鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

重要なのは『負債と資産のバランス』

[要旨]

借金は少ない方が望ましいという考え方を持っている経営者も少なくありませんが、融資を受けて得た資産から利益を得ることができるわけなので、融資を受けることが必ずしも問題があるとはいえません。ただし、融資が増えすぎると、リスクも増加するので、負債と資産のバランスも考慮しなければなりません。


[本文]

今回も、前回に引き続き、嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書、「明解会計学入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、会社の損益計算書は、1年間のお金の出入りをまとめたもの、すなわち、フローを示すものであり、1年間で得た収益である売上高から、仕入額である売上原価を差し引いた売上総利益は、会社が1年間で生み出した付加価値を示しているということについて説明しました。

これに続いて、高橋さんは、「借金は少ないほうがいい」という考え方は正しくないということについて述べておられます。「一般的な感覚では、『借金=なるべくないほうがいい、悪いもの』なのだろう。もちろん、お金を借りるたびに『飲み食い』に消えてしまっては、あっという間に借金が膨れ上がってしまうし、その利息を払わなければいけない。借りたお金は消えているから、返すアテもない。これは確かに問題だ。

しかし、借りた金で、家を買う、車を買う、となればどうか。お金を借りて家や車という『資産』を得るのだから、この場合は一概に『借金=悪』とはいえない。その資産は活動のために必要で、それで稼げるなら有用である。企業も同様だ。というか、企業家なら、お金をどのように工面して、それをどのように増やすかを考えるものだ。そもそも、なぜ、企業が利息つきの債務を負うかといえば、事業のために必要だからだ。

銀行からお金を借りて、まるまる現金(預金)のまま持っておくということは、まずない。借りたお金で稼げず、利息だけ払うのではダメである。事業に必要な機械を買う、不動産を買う足しにする……使い道はさまざまだが、債務を負うことで、『資産』を得るのである。では、負債を持つことが一切問題ないかといえば、それは違う。あるいは、資産が多ければ問題ないかといえば、それも違う。重要なのは、『負債と資産のバランス』なのだ」(64ページ)

稲森和夫さんも、京セラを起業したばかりのころ、機械を買うために、京都銀行から1,000万円の融資を受けたものの、早くそれを返さなければならないと、びくびくしながら仕事をしていたと本に書いています。この稲盛さんのように、日本には、借金はしない方がいいという考え方を持つ人は少なくないようです。しかし、会計に関する知識があれば、借金はしない方がいいという考え方が誤りであることを、容易に理解できます。

例えば、出資金1,000万円で会社を起こし、その出資金で商品を仕入れたところ、1,200万円で売れたとします。(ここでは理解を容易にするため、販売に関する経費は発生しないものとします)このとき、利益率は20%ということになります。そこで、金利5%で1,000万円の融資を受け、それで商品を仕入れ販売したとします。そうすると、金利分を差し引いた利益は150万円であり、利益率は15%ということになります。そして、その会社は、トータルで、売上高2,000万円、利益350万円、利益率17.5%となります。

利益率は、融資を受けないときよりも低くなりますが、利益額は150万円ぞうかするので、この会社は融資は受けた方がよいと言えます。しかし、商品の相場が下がり、1,000万円で仕入れた商品が900万円でしか売れなくなったとします。その場合、融資を受けなかったときの損失は▲100万円だけとなりますが、1,000万円の融資を受けて同額の商品を仕入れて販売していた場合、商品の売買損失▲100万円と、融資利息50万円の損失が増加するので、トータルの損失は▲250万円となります。

したがって、事業が赤字の場合は融資を受けない方がよいということになります。そこで、融資を受けるべきか受けないべきかということは、事業が黒字であるか、赤字であるかによって判断が異なるため、融資そのものが問題になるということではありません。そして、融資を受けていると、融資を受けていないときと比較して、事業が黒字であれば利益額が増え、事業が赤字であれば損失額が増えますが、これをレバレッジ効果といいます。

レバレッジとは、てこのことで、レバレッジ効果とは、小さな力で大きな効果を得られることを比喩で示しているわけです。話をもどすと、借金そのものは問題ではないのですが、もし、事業に失敗してしまうと、多額の借金が残り、それを返済するために、持ち家を始めとした多額の財産を失うという人もいるために、借金はしない方がいいという先入観を持つ人が少なくないのでしょう。

でも、本質的なことは、融資を利用しないことではなく、融資を受けて果敢に事業に挑むことであり、もし、事業の先行きが悪くなった場合は、融資の返済が不能になるまえに、別の事業に進出したり、事業をやめたりするという判断を行うことです。ところで、高橋さんは、「重要なのは、『負債と資産のバランス』なのだ」と述べておられます。黒字の会社は、融資を受けることで、レバレッジ効果を高め、利益額を増やすことができます。

しかし、レバレッジを高めすぎることは、将来の見通しの不透明さ、すなわちリスクが顕在化した時の打撃も大きいので、ある程度にとどめることが望ましいと言えます。レバレッジ効果を計る指標に財務レバレッジというものがあり、財務レバレッジ=(負債の部+純資産の部)÷純資産の部という計算式で求めます。純資産の部1,000慢円、負債の部1,000万円の会社は、財務レバレッジ=(純資産の部1,000万円+負債の部1,000万円)÷純資産の部1.000万円=2倍となります。

したがって、この会社は、利益(または赤字)を2倍にする効果があるということを示しています。では、財務レバレッジはどれくらいあればよいのかというと、これも一概に言えませんが、3倍から、高くても4倍までに抑えることが妥当だと、私は考えています。これは、純資産の部:負債の部が、1:2か、1:3程度のバランスが適切ということです。

2024/6/15 No.2740

 

PLは1年間のお金の出入りを示すもの

[要旨]

貸借対照表が決算時点のストックを示すものであるのに対し、損益計算書は、1年間のお金の出入りをまとめたもの、すなわち、フローを示すものです。そして、1年間で得た収益である売上高から、仕入額である売上原価を差し引いたものが、売上総利益であり、会社が1年間で生み出した付加価値を示しています。


[本文]

今回も、前回に引き続き、嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書、「明解会計学入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、会社の貸借対照表の金額が大きい項目を見ると、その会社がどんな資産に多くの資金をつぎこみ、多くの運用益を得ようとしているのかという、経営姿勢を把握することができる、つまり、調達で得た「単なるお金」を資産に変えることで「収益を生むお金」になるということについて説明しました。

これに続いて、高橋さんは、損益計算書の構造について述べておられます。「BSとPLの違いを、私は、よく、『ストック』と『フロー』で説明する。ストックとは、『特定の時点の話』だ。決算書のBSも、『決算時』という『特定の時点』の『負債、純資産、資産』の状態を示しているから、ストックの話である。もちろん、負債や資産は、過去からの蓄積だが、『決算という特定の時点で、それらはどうなっているのか』をまとめたもの、ということだ。

対するフローとは、『ある期間の話』だ。PLは『1年間』のお金の出入りをまとめたものだから、PLはフローを示すもの、ということになる。この違いがわかれば、PLはBSよりずっと理解しやすいかもしれない。費目は細かく分かれているが、それはあまり気にしなくていい。1年間で、どれだけの収益があり、そこからそれだけの費用が差し引かれ、結果、どれだけの利益が上がったかを示すのが、PLだ。では、実際のPLとは、どんなものか。(中略)

まず、『売上高』は1年間で得た収益だ。そこから、仕入れを指す『売上原価』を引いたものが『売上総利益』だ。この『売上総利益』から、『販売費及び一般管理費』を引いたものが『営業利益』だ。具体的には、水道光熱費や、従業員への給料、機材のリース代、オフィスの消耗品費、接待交際費などが、この『販売費及び一般管理費』に含まれる。『営業利益』とは、つまり、『収益から、仕入れ費用と、営業にかかる必要経費を引いた額』=『その企業が事業によって得た利益』ということだ。

次の『営業外収益』は、主に利息・配当の収益、『営業外費用』は、主に白くの支払いを指す。これらの差し引き金額を、先ほどの『営業利益』に合計した額が、『経常利益』となる。さらに『特別利益』『特別損失』というのもある。例えば、持っていた不動産を売って得た利益は『特別利益』だ。『特別損失』は、持っている不動産の価値が下がり、そこから得られる収益が損なわれた、といった場合に計上される。

これらの差し引き金額を『経常利益』に合計すると、『税金等調整前当期純利益』となり、そこから法人税などの税金を引いた額が『当期純利益』だ。1年間の売上高から、さまざまな費用や、その他収益、支払い、さらには税金を、足したり引いたりした結果、『私たちの企業は、この1年間で、これだけの利益を得ましたよ』ということである。こうして、PL上ではじき出された利益は、1年間の取引の『結果』といえる。言い換えれば、決算時という『特定の時点』の金額だから、最終的にはBSの『純資産』の一部に乗っけられる」(89ページ)

PLについては高橋さんのご説明の通りですので、少しだけ補足します。細かいことですが、会社の会計期間は、ほとんどの会社が1年ですが、厳密には、1年以内です。法務省令の「会社計算規則」の第59条第2項には、「各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、(中略)、1年を超えることができない」とあり、論理的には1年以内とすることが可能です。

例えば、6か月、3か月、11か月などとすることも可能ですが、決算手続きの頻度を最小限とする1年とすることが最も効率的といった理由で、ほとんどの会社は1年としているようです。次に、売上原価は、1年間の仕入額の合計額ではなく、売上原価=期首商品棚卸高+期中仕入額-期末商品棚卸高という計算式で求めます。このような計算をする理由についての説明は割愛しますが、売上原価と期中仕入額は近い金額ではあるものの、必ずしも一致しないということに注意が必要です。

その次に、売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いた額は、事業活動で生み出された価値、すなわち、付加価値と言えます。(売上総利益は、厳密には付加価値とは同額ではありませんが、ほぼ等しい額と考えることができます)次に、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた営業利益は、本来の事業活動そのもので得られた利益と言えます。営業利益に、受取利息等の収益である営業外収益を加え、支払利息等の費用である営業外費用を差し引いた経常利益は、通常の事業活動で得られた利益を示しています。

特別利益と特別損失では、高橋さんのご説明にもあるように、不動産を売却して得られた利益、または、発生した損失ですが、この他に、投資目的で保有していた株式の売却益、他社への貸付金の回収不能額、災害や盗難で発生した損失額なども、特別利益、特別損失となります。すなわち、通常の事業活動以外で発生した利益と損失ということです。このように、損益計算書は、上から下に行くほど、事業の中心から周辺に向かって収支を示すものとなっています。

2024/6/14 No.2739

 

貸借対照表で会社の経営姿勢がわかる

[要旨]

会社の貸借対照表の金額が大きい項目を見ると、その会社がどんな資産に多くの資金をつぎこみ、多くの運用益を得ようとしているのかという、経営姿勢を把握することができます。つまり、調達で得た「単なるお金」を資産に変えることで「収益を生むお金」になりますが、このように、お金の「調達」と「運用」を繰り返すことで、少しずつ資産を増やし、会社を発展させていくことが、事業活動といえます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書、「明解会計学入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、複式簿記では、貸借対照表の右側には「お金の出どころ」、左側には「そのお金が形を変えたもの」が入り、例えば、会社を設立した時に出資したお金は純資産の部に、融資を受けたお金は負債の部に、そのお金で買った機械の価額は資産の部に記載されるということについて説明しました。

これに続いて、高橋さんは、貸借対照表の見方について述べておられます。「(貸借対照表には)項目ごとに数字がズラリと並んでいるが、とりあえず、『際立った数字=額が大きい項目』に注目してみよう。額が大きい項目を見ると、その企業がどんな資産に多くの資金をつぎこみ、多くの運用益を得ようとしているのかという、経営姿勢みたいなものが見えてくる。そこから、その企業の『本当の顔』が浮かび上がってくることも多いのだ。

企業は資金を得たら、必ず何かしらの資産に変えている。資産というのは、製品を作る機械であったり、不動産であったりと、さまざまだ。例えば、同じ5,000万円でも、現金で持たずに、設備という試算に変えれば、製品を作って売り、利益を得ることができる。もしくは、1億円の資金を不動産という資産に変えれば、賃料が入る。その不動産を1億1,000万円に上がったときに売れば、1,000万円を儲けることができる。

つまり、『単なるお金』が『収益を生むお金』になる。これが現金と資産の違いだ。こうして、お金の『調達』と『運用』を繰り返すことで、少しずつ資産を増やし、会社を発展させていくことが、企業活動というものなのである。BSには、そんなお金の『入りと出』、『調達と運用』の、ある時点での成果が記される。つまり、BSを見れば、その企業が調達した資金で、どんな資産を得ているのかがわかるのだ」(56ページ)

会社の特徴を見るには、高橋さんの述べておられるように、どの資産が多いのかということで把握することができます。業績が黒字という前提ですが、小売業で棚卸資産が多ければ、商品の豊富さが特徴ということがわかります。卸売業で売掛金が多ければ、販売先の小売店を金融面で支えている点が特徴ということがわかります。製造業で機械設備が多ければ、たくだんの製品を製造できる能力を持っているということが特徴ということがわかります。

ただし、細かなことを言えば、設備は自社所有せずに賃借(またはリース)によって調達していたり、貸借対照表に計上されている資産の価額は、必ずしも時価とは限らないということなどにも注意が必要ですが、こういった点を勘案するのは、会計について理解を深めていってからでもよいと思います。もう1つ、注意しなければならないことは、高橋さんは、調達した資金を資産に変えることで、「『単なるお金』が『収益を生むお金』になる」と述べておられ、これはその通りなのですが、その一方で、資産の選択を誤ると、収益を生むどころか、損失を発生させることにもなるということです。

例えば、たくさん売れると見込んで仕入れた商品が、見込みほど売れなければ、売れ残った商品は、値引きして販売したり、販売できずに処分しなければならないことになります。また、収益を生むからという理由で、闇雲に資産を増やせばよいということではなく、なるべく少ない金額で多くの収益を生む資産に変えなければならないという点も考慮しなければなりません。その判断の適切さも経営者の能力として問われるわけですが、そういった視点も、会計に関する理解を含めながら習得していっていただきたいと思います。

2024/6/13 No.2738

 

貸借対照表の右側はお金の出どころ

[要旨]

複式簿記では、貸借対照表の右側には「お金の出どころ」、左側には「そのお金が形を変えたもの」が入ります。例えば、会社を設立した時に出資したお金は純資産の部に、融資を受けたお金は負債の部に、そのお金で買った機械の価額は資産の部に記載されます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書、「明解会計学入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、複式簿記を学ぶときの最初の壁は、貸方と借方の意味をどう理解するのかということですが、貸方と借方という言葉そのものには深い意味はないので、言葉の意味を探ることよりも、勘定科目が右側と左側のどちらの科目なのかを丸暗記することの方が、早く簿記を習得できるようだということについて説明しました。

これに続いて、高橋さんは、複式簿記を自社の事業にあてはめて考えると理解が進むということについて述べておられます。「複式簿記では、(貸借対照表の)右側には『お金の出どころ』、左側には『そのお金が形を変えたもの』が入る。今度は、これを『自分で会社を始める』という場合に当てはめて考えてみよう。まず、右側の『負債と資本』は、どうなるか。『負債』とは、例えば、事業を始めるために借りたお金だ。買掛金(代金後払いの仕入れ費など、ツケになっているお金)なども負債に入る。

一方、『資本』には、事業のために出資されたお金や、事業によって儲けたお金が入る。『お金の出どころ』だから右側に入るのだが、『負債』とは性質が異なる。負債は、『いずれ必ず返さなくてはいけないお金』であることに対し、資本は、『返す必要のないお金』といえる。厳密にいうと、やや違うところもあるが、初めのうちはこれでもいいだだろう。

例えば、銀行からお金を借りたら右側に入る。その他、社債を売って得たお金も借金だから、右側だ。自分で用意した『資本金』や、株を売って得た『出資金』も右側だ。また、事業を行った結果、『利益』が出たら、これも右側に入る。では、左側には、何が入るか。例えば、銀行からお金を借りて、製品を作る機械を買ったなら、右側の『負債』に借りた金額、左側に機械の金額が入る。

右から左へと、お金が流れている、変化していると考えればいい。このように、『何らかの方法でお金を得て、それを何かに変える』という企業活動は、一つひとつ、複式簿記で記していくことができる。事務所で使う鉛筆1箱、机1台を現金で買ったなら、右側に『現金いくら』、左側に『鉛筆1箱』、『机1台』となる。こうしたお金とモノの取引を、日々、複式語気で管理するのが、会社の経理部の主な仕事だ」(45ページ)

高橋さんのご説明からわかるように、貸借対照表の「右側には『お金の出どころ』、左側には『そのお金が形を変えたもの』」が記載されます。そして、右側のお金の出どころのうち、出資者(株式会社の場合は、株主)が出資したお金と、過去の利益の積み重ねは純資産の部に記載されます。この純資産の部に記載されているお金の特徴は、高橋さんが述べておられるように、「返す必要のないお金」です。

一方、純資産の部に属さないお金は負債の部に記載され、これらのお金は、「いずれ必ず返さなくてはいけないお金」という点で、純資産の部と異なります。これら、純資産の部と負債の部に記載されたお金は、両者の合計額と等しい額の資産として使われます。資産の部は、現金、売掛金棚卸資産、設備などが記載されます。繰り返しになりますが、貸借対照表に関しては、「右側には『お金の出どころ』、左側には『そのお金が形を変えたもの』」と理解すれば、貸方・借方の意味の理解が進むと思います。

なお、高橋さんは言及しておられませんが、貸借対照表は、会計期間の末日時点の資産、負債、純資産の金額が記載されている点が特徴です。これは、損益計算書の各科目は、会計期間の初日から末日までに発生した金額の合計額が記載されているという点と大きく異なります。すなわち、会計期間中に売上を得れば、それは、その期の損益計算書に反映される一方で、資産や負債は、会計期間中に増減があっても、末日の金額が貸借対照表に反映されるということです。

2024/6/12 No.2737

 

簿記は理論ではなく技術

[要旨]

複式簿記を学ぶときの最初の壁は、貸方と借方の意味をどう理解するのかということですが、貸方と借方という言葉そのものには深い意味はないので、言葉の意味を探ることよりも、勘定科目が右側と左側のどちらの科目なのかを丸暗記することの方が、早く簿記を習得できるようです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書、「明解会計学入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、高橋さんによれば、会計の言葉は文字として読めるので、それを読むと理解できたと勘違いしてしまうものの、会計の言葉は、財務状況を表現することに特化した「記述言語」なので、会計を学び、本当の意味を理解していなければ、それは英語を学ばずに英字新聞を読むのと同じことと言えるということについて説明しました。

これに続いて、高橋さんは、複式簿記の上手な理解の仕方について述べておられます。「BS(貸借対照表)について理解するには、『複式簿記』をざっくりと知っておいた方がわかりやすい。複式簿記とは(中略)、右側と左側をセットにして、お金の出入りを管理する帳簿のつけ方だ。簿記の教科書では、右側は『貸方』、左側は『借方』と説明しているが、恐らく、パッと聞いて意味がわかる人は稀だと思う。実は、私も、『貸方』、『借方』をわかりにくいと思った1人だ。

だが、意味を知ってしまえば簡単だった。そこで、もっとわかりやすい言葉に、この2つを置き換えることにした。右側は『ライアビリティ&キャピタル(負債と資本)』、左側は『アセット(資産)』と考えればいい。もっとも、これは英語に不慣れな人にとってはわかりやすいかどうかは、いささか心許ない。各人でわかりやすいように考えて欲しい。右側が入ってくるお金で、それがどのように変わったのかを左側で見ている。どういう言葉に置き換えるかはともかく、これが複式簿記である。

お金の流れには、常に2つの側面がある。仮に、あなたが洋服を買ったとして、そのお金はどこから来たものなのか。お金がふって湧くはずがないから、自分で稼いだか、人から借りたか、何かしら『お金の出どころ』があり、そのお金を『洋服』という形に変えたはずだ。複式簿記では右側と左側とで、『1つのお金の取引』を表す。今の例で言えば、稼いだお金、もしくは、借金は右側、それで得た洋服は左側に入る。これから財務書類を読む知識を身につけていくうえで、まずはこの『複式簿記』の基本を覚えておいて欲しい。

特に、『誰の』BSなのかは、常に意識して欲しい。会計がわからない人は、『誰の』という基本がおろそかになって、資産だとか負債だとかに気をとられてしまう。例えば、株式を考えてみよう。これは、所有者から見れば『資産』であり、その人のBSでは左側になる。しかし、出資を受けている会社から見れば、負債・資本合計であり、その会社のBSでは右側である。この『誰の』BSかは、常に意識して欲しい」(41ページ)

複式簿記を学ぶときの最初の壁は、貸方と借方の意味をどう理解するのかということだと、私も感じています。しかし、貸方と借方という言葉そのものには深い意味はないので、言葉の意味を探ることはあまり賢明ではないようです。極端なことを言えば、貸方は右側、借方は左側という程度の意味でしかありません。では、私の場合、どうしたのかというと、勘定科目が右側と左側のどちらの科目なのかを丸暗記しました。この、丸暗記という作業は、非効率的だと考える方も多いと思います。なぜなら、一定の法則を理解すれば、丸暗記する必要はないと考えられるからです。

しかし、私の経験からは、簿記は、法則性より、丸暗記をする方が早いと思っています。別の例で言えば、「かけ算九九」のようなものだと思います。九九で三の段を覚えれば、後から自然と3の倍数が頭に浮かんでくるようなものです。ですから、簿記も、科目が右側なのか、左側なのか、丸暗記すれば、後になってどちらの科目なのかがすぐに頭に浮かぶようになります。よく、簿記は、理論ではなく技術と言われることがありますが、技術は理論より、頭に叩き込んで覚えるという方法が適していると、私は考えています。

2024/6/11 No.2736

 

会計を知るのは外国語を学ぶのと同じ

[要旨]

会計の言葉は、文字として読めるので、それを読むと理解できたと勘違いしてしまうものの、会計の言葉は、財務状況を表現することに特化した「記述言語」なので、会計を学び、本当の意味を理解していなければ、それは英語を学ばずに英字新聞を読むのと同じことと言えます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書、「明解会計学入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、高橋さんによれば、不良債権とは、自社の資産で、取得したときの価額より価値が下がってしまったとき、その下がった価額をいいますが、これは時価会計の考え方であり、資産を取得価額だけでなく、時価でも評価するという考え方を持つことは、銀行との融資取引の関係を深めるためにも大切ということについて説明しました。

これに続いて、高橋さんは、会計を知ることは、外国語を学ぶことと同じということについて述べておられます。「『不良債権』は日本語であり、日本人なら読むことも書くこともできる。しかし、『意味』を正確に理解しているかというと、怪しい。(中略)会計の言葉は、財務状況を表現することに特化した『記述言語』だ。日本語であって日本語ではない。そこまでいっては大げさかもしれないが、財務書類を読めるようになるためには、それ専用の言葉を勉強しなくてはならない。そういう意味では、会計を知るのは外国語を学ぶのと同じである。

なまじ、日本語として読むことも書くこともできるから、わかっている気がする、理解したつもりになっている。それがもっとも厄介なのだ。新聞で経済記事を読んでも、結局、何を読んだのかわからない、という経験はないだろうか。その理由は、恐らく2つだ。まず1つは、そもそも、記者のリテラシーが低いせいで、記事がしっかり書かれていないこと。記者自身がふんわりした理解に基づいて書いているから、ふんわりした記事になる。

あるいは、財務官僚のレクチャーそのままに書くせいで、まるで伝言ゲームのように核心がぼやけた記事になることもあるだろう。このように、記事そのものが怪しい場合は、自分ではどうしようもない。しかし、もう1つの理由は、記事を読む自分のほうに非がある。要するに、会計という『記述言語』がわかっていないから、読んでも理解できないのだ。会計を知らずに経済記事を読むことは、ろくに英語を勉強せずに英字新聞を読むのと、本質的には変わらないのである」(29ページ)

高橋さんのいう「ふんわりした記事」で思い浮かべるのは、内部留保に関する記事です。ちなみに、内部留保は会計の正式な言葉ではなく、貸借対照表の「利益剰余金」を指していると言われています。この利益剰余金については、しばしば、批判の対象になっており、例えば、2023年11月27日の読売新聞の社説では、「日本企業の内部留保は、2022年度に約555兆円と、11年連続で最高を更新した。好調な業績の中で、投資ではなく、内部留保が増え続ける現状への批判は強い」と主張しています。

この社説は、投資が増えない原因を内部留保の増加と説明していますが、簿記を学んだことがある人なら、利益剰余金が増加することが投資の妨げになるどころか、逆に、投資を増やす要因になり、社説の説明が誤りであることはすぐにわかります。100歩譲って、内部留保とは、手元流動性(現金、預金、短期有価証券など、すぐに支払いできる資産)を指すものとして使っているのだとすれば、それは投資を減らす要因になりますが、前述の社説では、「日本企業の内部留保は、2022年度に約555兆円と、11年連続で最高を更新した」と記載しており、やはり、利益剰余金を指しています。

とはいえ、この記事の主旨は、新聞記事の批判ではありませんので、話を戻すと、内部留保という文字のイメージから、内部留保という言葉は、利益をたくさん得た会社が、内部に貯めこんでいる資金と勘違いされ易いのだと思います。したがって、ビジネスパーソンが、もし、会計の知識を持っていなければ、正しい状況分析や判断ができないということが理解できると思います。だからこそ、高橋さんのご指摘しておられるように、会計を学ぶことはとても重要だということが言えるでしょう。

2024/6/10 No.2735

 

『不良債権』とはなにか

[要旨]

不良債権とは、自社の資産で、取得したときの価額より価値が下がってしまったとき、その下がった価額をいいます。これは時価会計の考え方ですが、資産を取得価額だけでなく、時価でも評価するという考え方を持つことは、銀行との融資取引の関係を深めるためにも大切です。


[本文]

今回も、前回に引き続き、嘉悦大学教授の高橋洋一さんのご著書、「明解会計学入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、高橋さんによれば、最低限の会計の知識は、社会人として身につけておくべきであり、なぜならば、お金の本当のところが読み取れるようになると、世の中の見え方も変わってくるからということについて説明しました。これに続いて、高橋さんは、「不良債権」をきちんと説明できるようになるためにも、会計の知識が必要ということについて述べておられます。「『不良債権』、この言葉を正確に定義できるだろうか。(中略)

まず、債権とは『資産』のことだ。資産にもいろいろあるのだが、ここでは『株』で考えてみよう。例えば、あなたがAという会社の株を1,000万円で買ったとする。これは買ったときの金額で帳簿を付けるので、『帳簿価格』という。ところが、買った直後に、A社の株価が下がり、あなたが持っている株の価値も70万円にまで下がってしまったとする。これを『実質価格』という。『帳簿価格=実質価格』、あるいは、『帳簿価格<実質価格』であるうちは問題ないが、『帳簿価格>実質価格』となると、あなたは損をすることになる。

その債権は、あなたに損をさせる『不良』のものになるわけだ。これが『不良債権』である。厳密には、帳簿価格より一定以上実質価格が低い場合を『不良債権』という。もちろん、A社の株価が、再び上がる可能性もあるから、そのまま持ち続けるという方法もある。だが、株価がもっと下がると見たら、損失を最低限に食い止めるためには、持っている株を売るしかない。100万円で買ったものを70万円で売るわけだから、30万円の損になる。帳簿価格と実質価格の差は損になるので、その差額を『不良債権額』と呼ぶことが多い」(21ページ)

本旨とそれますが、「銀行が抱えている不良債権」というように使われるときの「不良債権」ですが、法律では、直接、不良債権を定義していませんが、おおよそ、次のように考えられています。「約定どおりの元本や利息の支払いが受けられなくなるなど、回収困難か回収が困難になる可能性が高い債権のこと。金融機関は金融再生法に基づき、総与信のうちの正常債権と『金融再生法開示債権(破産更生等債権、危険債権、要管理債権)』の残高を公表しており、このうち金融再生法開示債権のことを不良債権と呼んでいます。また、金融庁は、破綻先債権、延滞債権、3か月以上延滞債権、貸し出し条件緩和債権を『リスク管理債権』と定義しており、広義では、この『リスク管理債権』と銀行の『自己基準で定められた不良債権』、『金融再生法開示債権』の3つを合わせたものが不良債権とされています」(三井住友DSアセットマネジメント株式会社のホームページより引用)

このような定義は、実務に携わっている人でなければ理解は困難であり、考え方は高橋さんのように考えればよいと思います。また、これも本旨とはあまり関係がないのですが、私が注意が必要と思うことは、株式を購入した場合、その株式は資産であることに間違いないのですが、株式は厳密には債権ではないと私は考えています。債権とは、民法に規定されていますが、簡単に言えば、商品を掛け売り(販売時点で代金を受け取るのではなく、後日、代金を受け取る条件で販売すること)をしたり、金銭を貸し付けて、後日返済を受ける契約をしたりしたときに、それを受け取る権利です。

一方、株式の取得は、株券を発行した会社への出資、すなわち投資なので、株式は債権には該当しないと思います。ただし、高橋さんは、取得した資産が、取得後に価値が変わる資産の例として株式で説明したのであり、高橋さんの述べておられる内容に誤りがあるということではないと、私も考えています。もうひとつ、これも本旨とはあまり関係がないのですが、「実質価格」という言葉は、会計用語としてはあまり使われていないと私は考えています。時価会計では、「時価」や「市場価格」という言葉が使われています。もちろん、どのような言葉を使ったとしても、高橋さんの述べていることについて誤りはありません。

話を本旨に戻すと、高橋さんは、取得した資産の価値が下がったとき、その下がった金額を不良債権額であると指しています。これについてはわかりやすい説明の仕方であると思いますが、会計の初学者の方が、最初にぶつかる壁ではないかと、私は考えています。私が、これまで中小企業経営者の方と話をしていて感じるのは、債権(または資産)の実勢価格が下がることについて、なかなか理解されないという方は少なくありませんでした。例えば、自社が取得した土地の実勢価格が下がっても、自社の資産は取得価額から変わりがないと考えていたり、自社が取得した建物が、購入代金のまま変わらないと考えていたりする例は少なくありませんでした。

銀行が融資相手の会社に融資している融資額も、例えば、契約上は1億円(無担保)の融資契約であっても、その会社が債務超過の状態になると、約70%は返済が見込めないと評価し、その額を、銀行は貸倒損失として費用計上することが一般的です。(貸倒率や、貸倒損失のタイミング、方法などは、銀行や融資相手の会社の状況などによって異なることがあります)よく、「当社は、銀行に返済を続けているので、銀行には迷惑をかけていない」と考えている経営者の方がいますが、もし、その会社が債務超過であれば、銀行は貸倒損失を計上しますので、銀行としては費用負担が発生しています。

ただ、このような情報は銀行は融資を受けている会社には伝えないので、前述のように考える経営者の方は少なくないのかもしれません。ただ、経営者の方が会計の知識を持っていれば、自社が赤字になると、自社に融資をしている銀行に負担をかけるということが理解できます。もし、この知識がなければ、自社が債務超過であるにもかかわらず、「当社は、銀行に返済を続けているのに、なかなか新たな融資に応じてくれないのは、貸し渋りではないのか」と、誤った認識を持ってしまうかもしれません。今回は、不良債権を例に、会計の知識の大切さについて述べましたが、もし、経営者の方が会計的知識を持っていると、銀行と認識の相違が減少すると、私は考えています。

2024/6/9 No.2734