鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

社外取締役は適切なバランスをもたらす

[要旨]

社外取締役は、余計な口出しをする、邪魔な存在と考えられがちですが、会社の事業が独善的にならないようにしてくれる役割があり、社外取締役を有効に活用している会社は、事業活動を長期間継続できる、強い会社になると考えることができます。


[本文]

前回の記事で、社外取締役について書きましたが、経営コンサルタントの小林賢治さんが、社外取締役の役割について、ウェビナーでお話した内容が、ダイヤモンドオンラインに載っていました。この記事を読むだけでも、社外取締役の重要性をよく理解できると思います。

ただ、社外取締役に関しては、否定的な印象を持つ経営者の方は、まだまだ、少なくないと思います。その理由としては、「社外取締役は、自社の事業や業界について詳しくないので、方針決定などに口を出されることは、かえって邪魔になる」、「役員、従業員は、チームワークがよいのに、部外者の社外取締役から口を出されると、社内がしらけてしまいかねない」といったものです。(ちなみに、この不満の、「社外取締役」を「経営コンサルタント」に置き換えたような不満を、私も、顧問先からあげられたことがあります)

確かに、経営者としては、迅速さや一体感を大切にしたいと考えることは、私も理解できます。その一方で、迅速さには稚拙さをともなうし、一体感には独善性をともないます。だからといって、私は、稚拙さや独善性を批判したいのではなく、それぞれのよい面と悪い面の、どこにバランスをとるのかが大切になると考えています。

したがって、社外取締役は、邪魔な存在ととらえるのではなく、バランスをもたらしてくれる存在と考えるべきだと思います。特に、経営環境の変化の激しい現在は、バランスの欠けている組織は、長く継続できなくなると、私は考えています。

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名ばかり社外取締役

[要旨]

日本では、名ばかり社外取締役が多く、株主主権が形骸化しています。その原因は、日本の会社では、従業員主権となっていることも多いからと考えられます。したがって、これからは、法律に合わせて株主主権となる運営を行うか、実態に合わせて、株式会社を組織変更するなどの対応が必要と思います。


[本文]

日経ビジネス2021年5月3日号に、社外取締役に関する記事がありました。記事の要旨は、「4月に、金融庁などが、企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)の改訂案をまとめ、そのポイントのひとつが、独立した社外取締役の3分の1以上の選任となっているが、東証プライム市場(現在の市場第1部)では、現状では、1,000人の社外取が不足するとみられている」というものです。

この記事を読むと、社外取締役が不足していることが問題になっているという意味に受け止められてしまいがちですが、私は、本当の問題は、社外取締役が不足しているということよりも、上場会社が、いままで、社外取締役を数合わせでしかそろえてこなかったことが問題だと考えています。記事にも書かれているように、現在の社外取締役の多くは、取締役会の決議事項を追認するだけの「名ばかり社外取締役」のようです。

なぜ、そのようになってしまうのかというと、株式会社は、法律上は、株主が最終的な意思決定者であり、その株主に委任された取締役が、業務執行などの意思決定を行うということが建前になっているものの、現実には、従業員から昇格した役員たちが、非公式に意思決定を行い、それを、あとから、取締役会などで、形式的に、「決定」を行っているからでしょう。これを、ひとことでいうと、会社の主権者は、形式的には株主でも、実態は従業員だということです。

このような会社では、本来の意味での社外取締役は不要であることから、意欲的に社外取締役を引き受けようとする人材も現れず、社外取締役を増やそうとしても、就任してもらえる人がみつからないという事態になってしまったのでしょう。本題からそれますが、私は、日本の会社の主権者が従業員であることが、直ちに問題であるとは考えていません。日本の会社の従業員は、米国の会社の従業員に比較して、会社への帰属意識が高いので、質の高い労働力になっているということも事実です。したがって、問題なのは、実態と法律がかけ離れているということです。

では、今後、社外取締役を活用できない会社はどうすればよいのかというと、実態も株主主権とすガバナンスを目指すか、実態にあわせて、例えば、株式会社を合同会社に組織変更するなどの対応をとるべきだと思います。もちろん、このようなことは、直ちに実施することも難しいと思いますが、一方で、「名ばかり社外取締役」の数合わせを、いつまでも続けることも、無意味であり、無駄なことといえるでしょう。

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報告がなくても問題点はなくならない

[要旨]

部下からネガティブな情報を伝えられた上司は、報告を受けたことは評価せずに、逆に、報告の内容に対して批判するということは、頻繁に起こりがちです。このような稚拙なマネジメントが行われる背景には、管理者、経営者の役割を認識している人が少ないということが考えられます。


[本文]

発行部数が約6万6千部のメールマガジンの著者である、佐藤しょ~おんさんが、先日配信した、そのメールマガジンを読みました。その要旨は、部下から受けた報告の内容が、「顧客からクレームが来た」などの悪い情報だったとき、その内容に対して部下を叱ると、次回から、部下は報告をすることを躊躇するようになるので、報告の内容が何であれ、上司は、報告したことそのことを褒めるようにしなければ、悪い情報を含め、上司は現場の状況を把握できなくなるというものです。

このことは、ほとんどの方がご理解されると思いますが、これを実践することは、なかなか難しいようです。これに関しては、「経営者や管理者は、ネガティブな報告であっても、きちんときく心構えが必要だ」という言い方もできるのですが、コンサルタントとしては、別の観点から分析をしたいと思います。事業活動は組織的な活動ですので、組織の構成員がひとりで起こした失敗であっても、組織全体で対処しなければならないことは、言うまでもありません。

さらに、組織階層で上位にある、管理者や経営者になるほど、異例のことがら、重要なことがらに対処する責任があります。これも当たりまえのことなのですが、もし、前述のように、ネガティブな情報を部下が伝えてきたとき、管理者であるにもかかわらず、上司が報告の内容を叱っていたとしたら、その上司は、自分が役割を認識できていないか、または、管理者の役割を担う自信がないということを、自ら認めているようなものでしょう。

さらに、そのような上司が会社にいるにもかかわらず、その状態が放置されたままであるとしたら、その会社の経営者も、マネジメント能力に欠けているということになります。でも、そのような管理者、経営者が、実際には少なくないのは、日本では、管理者や経営者が、「地位(ポジション)」という認識を持っている人が多いからだと思います。「自分は、部長なのだから、部下は指示に従え」と考えている人は、役職はポジションと考えている人でしょう。

でも、管理者や経営者は、「役割(ファンクション)」と考えれば、「部下の失敗は上司の責任でもある」と、すぐに認識し、善後策に着手できるようになると、私は考えています。少し話が大きくなりますが、「マネジメント」や「経営」という言葉は頻繁に使われている割には、実際にどういうことを指すのかということを理解する人は、あまり多くないようです。でも、これが解消されれば、管理者や経営社の役割を認識できる人も増えて行くと思います。

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ヒット商品はどうやってつくるか

[要旨]

ヒット商品を生み出すことは容易ではありませんが、単に、売れるものは何かということだけでなく、高い付加価値が得られるものは何かという視点を持つことが大切でしょう。


[本文]

日経ビジネスに、GSIクレオスの製品で、ガンダムのプラモデル向けのペンタイプの塗料の、「ガンダムマーカーEX」に関する記事が載っていました。記事によれば、このマーカーの新色の、ガンダムメッキシルバーは、筆跡が残らずに自分の顔が映り込むようなきれいな仕上がりを楽しめるそうです。

そのため、4月9日に出荷されてから、初回の生産ロットで出荷した数万本が、1週間もたたないうちに完売し、購入希望者は、次回出荷の6月まで待たなければならない状態になったそうです。現在は、あまり製品が売れない時代でありながら、このようなヒット商品も出ていることから、必ずしも「何も売れない」と考えてはいけないということを、この記事を読んで、改めて感じました。

だからといって、私のようなコンサルタントが、業績があまりよくない中小企業に対して、「ヒット商品を開発すれば、業績が回復する」などということを、軽々に提案することは慎まなければならないということも、十分、理解しています。ヒット商品は、ヒットした後になって、それがヒット商品と分かるものがほとんどであって、事前にヒット商品がわかるということは、希なことでしょう。したがって、事業の現場にいる人たちは、「ヒット商品を作れというなら、どんな商品がヒットするのか、教えて欲しい」と考えていることでしょう。

でも、前述の記事の中に、参考になると思われる考え方が書かれていました。それは、同社ホビー部の森課長の、「趣味にはお金がかかっても良いものを使いたい層が多く、玄人にも満足していただける製品開発を心掛けてきた」という言葉です。これは、顧客の求めるものを作るという意味もありますが、それだけでなく、「お金がかかっても良いもの」、すなわち、付加価値の高いものという点が大切だと、私は考えています。

前述のメッキシルバーは660円で、他の色の倍の価格で売られているそうです。顧客が本当に欲しいものは、値段が高くても売れるのであり、単に、売れるかどうかだけで判断してはいけないと思います。これが分かったとしても、ヒット商品を生み出すことはむずかしいと思いますが、単に、売れるものは何かということを考えているだけよりも、ヒット商品の開発に近づきやすくなると思います。

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リスクとのつき合い方

[要旨]

人間の習性で、実際にあまり起きないことを、起きると考えてしまったり、その逆のことを考えてしまったりすることがあります。したがって、勘や先入観だけで判断せずに、統計的なデータに基づいて判断をすることが大切です。


[本文]

幻冬舎のWebpageに掲載されていた、経済評論家の塚崎公義さんの記事を読みました。すなわち、これは、よく知られていることなのですが、人間は、非常に小さい確率でしか起きないことを、実際よりも大きな確率で起きると感じてしまう習性があ。そこで、自動車よりも事故が起きる確率が小さい飛行機に乗ることを怖がったり、実際にはほとんど当たらない宝くじを、自分は当たりそうだと思って買ったりするということを、塚崎さんは書いておられました。このような思い込みは、ビジネスでも起きることがあると、私は考えています。

例えば、自社に利益をもたらしてくれていると考えていた顧客は、頻繁に顔を合わせる顧客のAさんだと思っていたものの、実際に集計してみたら、あまり顔を合わせないものの、特定の商品を予約して定期的に買ってくれているBさんだったというようなことはよくある話なので、印象や先入観だけで判断することは危険です。

また、いい意味で、中小企業経営者の方はリスクに鈍感と感じることがあります。「自社のビジネスは成功する」と、あまり根拠はないけれど、前向きに起業したところ、成功してしまうということは、少なくないと思います。逆に、あまり論理的ではないですが、自社の事業は失敗してしまうかもしれないと考えながら、経営者の方が事業に臨んでいたとしたら、確かに失敗してしまいそうな気がします。とはいえ、事業をあまり楽観的に考えてしまうことも問題ではないかと思うときもあります。

東日本大震災の後から、急激に注目を浴びていますが、不測の事態に備えて、BCP(事業継続計画)を用意していた会社は、危機に面しても、回復が早いということが分かっています。「本当にそんなことがおきるのか」と思えるようなときから、ピンチに備えておくことが、いざというときに、ライバルと大きく差をつけることができます。その傾向は、今回のコロナ禍でも現れています。ということで、事業運営について、勘だけにたよらず、リスクへの対応について、統計的な視点を取り入れてみることを、お薦めしたいと思います。

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事業再構築補助金と担保設定(2)

[要旨]

事業再構築補助金の公募要領の、建物への担保設定に関する規定に厳密に従えば、根抵当権の設定されている土地に建物を建てることは不可能ということになります。この規定は、あまり現実的なものではないので、今後、より現実的なものに変更されることが妥当でしょう。


[本文]

前回、事業再構築補助金で建設した建物への、担保設定の制限に関して説明しましたが、今回は、これに関する疑問点について述べます。これに関して、最も問題と感じることは、根抵当権が設定されている自社所有の土地に、補助金で建物を建てようとするときについてです。というのは、根抵当権が設定されている土地に、新たに建物を建てたとき、その建物も、土地に設定されている根抵当権の担保物件として追加することが、一般的だからです。

その理由は、もし、建物の建っている土地を売却しようとするとき、土地だけしか売却できないと、土地を購入した人にとっては、土地の利用に制限があるため、売却価額が少なくなるからです。(そのような担保権の侵害を防ぐために、民法では、後述する一括競売が認められています)

また、銀行との融資取引契約では、担保となっている土地に建物を建てたとき、それを担保に加えないことは、契約違反と規定されています。(この説明は、理解を容易にするために、正確でない部分がありますので、ご了承ください)したがって、銀行との契約違反にならないようにするためには、根抵当権の設定されている土地へは、補助金を使って建物を建ててはいけないということになります。

また、仮に、銀行が、根抵当権のある土地に、補助金を使って建物を建てること、そして、その建物を、土地に設定されている根抵当権の担保として追加しなくてもよいことを認めたとしても、民法第389条では、「抵当権の設定後に、抵当地(抵当権の設定されている土地)に、建物が築造されたときは、抵当権者(担保の権利を有している銀行)は、土地とともにその建物を競売することができる」(これを「一括競売」といいます)と規定しているので、実質的には、建物にも根抵当権が設定されている状態に近い状態になります。(実務的には、担保処分を円滑に行えるようにするために、銀行は、建物についても正式に担保とすることを会社に求めます)

このようなことから、建物の担保に関する公募要領の規定に厳密に従うとすれば、前述のとおり、根抵当権が設定されていない土地でなければ、建物を建てられないことになるでしょう。ただ、この規定は、あまり現実的なものではないので、今後、より現実的なものに変更されることが妥当であると、私は考えています。

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事業再構築補助金と担保設定(1)

[要旨]

事業再構築補助金で建物を建てる建物について、担保を設定するときは、事前に補助金事務局に承認を得、かつ、普通抵当権に限定されます。このような取り扱いは、銀行からみると、やや、異例のものとなりますので、早い段階から、銀行にご相談しておくことが大切です。


[本文]

中小企業診断士のK先生から、事業再構築補助金に関する担保設定についてお尋ねがありました。事業再構築補助金公募要領の21ページには、次のような記載があります。「補助事業により建設した施設等の財産に対し、抵当権などの担保権を設定する場合は、設定前に、事前に事務局の承認を受けることが必要です。補助事業遂行のための必要な資金調達をする場合に限り、担保権実行時に国庫納付をすることを条件に認められます。なお、補助事業により整備した施設等の財産に対して根抵当権の設定を行うことは認められません」

例えば、補助対象事業で、6,000万円の建物を建てるにあたり、4,000万円を補助金で、2,000万円を銀行からの融資で、建設代金を支払うことにしているとします。(理解を容易にするため、消費税については、考慮しないこととします)そして、銀行が2,000万円の融資を行うとき、一般的には、融資対象物件に抵当権を設定します。抵当権(広義)には、普通抵当権(狭義の抵当権)と根抵当権の2つの種類がありますが、特段の事情がない場合、融資取引の担保は、根抵当権が使われることが一般的です。(両者の違いについては、こちらをご参照ください。→ https://bit.ly/3dUZ25j

しかし、前述のように、補助金を使って建てた建物は、普通抵当権のみが認められます。さらに、「担保権実行時に国庫納付をすることを条件に認める」とは、融資を受けた会社が返済不能となり、銀行が、担保としている建物を売却し、その代金で融資の回収を行うことになった時、「国庫納付」、すなわち、建物の売却代金の一部を国に支払うという条件と思われます。ただし、公募要領に記載してある説明文だけでは、実際に、どれくらいの金額を国に支払うことになるのかということは分かりませんが、銀行側からみれば、担保としての利用価値が低くなると思われます。

とはいえ、建物の建設代金の3分の2が補助金で支払われることから考えれば、融資額は、最大でもその3分の1ということになるので、実際の担保処分による回収への影響は、あまり大きくないのではないかと思われます。この点については、詳細がわかり次第、あらためてお知らせします。いずれにしても、補助金で建築した建物を担保にするときは、通常の担保設定を行うことができないことから、補助金申請の段階から、銀行に綿密な相談をしておくことが望まれます。なお、この担保設定の制限に関し、いくつかの疑問点がありますので、それについては、次回、述べたいと思います。

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