鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

何事も最初は『初めての新しいこと』

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、経営環境の変化に合わせて、会社の役職員も行動を変えなければならないものの、新しい行動には失敗がつきものであることから、それを躊躇する人は少なくありません。しかし、失敗を恐れて行動を変えなければ業績は下がってしまうことから、経営者の方は、部下たちに対して、失敗することを批判せず、行動を変えようとしないことの責任を問うようにしなければならないということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。(ご参考→ https://x.gd/OmMzO )前回は、金子さんによれば、経営者の方の中には、「売上を上げろ!」と叫ぶ方が少なくないそうですが、そのための具体策まで言及しなければ、部下たちは行動ができないので、行動指針を示し、それが企業文化として定着させるための働きかけを経営者の方は実践しなければならないということについて説明しました。

これに続いて、金子さんは、人は変わることを嫌う性質があるので、経営者はそれを前提に組織の活性化をしなければならないということについて述べておられます。「行動力に欠けるとは言つても、全く何もしていないわけではありません。当然ですが何らかの行動はしています。来る日も来る日も会社に行って1日何時間も会社で過ごすわけですから、さすがに何か行動していなければ間が持ちません。

新しいこと『行動力に欠ける』というのをもう少し丁寧に言えば、今までと違うこと、をなかなかやろうとしない、ということです。人というのは、とかく変化を嫌う生き物のようです。確かに、前例のないことや新しいことをやろうとすれば、最初は失敗するかもしれません。多くの人と調整も必要でしょうし、批判を受けることもあるでしょう。しかし、何事も最初は『初めての新しいこと』です。その新しいことにチャレンジする人がいなかったら、今ある現実は何ひとつ存在しないのです。

私は寿司の中でもウニは好きなネタの一つですが、最初にウ二を食ベた人は本当に偉いと思います。あのトゲトゲした外観を見てもそうですが、ドロっとした黄色い中身にしても、よくあれを口にしたものだと思います。しかし、その『初めて』があったからこそ、普通にウ二を食ベられる今があるのです。赤ん坊の頃や子供の頃は初めてのことばかりですが、大人になるにつれて知識が増え、接する社会の複維さも増してくるために、新しいことを受け入れる余裕がどんどん減ってしまうのかもしれません。

ただ、最近は、新しいことに対する抵抗感は何も大人に限ったことではないようです。先日、ある学校の先生が仰っていましたが、最近の子供は、新しいことをやろうとすると、すぐに『えー、無理ぃー』と言うそうです。今の子供たちは、多くの習い事や塾で大人以上に疲れ、新しいことを受け入れる余裕がなくなっているのかもしれません。もしそうだとしたら深刻なことです」(216ページ)

松下幸之助さんは「現状維持は後退の始まり」と言ったと伝えられていますが、このことはほとんどのビジネスパーソンは理解しておられると思います。経営環境は、日進月歩で変化しているわけですから、自社は現状維持であっても、外からみれば、相対的には後退していることになってしまいます。

ところが、この「現状維持は後退の始まり」ということばは、真新しさを感じないくらいに使い古されているにもかかわらず、未だに現状維持をする会社は少なくありません。もっと深刻なのは、意識しているかいないかにかかわらず、表面的には変わるため行動をしているふりをして、実際は変わらないことを選んでいる会社、経営者、従業員もたくさんいることです。

なぜ、そのようなことが起きるのかというと、失敗が起きると、どうしても、失敗した会社、経営者、従業員が批判の的になってしまうからでしょう。「成功は失敗の母」と言われている通り、失敗することは成功に近づくことです。すなわち、「成功の反対は何もしないこと(変化しないこと)」であるにもかかわらず、実際は、「成功の反対は失敗」という考え方で評価されることが多いのでしょう。

では、この状況を変えるにはどうすればよいのかということですが、これも言い尽くされているように、「悪い知らせほどありがたい」という姿勢を経営者の方が示すことです。例えば、経営者の方が、「失敗をすぐに報告すれば、失敗の責任は問わないが、失敗を報告しなければ、報告しなかったことの責任を問う」と部下に宣言し、それを実践することです。

とはいえ、失敗による損失は発生するので、それを部下に問わない問わないことにするのであれば、経営者か会社が代わって負うことになり、経営者とすれば、きついと感じるかもしれません。でも、そうしなければ、組織は活性化しません。すなわち、経営者には悪い情報は届かず、経営判断を誤ることになり、気づいたときには経営者は裸の王様の状態になっているということにもなりかねません。

私が述べるまでもなく、不祥事を起こしている会社の多くは、経営者が裸の王様の状態になっています。こう考えると、部下の失敗を黙って引き受けることの方が得策と考えることができます。ところが、これも「言うは易し、行うは難し」です。もし、部下から悪い報告が来たときに、社長は言葉では部下を叱責しなくても、表情は怒っていて、部下を委縮させてしまうということは少なくないと思います。そのような方が社長の会社は、「事なかれ主義」が根付いてしまい、誰も失敗しないことを最優先することになるでしょう。

私も、仮に社長の立場になったとき、部下の方から、「さっき、大口取引先の社長を怒らせてしまい、取引解消を伝えられました」と報告を受けたとき、うれしそうにして、「報告してくれてありがとう」と言えるかどうかというと、自信がありません。それくらい、社長の立場は辛い役割を担わなければならないのだと思います。でも、それができなければ、前述したように、行動しない人、変化を嫌う人しかいない会社になり、業績を悪化させてしまうことになります。

2026/7/9 No.3494

 

行動指針を示さずに組織は変わらない

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、経営者の方の中には、「売上を上げろ!」と叫ぶ方が少なくないそうですが、そのための具体策まで言及しなければ、部下たちは行動ができないので、行動指針を示し、それが企業文化として定着させるための働きかけを経営者の方は実践しなければならないということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、売上もコストも、何らかの行動の結果であって、会計上の問題は会計では解決できないとご指摘されておられますが、このことを理解せず、闇雲に「コストを削減しろ」と叫ぶだけの経営者や会社幹部は少なくないので、具体的な行動を起こさなければ、財務状況は改善しないということについて説明しました。

これに続いて、金子さんは、経営者は具体的な内容を指示しなければ、部下たちの行動は変わらないということについて述べておられます。「『売上を上げろ』、『コストを下げろ』もそうでうすが、何かを言っているようで、実は何も言っていないということがしばしばあります。言っている本人は何かが起こることを期待して言っているでしょうし、もしかしたら『俺って、いいこと言うな』ぐらいに思っているかもしれません。

しかし、残念ながら、こういう言葉では何も起こりません。既に触れた『コスト意識』というのもその一つです。『コスト削減!』と叫ぶ人に、『それは分かりましたけど、具体的な打ち手は?』と聞くと、『コスト意識をもっと高めるベきだ』と言う人がいます。驚くほどたくさんいます。残念ながら、これでは何も言っていないに等しいです。『具体的な打ち手』と聞いて、平気でこう答えるのですから、かなり重症です。百歩譲って、自分一人だけのことなら、気の持ちようを変えることによって具体的な行動の変化に結び付くこともあるかもしれません。

しかし、それが組織という多人数の集団になった場合、組織の具体的な行動と変化に結び付く可能性は非常に低くなるでしょう。それ以前に、そもそも『コスト意識』が何だかさっぱり分かりませんし、それを『高める』とは何をすることなのかもさっぱり分かりません。『企業文化を変える』というのも、何も言っていないに等しい言葉です。第3章でアドポカシー・マーケティングをご紹介しました。アドポカシー・マーケティングとは、会社の目先の利益ではなく、本当に顧客のためになることすることが、結局は会社の利益につながるという『考え方』です。

この考え方は単純明快ですが、それを組織として実現するのは単純ではありません。アドポカシー・マーケティングの第一人者であるマサチューセッツ工科大学スローン経営大学院のグレン・アーバン教授は、アドポカシー戦略を導入するために『具体的にやるべきこと』として、企業文化を変えることを挙げています。残念ながら、これは具体的ではありません。これだけで具体的な組織行動に結び付くとは到底思えません。必要なのは、もっと具体的な行動指針です。

たとえば、高島屋のエビソードでいえば、『ライバル店に電話をしてでも、顧客のためになることをしろ』というような具体的な行動指針です。そうでなければ、ライバル店に塩を送るような行動は取れません。一歩間違えれば、上司にこっびどく叱られてもおかしくない行動だからです。そして、こういう行動の積み重ねによって、結果的に企業文化が変わるのです。『企業文化を変えろ』と叫んで、何か具体的な行動が変わるわけではないのです」(213ページ)

私は、事業改善のお手伝いをしている経営者の方には、事業計画書を作成することをお薦めしています。事業計画書と言っても、経営者の方が、頭の中だけにある、今後の見通しのことではありません。(「そんなこと、当たり前だ」とご指摘する方もおられのではないかと思いますが、「事業計画書はありますか?」と質問したときに、「あります」と回答した経営者の方に、「それではそれを見せてください」と依頼すると、「それはここ(経営者の方の頭)にある」と答える経営者の方には少なからずお会いしたことがあります)

では、なぜ、事業計画書の作成を薦めるのかというと、事業計画書によって、何を(What)、どこで(Where)、いつ(When)、だれが(Who)、どのように(How)、どれだけ(How Much、または、How Many)、すなわち、4W2Hが明確になるからです。(ちなみに、5つめのW(なぜ、Why)は、経営戦略、または、経営理念で説明します)これを会社内で共有することで、組織活動の足並みが揃います。もちろん、足並みを揃えたからといって、それが遂行されることが保証される訳ではありませんが、足並みが揃わないよりも高い成果を期待することができあます。

そして、バランススコアカード(BSC)では、事業活動で実行する各経営戦略の数値目標が階層的なKPI(重要業績評価指標)として示されますが、これは、各戦略の有機的な関係が明確になり、単に、事業計画書だけで示される数値目標よりも、目標を深く理解してもらうことが可能になります。中小企業では、BSCの導入は難易度が高いので、まず、事業計画書の作成と共有から始めることをお薦めします。ところが、事業計画書を作成しても、実際にはそれを達成できないこともあるので、作成する意義を感じないと考える経営者の方も少なくありません。

確かに、事業計画は、内部要因、外部要因によって達成できないこともありますが、前述したように、組織活動の足並みを揃えるという役割があるので、計画を達成できないことがあるというだけでは、作成することが無意味であるとはいえません。また、私は、経営者の方が、事業計画書の作成を通して、部下の方たちに組織的な活動をしてもらうようにすることが、組織の成熟度が途上にある会社においては、まさに、「経営」、すなわちマネジメントであると考えています。その一方で、経営者の方の中には、部下の方たちに対して、金子さんが言及しておられる、アドポカシー・マーケティングを実践するくらいのことをして欲しいと考える方も少なくないと思います。

しかし、それは、組織の成熟度が高い会社で実践できることです。すなわち、経営者が示した経営理念に基づいて、各従業員が、それに沿った活動を自ら判断して実践できる能力がなければ、アドボカシー・マーケティングが奏功するようにはなりません。そして、その組織の成熟度は、一朝一夕で高くなることはありません。まず、事業計画書を活用した、足並みが揃った組織活動ができるようになってから、アドバイザー・マーケティングを実践してもらうという手順を踏まなければならないということを忘れてはなりません。

2026/7/8 No.3493

 

行動を変えずに結果だけよくはならない

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、売上もコストも、何らかの行動の結果であって、会計上の問題は会計では解決できないとご指摘されておられますが、このことを理解せず、闇雲に「コストを削減しろ」と叫ぶだけの経営者や会社幹部は少なくないので、具体的な行動を起こさなければ、財務状況は改善しないということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、グーグルの幹部は、「予備知識が多すぎることは、イノベーションを阻害しかねず、今起きている事態について知りすぎていると、困難だと結論づける理由を十指に余るほど思いつく」と言っており、すなわち、いわゆる頭のいい人は、できない理由を考えるのが得意であることから、経営者は、社内に行動しない人が増えないような働きかけをすることが大切だということです。

これに続いて、金子さんは、コスト削減は掛け声だけでは実現できないということについて述べておられます。「顧問先の会社の経営会議などに同席すると、その会社の上司が部下に向かって、『もっと売上を上げろ』とか、『もっとコスト削減しなさい』などと言っている場面によく遭遇します。中には、『コスト削減!』と書かれた大きな貼り紙を、会社の至る所に貼っているような会社もあります。しかし、『売上を上げろ』と言って売上が上がったり、『コスト削減!』の貼り紙でコストが下がるくらいなら、誰も苦労はしません。

重要なのは、その先です。具体的に一体どういう行動をとるベきなのか。そこが一番大事なところです。どうやったら売上が上がりコストが下がるのか、一生懸命に財務分析をしてその答えを見つけようとしている人をときどき見ます。頭のいい人ほど、こういうことをします。優秀と目されている人がいる経営企画部門辺りで、いかにもやっていそうなことです。しかし、売上やコストという会計上の問題は会計では解決できません。売上もコストも、何らかの行動の結果です。原因となっている行動を変えない限り、その結果である会計数値は変わりません。もし、会計数値を直接変えたら、それは粉飾です。

財務分析が全く無意味とは言いませんが、数字をいじくりまわすのはほどほどにして、その原因となっている行動に目を向け、行動をどう変えるかということを考え、そして実際に行動を変えることが何より重要です。『同じことを繰り返し、違う結果を期待すること、それを狂気と言う』と言ったのは、物理学者のアインシュタインです。物理学を持ち出すまでもなく、原因となっている行動を変えずに、利益という結果だけよくなることを願うのは、自然の摂理からいってもあり得ません」(212ページ)

金子さんは、「売上もコストも、何らかの行動の結果」であって、「会計上の問題は会計では解決できない」とご指摘されておられますが、このことを忘れてしまう人は少なくないと、私も感じています。その代表的な例が、「上司が部下に向かって、『もっと売上を上げろ』」と言っているようなシーンです。このような上司は、自覚していないかもしれませんが、表面的にはコスト削減に努力しているように装っていても、潜在意識では、「コスト削減は恐らく不可能であろうから、掛け声だけをあげてやり過ごそうとしているのでしょう。

では、コスト削減は、どのように実践すればよいのかというと、すかいらーくの配膳ロボットの導入がよい事例だと思います。同社は、「2021年8月より、フロアサービスロボットの導入をスタートし、2022年12月27日に、『ガスト』、『しゃぶ葉』、『バーミヤン』をはじめとする、全国約2,100 店舗に3,000台のロボットの導入を完了」したそうです。その結果、ガストでは、(1)ランチピーク回転率が2%改善、(2)片付け完了時間が35%削減、(3)スタッフの歩行数が42%減少という効果があったそうです。

これにともなうコスト削減の効果は公表されていない、というよりも、ロボット導入の効果は、コスト削減だけでなく、さまざまな効果があるので、コストだけの効果を抽出することはできないのだと思いますが、コストを抑える効果があったことは間違いないでしょう。もちろん、こういった新たな方法を見つけたり、導入を決断し、定着させることは、考えるよりも容易ではないことも事実だと思います。しかし、それができるかどうかが、現在のような複雑な経営環境の中で経営者に問われている真の能力なのだと思います。

2026/7/7 No.3492

 

『頭のいい人』はできない理由を考える

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、グーグルの幹部は、「予備知識が多すぎることは、イノベーションを阻害しかねず、今起きている事態について知りすぎていると、困難だと結論づける理由を十指に余るほど思いつく」と言っており、すなわち、いわゆる頭のいい人は、できない理由を考えるのが得意であることから、経営者は、社内に行動しない人が増えないような働きかけをすることが大切だということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、かつて倒産の瀬戸際までいった日産自動車は、評論家ばかりで、行動を起こさない社員ばかりでしたが、カルロス・ゴーン氏が社長に就いてやったことは、特別なことではなく、何十年も前から、社内でもっとこうすればいいのにと言われていたことをただ実行に移しただけであり、ビジネスにおいては実行が伴わない限り何の改善も実現せず、評価もされないということについて説明しました。

これに続いて、金子さんは、いわゆる頭のいい人は、できない理由を考えるのが得意ということについて述べておられます。「頭のいい人に限って、いろいろと理屈は並ベ、言うことだけは立派ですが、行動はなかなか起こさない傾向にあります。特に大企業は、いわゆる一流大学を卒業したような人ばかりが集まっていますから、下手をするとそんな人たちだらけです。

サントリー創業者の鳥井信治郎氏は、どんな苦境に陥っても自身の信念を捨てず、叩かれても叩かれても破天荒の才覚を発揮し続けた人でした。それを最も端的に表す言葉が『やってみなはれ』です。この言葉は、国産ウィスキーなどの洋酒メーカだったサントリーが、後発企業としてビール事業に進出することを決意する際に、次男である二代目社長・佐治敬三氏に送られた言葉と言われています。

そのチャレンジング精神は、現在のサントリーにおいてもDNAとして生きており、同社のホームページには『“結果を怖れてやらないこと”を悪とし、“なさなさざること”を罪と問う社風』と書かれています。確かに、ビール事業に進出していなかったら、今やヱビスビールを抜いてプレミアムビールのナンバーワン・ブランドとなったザ・プレミアム・モルツの成功もなかったでしょう。ザ・プレミアム・モルツは、モンドセレクションで国産ビール初の最高金賞を数年連続で受賞しています。

ホンダの創業者である本田宗一郎氏も、『やってみもせんで何が分かる』とよく言っていました。有名なエピソードの一つに、赤色の自動車は緊急両用にしか使うことが許されていなかった時代に、赤い乗用車を認めさせたという話があります。国を向こうに回せば、ついつい腰が引けてしまうものですが、本田宗一郎氏は『国家がデザインの基本である赤という色に、難癖を付けるのはおかしい』と新聞やメディアで大々的に発言して、赤のカラーリングを認めさせたのです。

グーグルは、その採用方法が厳しいことで有名です。徹底して優秀な人材を集めるため、若くて高学歴の者しか採用しません。実際、共同創業者であるラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンの母校であるスタンフォード大学出身者が多数いますし、マイクロソフトのような企業からも根こそぎ優秀な人材を集めています。その一方で、過去の経験はあまり重視しません。なぜならば、経験が豊富な人材ほど、既存の型を打ち破ることができないからです。何より、創業者の二人は、全く経験のないところから全く新しいものを生み出したのです。

グーグルの幹部の一人は次のように言っています。『“予備知識”が多すぎることは、イノベーションを阻害しかねない。今起きている事態について知りすぎていると、困難だと結論づける理由を十指に余るほど思いつくものさ』いわゆる『頭のいい人』は、『できない理由』を考えるのが得意です。そんな人に限って、自他共に優秀だと思っているのも、儲かっていない会社にはよくある話です」(208ページ)

7月5日に放送された、TBSテレビのバラエティー番組のがっちりマンデーでは、ユーグレナに子会社化されたキューサイについて紹介していました。すなわち、キューサイは、子会社化前の2019年12月期の売上高は約249億円でしたが、2025年12月期の売上高は約266億円に増加したそうです。

この要因は、ユーグレナ(創業2005年)の社長の出雲充さんによれば、1965年に創業したキューサイは、知名度が高く、通信販売だけで多くの売上を得ることができる状況に甘んじ、ビジネスチャンスを逃していたので、ユーグレナの商品の販売網でキューサイの商品も売ることで、売上を増やすことができたそうです。すなわち、業績60年の会社が、業績20年の会社のノウハウで売上を伸ばすことができたということです。

同様のことは、2019年に、PPIH(ドン・キホーテとして1978年創業)が子会社化した、ユニー(1912年創業)でも起きています。このような事例から、歴史のある会社は、行動しない役職員が増えて行くという傾向は珍しくありません。そこで、経営者としては、従業員が、常に行動するように働きかけることが大きな役割になっているのでしょう。そのひとつの方法が、Googleで行っているように、若い人に限定して採用するということだと思います。

その一方で、若い人は、育成することに労力を要するので、特に、中小企業では避けられがちです。でも、これからは、業績を高める要因は、商品から従業員に移りつつあるわけですから、その育成することを避けるということは、競争力が下がることにつながります。さらに、経験の長い人ばかりを増やしてしまうと、「行動しない人」を増やすことにもなります。ですから、経営者の方は、若い人を採用し育成することは、自社の競争力を高めるためには避けることができないと認識しなければならないと、私は考えています。

2026/7/6 No.3491

 

改善策は実践しなければ意味がない

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、かつて倒産の瀬戸際までいった日産自動車は、評論家ばかりで、行動を起こさない社員ばかりでしたが、カルロス・ゴーン氏が社長に就いてやったことは、特別なことではなく、何十年も前から、社内でもっとこうすればいいのにと言われていたことをただ実行に移しただけであり、ビジネスにおいては実行が伴わない限り何の改善も実現せず、評価もされないということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、業績を高めるために最も大切なことは行動力であり、特に、闇雲に行動するのではなく、きちんと利益につながる行動をすることが大切だということについて説明しました。

これに続いて、金子さんは、日産自動車のゴーン元社長は、かつて、日産の業績を回復させましたが、改善策はすでに日産自動車の従業員の頭の中にあったものだったということについて述べておられます。「一般的に、サラリーマンは、わざわざ何か新しい行動を起こしても、それで自分自身に何かいいことがあるわけではありません。むしろ、面倒な仕事を増やすだけです。そのような状況であれば、『本当はやった方がいい』といくら頭では分かっていても、行動に移すわけがありません。

行動に移す明確なインセンティプがないからです。その結果、会社は評論家だらけになります。私もサラリーマンの頃は、飲み会で3軒目ともなると、私を含めてみんな立派な評論家になっていました。『だから会社はダメなんだ』、『もっとこうすればいいのに』、『上の奴らは何も分かっでない』等々、酒の勢いに任せて熱く激論を交わしていましたが、翌朝、しらふに戻って会社に行けば、またおとなしい社員に戻るだけです。

今から思い出せば、全く恥ずかしい限りです。当時の自分に向って、『そこまで言うなら、自分でやれよ』と言ってやりたい気持ちです。倒産の瀬戸際までいった日産自動車も、評論家ばかりで、行動を起こさない社員ばかりでした。日産自動車は『倒産前夜の11時45分』までいったと言われています。あと15分で時間切れになるぐらい、倒産寸前だったという意味です。日産自動車は、ギリギリのタイミングでルノーからの出資が決まり、カルロス・ゴーン氏という予想外の人材まで現れたために、奇跡的に復活を遂げました。

ただ、カルロス・ゴーン氏がやったことは、何も特別なことではありません。何十年も前から、社内で『もっとこうすればいいのに』とか、『あんなことしなければいいのに』と言われていたことをただ実行に移しただけです。ゴーン氏の最大の功績は、クロス・ファンクショナル・チームによって縦横無尽に改善提案を社内から集め、かつ、それに対して明確な優先順位付けと目標値を与えたことです。何をやったらいいかという答えそのものは、既に社員の中にあったのです」(207ページ)

コーン氏が実行した日産リバイバルプラン(NRP)には、批判的な意見が多いようです。しかし、私は、次の理由から、その批判には説得力がないと考えています。1つ目は、NRPは、5つの工場の閉鎖、2万1千人の人員削減など、痛みを伴ったことは事実ですが、『倒産前夜の11時45分』の状態から、計画期間が3か年のNRPを1年前倒しで達成させています。「痛み」は少ない方が望ましいですが、「11時45分」の状態を脱することの方の重要性が高いことを考えれば、痛みが伴ったということだけでは、その批判の意味は薄いと考えることができます。

2つ目は、金子さんが、NRPについて、「何十年も前から、社内で『もっとこうすればいいのに』とか、『あんなことしなければいいのに』と言われていたこと」と述べておられるように、内容そのものについては、ゴーン氏の独断とは言えないものであったということです。これを言い換えれば、やるべきことをわかっていてものの、それを実践できなかった状態にあったところで、ゴーン氏が実践の後押しをしただけだったということです。

3つ目は、業績を大幅回復させたことです。2003年4月23日の朝日新聞の報道によれば、「日産自動車は23日、03年3月期連結決算の見通しを発表した。売上高は前期比10.6%増の6兆8500億円、本業のもうけを示す営業利益は50.7%増の7370億円、当期利益は33.0%増の4950億円となり、売上高、利益ともに過去最高を更新する。仏ルノーと資本提携直後の99年3月末に2兆1000億円あった実質的な有利子負債(金融事業を除く)は、03年3月末時点で完全に解消した」とのことです。

業績を改善させたことが、NRPの直接的な正当性の根拠にはなりませんが、当時の過去最高益を達成したこと、有利子負債を解消した実績を鑑みれば、机上だけでの批判は説得力がありません。もちろん、NRPは、もっと犠牲を少なくすることが可能であったかもしれません。ただ、経営判断は結果で評価されるということを考えれば、実績で判断しなければならないことも事実でしょう。

話を本旨に戻すと、ビジネスパーソンは実行したことが評価されるということです。極端なことを言えば、90点の事業計画を作成しても、それを実行していない人は評価されません。逆に、30点の事業計画を立てて、それを実行した結果、1%でも業績を改善した人は評価されます。とはいえ、このことは、どんなビジネスパーソンも理解していると思います。しかし、金子さんも、「当時の自分に向っ、『そこまで言うなら、自分でやれよ』と言ってやりたい」とご自身を恥じておられるように、行動しない(または、利益につながらない行動しかしない)ビジネスパーソンが多いことも事実だと思います。

2026/7/5 No.3490

 

価値のない行動は何もしない方がマシ

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、業績を高めるために最も大切なことは行動力であり、特に、闇雲に行動するのではなく、きちんと利益につながる行動をすることが大切だということです。しかも、利益につながらない行動もコストが発生するので、さらに業績を悪化させてしまうことになります。


[本文]

今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、財務会計の損益計算書の最も下には当期利益が記載され、それで業績が評価されますが、これを、「人件費前利益」に変更してみると、株主への利益と従業員への利益を同列に置くことになり、それを最大化しようとする意欲が起き、また、従業員からの貢献に報いることにもなるということについて説明しました。

これに続いて、金子さんは、業績を改善するために最も大切なことは行動力であるということについて述べておられます。「ここまで、同じモノを売っているのに儲かっている会社と儲かっていない会社がある理由をいろいろと述ベてきましたが、もし、『一つだけ理由を挙げろ』と言われたら、行動力の違いを挙げます。もちろん、ただ行動すればいいというわけではありません。『汗水たらして頑張っている姿は美しい』という価値観は根強いですが、それは時に危険でさえあります。

その先が崖とも知らずに全力疾走している姿を思い浮かベれば分かるように、何も考えずに間違った方向に行動することは、結果が出ないどころか、致命的な結果にさえつながります。がむしゃらに努力する前に、努力の方向を間違えないということは、それはそれでとても重要なことです。また、付加価値のない行動なら、何もしないでじっとしている方がマシです。何もしないでポーつとしているのは気まずいため、ついつい何か行動をして、仕事をしている振りをしてしまうかもしれませんが、そんな行動は余計なコストを発生させるだけです。

しかし総じて現実を眺めれば、机の上で考えてばかりでなかなか行動に移さなかったり、慣例というだけでどうでもいいことは頑なにやり続けるのに、本当にやるべきことは、『例がない』というだけの理由でやらなかったりすることが非常に多く見られます。行動しなければ、何も起こりません。起こるはずがありません。みんな、そんな当然のことは分かっているはずなのに、行動しない。もしくは、ものすごく時間がかかる。私から見れば、それはもう歯がゆいばかりです」(206ページ)

改善のための行動しなかったり、利益獲得に関係のない行動しかしなかったりすれば、会社の業績は下がることは明らかなのですが、経営者や従業員がそのような状態となっている会社は、残念ながら少数派となっていることが実態のようです。そうなってしまう理由については、私がこれまで何度もお伝えしてきましたように、現状を維持すれば責任を問われることがないと、経営者の方や、その部下の方たちが考えてしまうからであり、これについて、再び、ここでお伝えする必要はないでしょう。(念のためにお伝えしますと、「現状を維持することで責任を問われることはない」という考え方は誤りです)

そこで、いわゆるオーナー会社の経営者の方が、業績が悪いにもかかわらず、現状を維持しようとしていれば(表向きは「変化することが大切」と口にしていても、行動がともなわない場合も含みます)、その会社は、失礼な表現で恐縮ですが、ゆでがえるの状態であり、1日や2日では状況の悪化は感じられなくても、1年、2年と経つうちに、気がつくと事業を継続できない状態になってしまいます。では、改善活動を継続できるようにするにはどうすればよいのかというと、これもたくさんの方法が考えられます。

そのひとつをご紹介しますと、毎月、10日までにメインバンクを訪問し、前月の業況を報告します。その時は、月次決算書を使い、前月の実績、計画との差、前年同月との差、実績が計画を下回っているときはその改善策を報告します。さらに、期初から前月までの累計についても同様に、前月までの累計の実績、計画との差、前年との差、計画を下回っているときはその改善策を報告します。もし、月次決算書をタイムリーに作成していないときは、売上高、粗利益を簡便的に集計したものでも構いません。

では、なぜ、銀行を訪問するのかというと、理由は2つあります。1つ目は、金銭的なコストがかからないことと、副次的な効果ですが、毎月、業績を報告に来る会社は、そうでない会社と比較して、融資判断に有利になるからです。(念のためにお伝えしますと、融資判断の最大の比重は業績なので、毎月、業績報告に行けば、業績が悪くても融資をしてもらえるようになるというわけではありません)

2つ目は、定期的に部外者に業績と改善策を報告することで、それが、改善活動を後押しする要因になることです。さらに、最初のうちは銀行は報告を一方的にきくだけかもしれませんが、回数を重ねるうちに、銀行職員の視点での初見や改善策を伝えてもらえるようになり、それが、無料で得られる改善のヒントになるかもしれません。

この改善策についての説明はここまでにしますが、日頃から現状維持で過ごさないようにする何らかの仕組みをつくって実践しなければ、なかなか、改善のための行動は継続できません。しかし、現実には、その改善策さえも実践しない会社経営者も一定数はいると思います。そこで、私は、事業改善は、効果の期待できる経営戦略がどれであるかを見極める前に、改善活動を継続するかどうかの方が大切だと考えています。

かつて、稲盛和夫さんが、松下幸之助さんの講演を聴きにいったとき、ダム式経営ができるようになるにはどうすればよいかと質問を受けた松下さんは、「そんな方法は私も知りませんのや。知りませんけれども、まず、余裕がなけりゃいかんと思わないけませんな」という回答をしたとき、稲盛さんは、「鉄槌で打たれたように非常な感銘を受けた」とお話ししておられました。結局、金子さんのご説明に戻るのですが、何をするかの前に、それを実践しよううとする意思がなければ、どんなにすばらしい改善策や経営戦略も、実現されることはないわけです。

2026/7/4 No.3489

 

『人件費前利益』の最大化を目指す

[要旨]

公認会計士の金子智朗さんによれば、財務会計の損益計算書の最も下には当期利益が記載され、それで業績が評価されますが、これを、「人件費前利益」に変更してみると、株主への利益と従業員への利益を同列に置くことになり、それを最大化しようとする意欲が起き、また、従業員からの貢献に報いることにもなるということです。


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今回も、前回に引き続き公認会計士の金子智朗さんのご著書、「同じモノを売っているのに、儲かっている会社、儲かっていない会社」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、金子さんによれば、その人の働きに全く関係なく年齡という要因だけで給料が上がっていくのは、永遠の右肩上がりを信じていた時代の幻想であり、会社の利益に多く貢献した者がそれだけ多くの給料をもらうことは、経済原理からして当然であり、コスト管理の面からも理に適った考え方だということについて説明しました。

これに続いて、金子さんは、人件費前利益について述べておられます。「人は目に見えるカタチに大きく左右されます。ひとたびカタチが出来上がると、元々の趣旨は忘れ去られ、人の考えはカタチに規定されます。最後にくるものが一番重要と思ってしまうのも、人の考えがカタチに規定される例です。紅白歌合戦でも、最後に登場するトリは大御所と決まっています。

財務会計上の最終行にある当期純利益も同じです。当期純利益のことを英語では『ポトム・ライン』と言うことがあります。まさに『最終行』ということです。ポトム・ラインは比喩的に『結論』という意味でも使われることからも分かるように洋の東西を問わず、最後にくるものは重要なものなのです。当期純利益がポトム・ラインになっている財務会計のカタチを見ている限り、『株主に帰属する利益と、それを減少させるコスト』という対立構造からはなかなか逃れられません。

そこで、人件費とそれ以外のコストを区別し、人件費を引く前の『人件費前利益』というものを設けてみます。この人件費前利益から、人件費を最後に引いて、最終利益を計算するカタチにしまず。目指すのは人件費前利益の最大化です。当期純利益の最大化ではありません。人件費前利益は、従業員と株主ヘの富の分配原資になっていますので、これ最大化するということは、株主と従業員を対等に見ていることになります。

このようなカタチになっていれば、人件費以外のコストは従来通り削減対象と考えたとしても、人件費はその中に入っていませんから、人件費がいきなり削減対象になることはありません。場合によっては、当期純利益がマイナスになっても、人件費を優先するという考え方もあってもいいはずです。

資金の出し手である株主よりも、知識の出し手である従業員の方が重要であるポスト資本主義においては、この方がむしろ理に適っています。ただし、大前提を忘れてはいけません。守られるベき人件費は、知識を有した生産性の高い人の人件費だけです。そうでない人の人件費が守られる経済合理的な理由は何もありません」(203ページ)

広島県広島市の、メガネ販売店、メガネ21を運営する、株式会社21は、「会社にお金は残さない!社員とお客に還元する」という方針で会社を経営しているそうです。よって、会社へ貢献することは、従業員の方の利益に直結するので、従業員の方は、当事者意識を持って仕事に臨み、結果、モチベーションも高まります。

そして、同社の業績は、2026年2月期の売上高は約22億円、当期利益は2.261万円、大卒初任給は26万7千円だそうです。この業績がよいか悪いかは、一概に断定できませんが、同社の従業員数が113名であることを考えると、業績がよい会社であると私は考えています。

そして、日本のすべての会社が、同社のような仕組みにすることは、直ちには難しいかもしれません。ただ、金子さんのご指摘しておられるような、「人件費前利益」を目標として掲げる会社は生産性が高くなることは間違いないと私も考えています。そこで、自社の生産性を高めたいと考えている経営者の方は、その方法の1つとして、自社の「人件費前利益」がいくらになるかを計算し、従業員の方に公開してみることをお薦めします。

2026/7/3 No.3488