鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

マネジメント層の構造(5)

[要旨]

2003年に商法が改正され、現在の指名委員会等設置会社という制度ができましたが、指名委員会等設置会社の取締役と執行役は、オフィサー制度のディレクターとオフィサーに相当する役割を担っています。


[本文]

前回に引き続き、マネジメント層の構造について説明します。前回は、オフィサー制度について説明しましたが、日本でも、オフィサー制度に近い会社制度の法整備が行われました。それは、2003年の商法の改正によって作られた委員会等設置会社で、現在は、会社法によって規定される、指名委員会等設置会社に引き継がれています。したがって、ここでは、指名委員会等設置会社について説明します。

指名委員会等設置会社では、株主総会で取締役が選任されますが、この取締役は(後述する執行役を兼任している場合を除き)業務執行は行わず、意思決定と監督のみを行います。その代わり、指名委員会等設置会社の業務執行は、取締役会で選任される執行役が担います。(オフィサー制度を導入している会社のオフィサーや、執行役員制度を導入している会社の執行役員は、取締役が兼任している場合を除き、その会社の従業員ですが、指名委員会等設置会社の執行役は、取締役会が選任することから、従業員ではなく、取締役と同様の役員とされています)

ちなみに、執行役(執行役が複数名いる場合は、取締役会が執行役の中から選任する代表執行役)は、指名委員会等設置会社以外の株式会社の代表取締役のように、代表権を有します。また、取締役(その会社の監査委員となった取締役を除く)は、同時に執行役を兼任することもできます。したがって、指名委員会等設置会社の取締役と執行役は、オフィサー制度のディレクターとオフィサーに相当する役割を担っていると言えます。

そのため、オフィサー制度を導入していた会社が指名委員会等設置会社となる例もありますが、必ずしも、すべての会社が指名委員会等設置会社になってはいません。その理由の詳細な説明は割愛しますが、指名委員会等設置会社は、指名委員会等設置会社でない株式会社と比較して、法律の規定が複雑であることが考えられます。そのため、法律上は指名委員会等設置会社でない会社のまま、オフィサー制度を導入することを選択する会社も少なくないようです。ただし、指名委員会等設置会社が、執行役をオフィサーと呼ぶことがあり、例えば、指名委員会等設置会社の役員が、社長兼代表執行役CEOや、副社長兼執行役COOなどの肩書を持つ場合があります。

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マネジメント層の構造(4)

[要旨]

執行役員よりも業務執行の専門性を高めた役職をオフィサーと言います。オフィサーのうち、業務執行全般の責任者を最高経営責任者(CEO)、CEOの指揮のもと、主に事業活動の業務執行を統括するオフィサーを最高執行責任者(COO)などと言います。


[本文]

前回に引き続き、マネジメント層の構造について説明します。前回は、1990年代後半から、執行役員制度を導入する会社が登場したと説明しましたが、さらに、2000年代以降には、オフィサー制度を導入する会社が現れてきました。このオフィサーは、執行役員よりも、さらに業務執行について専門性を高めた役職のことです。ただし、日本では、オフィサーについての法律上の規定はなく、米国の会社のオフィサーに相当する役職として、導入されているようです。

具体的には、オフィサーのうち、業務執行に関する全般的な責任を担う役職を、最高経営責任者(CEO)、CEOの指揮のもと、主に事業活動に関して業務執行を統括する役職を、最高執行責任者(COO)、同様に財務活動に関して業務執行を統括する役職を、最高財務責任者(CFO)などといいます。ちなみに、米国の会社では、業務執行を担う役職がオフィサーであるのに対し、意思決定や監督を行う役職はディレクターと言います。

このディレクターは、株主総会で指名されるという点で、日本の会社の取締役と同様です。一方、オフィサーはディレクターから指名されることが多いようです。また、CEOやCOOなどは、ディレクターが兼任する例も多いようであり、例えば、チェアマン(会長)兼CEOや、プレジデント(社長)兼COOという肩書のディレクターたちがそれです。

日本でも、代表取締役会長兼CEO、代表取締役社長兼COO、取締役副社長兼CFOなどの肩書を持つ取締役がいますが、このような取締役は、取締役として意思決定や監督を行い、同時に、オフィサーとして、業務執行を行っているということになります。そして、オフィサー制度を導入している会社では、当然のことながら、オフィサーを兼任せずに、意思決定や監督に専念する取締役や、取締役を兼任せずに、業務執行に専念するオフィサーもいます。

なお、前述のとおり、日本の会社法などでは、オフィサーに関する規定はありませんので、取締役を兼任しないオフィサーは、執行役員と同様に、役員ではなく、会社に雇用される幹部従業員ということになりますが、取締役でないオフィサーは、多くの場合、事業部長や本部長クラスの従業員が就任しているようです。この続きは、次回、説明します。

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マネジメント層の構造(3)

[要旨]

1990年代までは、20人以上の取締役が就任している上場会社は珍しくありませんでしたが、そのような会社は、取締役会が形骸化していました。そこで、ソニーのように、実態に合わせ、実際に意思決定を行っている人だけを取締役とし、残りの取締役は、業務執行に専念する幹部従業員である、執行役員に就けるという体制の、執行役員制度を導入するようになりました。


[本文]

前回に引き続き、マネジメント層の構造について説明します。前回は、1990年代の日本の上場会社では、20名以上の取締役が選任されている会社は珍しくないものの、実態は、上席の数名の取締役が主な意思決定を行い、残りの取締役が主に業務執行に専念している状態であったということを説明しました。

しかし、1990年代後半からは、形骸化している取締役会について、実態に合わせた体制に変更する会社が登場するようになりました。その先駆けは、ソニーで、1997年6月から、同社は、38名いた取締役のうち、代表権を持つ7名の取締役と、社外取締役3名の、計10名のみが取締役に留まり、その他の取締役は、新たに設けられた役職の、「執行役員」に就任しました。

ただし、執行役員は、株主総会で選任される役職ではないことから、「会社役員」ではなく、会社から雇用される、従業員としての位置づけの役職です。また、「取締役」は、当時の商法(現在の会社法)で規定された役職ですが、「執行役員」は、法律で規定された役職ではありません。

したがって、執行役員の肩書を持った従業員の方の役割について、定義は明確ではありませんが、それまでの取締役の役割のうちの、業務執行に相当する部分を専念して遂行する幹部従業員と言うことができるでしょう。そして、同社の10名の取締役は、会社の経営方針等の意思決定と、事業の遂行状況の監督という、本来の取締役の役割を担うようになりました。

ただし、取締役には、もともと、業務遂行を担う役割もあることから、同社の社外取締役を除く7名の取締役は、執行役員を兼任しました。このように、経営体制の実態に合わせた執行役員制度は、徐々に他の会社でも導入されるようになり、現在でも執行役員のいる会社はポピュラーになっています。この続きは、次回、説明します。

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マネジメント層の構造(2)

[要旨]

1990年代までの日本では、事業規模の拡大にともない、取締役の数も増えて来ましたが、取締役の多い会社では、上席の取締役(役付取締役)で構成される、非公式な組織の経営会議や常務会などが、実質的に意思決定を行い、その後、取締役会でそれを追認するようになりました。


[本文]

前回に続いて、マネジメント層の構造について説明します。戦後の日本では、急速な経済成長にともない、多くの上場会社も事業規模を拡大してきました。それに合わせ、会社の取締役数も数十人となる会社も珍しくありませんでした。ちなみに、中央大学法科大学院の大杉謙一教授が、1992年に、主要な会社576社に対して行った調査によれば、取締役の数が30人以上の会社は、30社(6.9%)もあったそうです。

このように、取締役の数が増えた要因は、従業員のモチベーションを高めるために、昇格するポストとして取締役の地位を与えたということと、商談を有利に進めるために、部長クラスの従業員を取締役の肩書を着ける必要があったという背景からのようです。しかし、取締役の数が20人以上になってくると、取締役の役割のひとつである意思決定は迅速に行うことができないということも、容易に理解できます。

そこで、実質的な意思決定は、社長、会長、副社長、専務取締役、常務取締役など、取締役の中でも上位に位置している、いわゆる「役付取締役」構成される、非公式な機関の、「経営会議」、「常務会」などで行われ、その後、開かれる、公式な取締役会で、経営会議などで決まった方針が追認されるようになったようです。すなわち、大規模な会社で、多くの取締役がいる会社では、主に上位の取締役が方針を決定し、主に下位の取締役は業務執行に専念するというように、役割が分担されていたということです。この続きは、次回、説明します。

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マネジメント層の構造(1)

[要旨]

株式会社の経営者である取締役の役割は、意思決定、業務執行、監督の3つが主なものです。


[本文]

私は、ときどき、「社長とCEOの違いは何?」ときかれることがあるのですが、今回から、数回に分けて、その質問への回答を述べていきたいと思います。社長とCEOの違いについて、1回で説明しないのは、まず、経営者の役割について理解してもらってからでないと、それについても理解していただくことができないと思っているからです。

ということで、今回は、経営者の役割について説明します。経営者の役割については、わざわざ説明するまでもないように考えている方も多いと思いますが、改めて説明しようとすると、すぐに思いつかない方も多いと思います。というのは、経営者を、組織のリーダーとして見ている方が多いからだと思います。しかし、株式会社という機関として見る場合、単に、リーダーとしてだけでなく、もう少し詳しい説明が必要です。

これについて、結論から述べると、意思決定、業務執行、監督の3つです。意思決定とは、会社の運営上、必要な意思決定です。例えば、どのような経営理念に基づいて事業を行うか、どのような事業戦略や事業計画に基づいて事業活動を行うかなどを決めます。なお、会社法では、取締役会の決議事項として、代表取締役の選定・解職、株主総会の召集、計算書類の承認などが規定されていますが、ここでは、会社法の規定に限定せず、もっと広い意味での意思決定としてとらえてください。

業務執行とは、事業活動を行う上での指揮を執ることで、これについては、多くの方がイメージするとおりです。(ただし、社外取締役取締役会設置会社で、代表取締役、または、業務執行取締役に選任されなかった取締役、監査等委員会設置会社の監査等委員である取締役、指名委員会等設置会社の取締役などは、業務執行は行いません)監督とは、他の取締役や従業員などが、きちんと事業活動を行っているか、法令違反をしていないかなどを監視することです。この続きは、次回、説明します。

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校則の目的は児童の個性を伸ばすこと

[要旨]

広島県の小学校で、児童の自主性を尊重する方針を打ち出しましたが、それにともない、教諭の方たちが、校則の本当の目的を考え直すようになりました。校則の本当の目的は、集団生活を維持することではなく、児童の個性を伸ばすことであり、そのためには、校則では細かいことを決めるよりも、原則的なものを示し、実際の行動は児童自身に決めさせることが大切です。


[本文]

11月16日の日本放送協会さんのニュース番組で、広島県福山市の久松台小学校について報道していました。久松台小学校は、今年から、児童の自主性を尊重することにしたそうです。そのため、運動会で、徒競走と障害物競争のどちらに出場するかを、児童自身に決めさせたり、制服ではなく私服で通学するときも、児童自身の判断で私服で通学することを可能とし、事前の許可を不要にしました。

また、宿題も、児童自身にスケジュールを組ませるなど、多くのことを児童に任せるようになったそうです。これは、校長が、現代社会は複雑化しているので、自分で判断する能力が求められるようになっているという観点から、教育方針を変えたそうです。この校長先生の判断は、とてもすばらしいと思います。

ところで、私が注目したことは、教諭の方たちの変化でした。というのは、昨年までの校則では、文房具は、鉛筆5本、赤青鉛筆1本、消しゴム1つだけしか、学校へ持ってくることが認められませんでした。校則が変わったいまは、持ち物に名前を書くという校則しかなく、どのような文房具も持ってくることができ、また、昨年まで禁止されていた、シャープペンシルも持ってくることができるそうです。

このような校則の変更について、教諭の人たちは、これまでは、児童たちがそろって行動することに、校則の大きな比重が置かれていたけれど、これからは、児童たちの個性を伸ばすための校則でなければならないと感じていると、学校の本来の目的に目が向くようになったことです。これは、部外者から見れば当然のように感じることなのですが、当事者にはなかなか気づきにくいことだと、私も、感じています。

このように、当事者がおかしな規則に気づきにくいことの原因のひとつは、「規則にしたがっていればよい」と考えることの方が、簡単で楽だからだと思います。でも、規則が大まかな方針だけを示すものに留まり、具体的にどう行動するかは、その場で自分で判断することになると、その方が、行動することが難しくなります。でも、後者の方が、成果は大きいものになることは言うまでもありません。

例えば、リッツカールトンが導入していることで有名になった「クレド」は、ホテルの基本的な価値観が書かれているだけで、それをもとに、どう行動するかは、スタッフに任されています。このような、原則主義でスタッフが行動することで生み出される、リッツカールトンのサービスのすばらしさは、多くの方に評価されています。(ちなみに、原則主義とは逆に、規則が細かく決められ、規則通りに行動することが求められることを、細則主義といいます)

したがって、組織の成果を高めようとするには、原則主義で活動できるようにすることが、ひとつの方法ですが、とはいえ、そのような組織づくりは、一朝一夕にはいかないことも事実です。でも、現在は、それを実現できるかどうかに、経営者の能力が求められていると、私は考えています。

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「だから何?」をなくす

[要旨]

人は、自分の伝えたいことを話したり書いたりしていても、それを聞いたり読んだりする側は、話し手や書き手の真の意図を汲み取れないことが、しばしば起こります。そこで、経営者の方は、ご自身の考える経営理念、目標、方針などを、文章にして読み直してみることが必要と思います。


[本文]

実は、この記事は、2日にわたって書いています。とはいっても、一度書いた記事を、その次の日に読み直して、必要であれば修正してから、配信しています。なぜこのようなことをしているのかというと、読者の方が記事を読んで、「だから何?」と感じることがないかを、自ら確認するためです。

理由は分からないのですが、人は、書く内容も、話す内容も、相手に伝えたいことを書いたり話したりしているつもりでも、実は、読んだり聴いたりしている側は、「だから何?」と思ってしまうことが少なくありません。そこで、前述のように、自分の書いた文章の読み直しをしています。

そして、このような、「だから何?」と感じるコミュニケーションは、ビジネスの場でも、しばしば、起きていると思います。私が、かつて、銀行に勤務していたとき、「工事受注明細は担保なんだ」と、何度も口にする上司がいました。私は、実は、この上司の言っていることの本当の意味が、ずっと分からず仕舞いになってしまいました。

「工事受注明細」(銀行によっては、書類の名称が変わることもあります)とは、建設会社の方であれば心当たりがあると思いますが、銀行に融資を申し込むとき、その時点で、受注している工事と、その進行度合い、工事代金の入金状況を一覧表にしたものです。銀行は、建設会社から融資の申し込みがあると、必ず、この「工事受注明細」を提出してもらっています。

建設会社は、ある程度のまとまった金額の工事を個別に受注するので、単に、売上高の推移だけでは業況の判断が難しいため、このような資料の提出を求めます。でも、これは、あくまで調査資料であり、しかも、ほとんどの場合、会社からの自己申告によるものです。それを、「担保なんだ」と口にする上司は、本当は何が言いたいのか、私は、理解できませんでした。

私の想像では、建設会社への融資の回収原資は工事代金なので、それを銀行が把握することで、確実に、融資を回収できるようになるということを伝えたかったのではないかと思います。ただ、その上司とは、あまりじっくり話す機会もなかったことから、最終的にその上司の本意を聞くことはできませんでした。

でも、もし、その意味について聞いてみたら、「昔、建設会社に融資をしたとき、その建設会社が倒産しそうになったが、あらかじめ提出してもらっていた工事受注明細を基に、売掛金を差し押さえするこができたので、無事に融資を回収することができた」というような話をきくことができたかもしれません。そういう背景が分かれば、私も、工事受注明細を、より、大切に見るようになったかもしれません。

そこで、経営者の方で、もし、自分の意図がなかなか従業員に伝わらないと感じている方がいたら、従業員の方は、経営者の方のお話を、「だから何?」と感じているのかもしれません。そういう状態を減らすためには、経営者の方の目指す方針や理念、目標などは、一度文章にして、読み直してみることをお薦めします。

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