[要旨]
株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、山を登って行くと景色が変わるように、会社組織でも、メンバーとリーダーでは見える景色が変わるので、それに合わせた活動を行わなければなりません。特に、経営者が目先のことだけを見て経営判断をすれば、長期的に事業活動が続けられなくなるので、その役割を強く認識し、実践しなければなりません。
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今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「リーダーの仮面-『いちプレーヤー』から『マネジャー』に頭を切り替える思考法」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、ピラミッド組織では意思決定が遅いためにネガティブに評価する人がいますが、実際は、ピラミッド組織の方が意思決定が速く、組織が成長するためにも適しているのであり、中間管理職の人たちが自らの権限で意思決定をせずに、上司に伺いを立てるようなことをしている場合は意思決定に時間が遅くなってしまうことから、経営者の方は、中間管理職の方たちがきちんと自分の役割を認識させることが大切だということについて説明しました。
これに続いて、安藤さんは、高い視点から経営判断を行わなければならないということについて述べておられます。「高い山に登れば、遠くを見渡すことができます。自分が暮らしている街も、ちょっと高いところから見ると、まったく異なる表情をしているものです。近所にキレイな川が流れていると思っていただけなのが、高いところから見ると、河川の氾濫による浸水リスクに気づくかもしれません。上に行けば行くほど、見える範囲は広がります。それは、組織でも同じです。組織の中のポジションによって、見える景色は違います。見なければいけないポイントも変わってきます。
リーダーとメンパーでは、当然見えている景色が違います。中間管理職と社長も、見えている景色が違います。社長はもっとも高い位置にいるので、いちばん遠くまでを見渡せます。はるか先に敵やリスクが見えたら、そこに備えたり、攻める判断をする必要があります。もし、社長が目の前のことだけを考え、社員たちを喜ばせる施策をしていたら、会社の未来はありません。社員に破格の給料やボーナスを支払い続けて、すぐに潰れたIT企業がありましたが、それと同じです。
高い位置にいる人は、未来を見据えて決断し、行動する責任を背負います。初めてリーダーになったときは、初めて『高い位置』へと上がり、視点を変えるときなのです。いま、部屋の中でイスやテープルの上に立ってみると、フラフラして下ばかり見てしまうかもしれません。初めてリーダーになるときは、そんな足元もおほつかない不安を感じると思うので、『視点』を変える必要があります。『今』に視点を置くのか『未来』に視点を置くのか。それにより行動は変わってきます。たとえば、数字に厳しい上司は、今の部下にとっては嫌なものでしょう。
しかし、『未来』に視点を移すと、『あのときは大変だったけと、頑張っておいてよかった』と、部下にとってその上司の存在はラスに転じます。逆に、優しい上司は、今の部下にとってはいい上司ですが、『未来』に視点を移すと、部下は成長できないためマイナスの存在となります。そうやって未来から逆算して考えるのが、リーダーの役割です。仮面をかぶり、『位置』を意識するようにすれば、『今の利益』を脇に置いて、『未来の利益』を選ぶことができるのです」(107ページ)
安藤さんがご指摘するように、経営者は全体を俯瞰する視点、そして、長期的な視点から経営判断を行い、それに向かって日常の指示を出すことが役割であるということは、ほとんどの方がご理解されると思います。しかしながら、これは思ったより実践することは容易ではなさそうです。というのは、特に、経営資源の少ない中小企業では、日々の仕事を終わらせるだけで精一杯で、人材育成や資金繰の安定化などは重要であるにもかかわらず、後回しになりがちです。確かに、緊急性の高い仕事はいまとりかからなければなりませんが、それは、事業の現場ではそれに従わなければならないでしょう。
しかし、緊急性の高い仕事だけに受け身になっていては、重要な仕事がいつになっても着手できなくなってしまいます。そこで、経営者は、事業現場の目線から離れ、高い視点、長期的な視点で判断しなければなりません。ところが、繰り返しになりますが、中小企業では、経営者が現場で部下たちと一緒に仕事をしていると、高いして、長期的な視点で判断をしなくなってしまいます。だからこそ、経営者は、自分の役割を強く認識し、経営者としての判断や活動を疎かにしないようにしなければ、会社組織はなななか強くならないと、私は考えています。
2025/7/1 No.3121