がいない』と嘆く人は、決まって『どこかに良い人いないかね』と言います。しかし、私は『良い人』を採用できた会社を見たことがほとんどありません。鳴り物入りで中途採用されたような人であっても、実際は全く使えなかった例ばかりです。もちろん、『良い人』はどこかにいるでしょう。しかし、そんな出来合いの『良い人』を採用できる確率は宝くじ並みです。正に青い鳥です。いつまでも青い鳥を追いかけるより、今いる人材を練習させ鍛えた方がはるかに早道です。
ある会社の営業部長が、『これからは提案型営業をやれって言っているのに、いつまで経っても御用聞きのような営業しかできないんだよ、ウチの奴らは』と言って嘆いていたことがありました。しかし、『やれ』と言っただけで、今までやったこともない提案型営業ができるわけがありません。できると考える方がおかしいのです。私がその会社でやったことは、2日がかりのロールプレイ方式の“練習”です。まず、受講者をいくつかのグループに分け、全グループに『こういうことで困っているので、御社の製品を何か提案して欲しい』というお題を出します。
そして、翌日の朝一番から提案のプレゼンをしてもらいます。そのとき、顧客の役には社長を含む役員数人になってもらいます。役員に顧客役をやってもらうのは、おカネを握っている人ならではの考え方を担当者レベルの人たちに分かってもらうためです。そして、『君、技術的なことばかり言っているけど、どれだけの費用対効果があるのかさっぱり分からないよ。作り直して、今日の午後1時にもう一回持ってきて』というような厳しいことを、あえて言ってもらうようにします。
そうやって、強面の役員に何度もダメ出しを食らい、何度も作り直すことを通じて、提案型営業ができるようになるのです。これが練習です。研修などという生易しいものとは訳が違います。こういう練習もさせずに、『何で提案型営業ができないんだ』と言うのは、一度もゴルフをやったことのない人に向かって、『何でドライバーで真っすぐ250ヤード飛ばせないんだ』と言っているのと同じです」(187ページ)
経営者としては、従業員が優秀であることは望ましいと考えるでしょう。ところが、どういうわけか、それほど難しいことではないのにもかかわらず、多くの人が見落とちがちなことがあると、私は感じています。それは、優秀な人は、誰かに雇われようとしないということです。これを逆に言えば、誰かに雇われようとする人は、自力で仕事ができるほど優秀ではないということです。そう考えれば、従業員を雇えば、経営者には、その従業員を育成しなければ、自らが望む能力を身に付けることはできないということは明らかです。
逆に、優秀な従業員を雇いたいと望む経営者は、自らの役割を果たす意思がないということも言えます。ところで、自社の従業員を、独立できるくらい優秀に育成することで、自社の業績を高めている会社があります。その代表的な会社はリクルートです。同社に勤務すれば、独立できる能力を身に付けることができるということが社外に広く認知されれば、自分の能力に自信のある人が多く勤務しようとします。もちろん、そのような意欲的な人は、数年経てば独立してしまいますが、常に挑戦的な人が同社に入ってきます。
したがって、優秀な従業員が欲しければ、自社が従業員をステップアップできる環境を提供することが条件のひとつになると言えるでしょう。とはいえ、中小企業では、そこまでのことはできないということも現実だと思います。そこで、最低限、従業員を自社で育成しようとする姿勢を持つこと、そして、働き甲斐のある職場をつくるという姿勢を持つことが、少しでも能力の高い、または、意欲的な従業員を自社に迎えることができるようになる方法だと思います。
2026/6/29 No.3484






