[要旨]
株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、ビジネスパーソンの中には、顧客や社会から評価される方がよいと考える方もいるようですが、それは誤りだということです。なぜなら、顧客の言いなりになることは、会社の利益を得て長期的に会社を存続させるという視点が欠けているからだということです。
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今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「リーダーの仮面-『いちプレーヤー』から『マネジャー』に頭を切り替える思考法」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、例えば、レストランで手間をかけた自信作の料理であっても、注文した人からの評価が得られるものでなければ、売上は増えないことから、ビジネスにおいては、顧客からの評価が得られていなければ、それ以外の評価は意味がないということについて書きました。
これに続いて、安藤さんは、顧客からの評価が得られなければならないとは言っても、顧客の言いなりになってはならないということについて述べておられます。「では、『社内よりも、お客さんや社会に評価されるようにしなさい』という意見はどうでしょうか。あるいは、『社内よりも社外から評価されたほうがいい』という考え方もあります。組織では評価されていなくても、街の人たちから愛されている警察官や、患者たちに人気のお医者さんなどを想像されるかもしれません。
そんな『組織と戦っている個人』の姿が、映画やドラマの主人公として、よく描かれます。ただ、そんなケースは現実ではほとんど考えられません。リーダーが考えるベきこととしては、お客さんや社会を優先させるのは、絶対にNGです。ある社員が、『上司からの評価』ではなく『お客さんから直接評価を得よう』と思ったとします。このとき、この社員に欠落しているものがあります。それは、『会社の未来』への視点です。会社の未来、会社の存続を考えず、『この瞬間、顧客にとっての利益を最大化する』という選択をしてしまっているのです。
たとえば、『24時間対応してほしい』というお客さんがいたら、いつでも対応する。『もっと値下げしてくれ』と言われたら、際限なく値下げする。そういう行動を取れば、その場ではお客さんは喜びます。しかし、会社組織として、24時間対応は禁止していたり、高価格帯で勝負していくと決めていたりするのであれば、そのルールに従う社員が評価されるべきです。なぜなら、長い視点で『組織の利益』を減らしてまでお客さんを喜ばせる行為は、組織の存統に関わることだからです。組織が存続できなくなれば、お客さんにサービスを提供できなくなり、結果的にお客さんの利益を奪うことになります。
1人の社員が、『お客さんのためだ』と言って、組織の利益に反する行為をしでしまうのは許されることではありません。リーダーがその姿を見て、『お客さんのために頑張っている』なとと評価してしまえば、途端に組織の中はぐちゃぐちゃになります。『リーダーの視点は未来に置かれている』と108ページで述ベたように、長期的な視点から見た上で判断するのが、リーダーの役割です。お客さんや社会が喜ぶからといって、『組織の利益』を減らすような行動は、絶対に評価してはいけないのです」(199ページ)
よく、「当社はお客様第一主義で仕事をしています」と口にする経営者がいます。そして、お客様第一主義や、それを実践することに問題はないのですが、それでは「お客様第一主義」と「お客様の言いなりになる」の違いは何なのでしょうか?とはいえ、両者の違いは明確に定義されているわけではないので、私の理解しているところを述べると、事業活動(または事業戦略)が顧客起点(カスタマーオリエンテッド)であることを、いわゆるお客様第一主義が指すものだと考えています。
例えば、イタリアンレストランのサイゼリヤは、カスタマーオリエンテッドの考え方に従って、安くておいしい料理を短時間で提供していますが、顧客の言いなりになって、メニューにない高級ステーキをつくって欲しいという要望にいちいち応じていれば、事業は成り立たなくなります。ところが、お客様第一主義を曲解し、単に顧客の言いなりになっているために業績が振るわないだけなのに、「当社は顧客第一主義に徹しているから、業績が悪くても仕方がない」と主張する経営者の方もいるようです。
このような主張は誤りで、これは安藤さんもご指摘しておられるように、顧客の言いなりになっているだけは、会社が存続できなくなってしまうわけですから、考え方の違いというものではなく、そのように考えていては、何のための事業なのかということになります。本旨からずれますが、このような勘違いをなくすためにも、「お客様第一主義」という言葉は慎重に使うべきではないかと、私は考えています。
2025/7/9 No.3129
