[要旨]
北の達人コーポレーションの社長の木下勝寿さんは、ベテラン社員が退職したとき、その方の業務は判断業務が多く、引き継いでもらえそうな人が見当たらなかったため、いったん、木下さんが引き継いだものの、マニュアル化することで他の人にも任せることができることが分かったことから、マニュアル化は効果が高いと考えるようになったそうです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、北の達人コーポレーションの社長の木下勝寿さんのご著書、「売上最小化、利益最大化の法則-利益率29%経営の秘密」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、木下さんは、同社の商品ごとに、販売に関する費用、広告費、人件費を割り振った原価を管理しているそうですが、このことによって、どの商品が自社の利益に貢献しているかを把握することができ、より正確な経営判断ができるようになったということについて説明しました。
これに続いて、木下さんは、マニュアルを整備することで、仕事の属人化を防ぐことができるということについて述べておられます。「業務改善を図る場合、業務全体の流れを鳥の目で俯瞰する必要がある。客観的な目で見るとわかりやすいので、第三者にチェックしてもらうのがいい。以前、当社のベテラン社員が諸事情で退職することになり、その人の業務をどう引き継ぐか問題になった。その人には『経験がないと判断できない』と思われる仕事が集中しており、経験の浅い社員が引き継ぐことは難しそうだった。仕方なく、私がいったん引き継ぐことになった。
業務内容を聞いていると、その人が経験に基づいてケース・バイ・ケースで判断していることも、実はほとんどパターン化できることに気づいた。そこで、その人の仕事を全部洗い出してマニュアル化すると、アルパイトでもできる仕事になった。マニュアルをつくっていなかったから、ベテラン社員の経験値に基づく判断が必要なのであって、マニュアルをつくっていれば、実は誰にでもできる仕事だった。ベテランのせっかくの豊富な経験を、マニュアルをつくっていないことで無駄遣いしてしまっていたことに大変申し訳なく思った。
このようにベテランにしかできないと思われる業務も、客観的に見直す機会をつくると、マ二ュアル化して誰でもできる仕事に変換できる可能性がある。5段階利益管理のABC利益率に注目すると、『ここに問題があるのではないか』と数字がアラートしてくれる。商品ごとに利益管理をすると、売上が高く販促費もかかっていないが、ABCが高いために利益が出ていない場合がある。これは社員の手間がかかりすぎているので、この部分を業務改善する必要がある」(268ページ)
マニュアルには賛否両論があります。肯定的な意見は、手順やノウハウを会社内で共有することができ、そのことによって仕事を標準化しり、属人化を防ぐことができたりすることです。否定的な意見は、マニュアルをつくることで、仕事が硬直的になり、自分で考えて仕事をしたり、柔軟な対応ができなくなったりするということです。私は、どちらの意見も正しいと思います。ただし、会社が成長しているときは、マニュアル化をお薦めします。それは、経験の浅い従業員が多い時期は、手順やノウハウを共有することの利点が大きいからです。
一方で、組織が成熟化している会社は、マニュアルの負の側面が現れるので、マニュアルを絶対視せず、常に変えていくものという位置づけで、活用することが望ましいと思います。木下さんが経営する北の達人コーポレーションは、現在は成長している会社なので、マニュアルを積極的に活用すべき段階だと思います。そして、木下さんが述べておられるように、マニュアルをつくることでベテラン社員への仕事の属人化を防ぐことができ、ノウハウを経験の浅い従業員とも共有することができて、効率化も高めることができます。
2026/4/27 No.3421
