[要旨]
北の達人コーポレーションの社長の木下勝寿さんは、同社の商品ごとに、販売に関する費用、広告費、人件費を割り振った原価を管理しているそうです。このことによって、どの商品が自社の利益に貢献しているかを把握することができ、より正確な経営判断ができるようになっているそうです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、北の達人コーポレーションの社長の木下勝寿さんのご著書、「売上最小化、利益最大化の法則-利益率29%経営の秘密」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、木下さんによれば、演歌歌手は、テレビへの出演は少ないものの、ファンと直接会って握手をすることによって関係の濃いファンをつくり、効率的なマーケティングを実践しているということについて説明しました。
これに続いて、木下さんは、人件費を勘案した原価管理の活用について述べておられます。「当社では、新卒でも即戦力になるよう、業務体制の組み方を工夫している。これは経営者の重要な仕事だ。業務オペレーションの組み方によって、5段階利益管理のABC(アクティビティ・ベースト・コスティング)は変わる。ABC利益は、販売利益から商品ごとの人件費を引いて求める。
ABC利益=販売利益-ABC(商品ごとの人件費)前に触れたように、当社がABCを意識し始めたのは、北海道の特産品を扱ていた『北海道・しーおー・じぇいぴー』から、健康食品や化粧品を扱う『北の快適工房』に移行する頃だ。北海道の特産品は、商品数が多かった。それぞれキャンペーンも行うため、商品ごとにかかる手間と利益に差があった。さらに、健康食品や化粧品と比ベると、手間と利益に格段の差があった。そこで商品ごとのABCを計算してみた。商品・サービスの販売にかかる間接コスト(人件費)をその比率に応じて配分し、商品・サービスごとの収益を把握した。
すると、北海道の特産品より『北の快適工房』のほうがABCが圧倒的に低く、ABC利益、ABC利益率が高いとわかった。少ない手間で大きな利益を出している。これを知ったとき、ABC利益率を把握する重要性を実感し、今日まで継続的に管理している。ABC利益率の動きを見ると、いかに適切な業務体制が構築されているかがわかる。ABC利益率を見ながら、業務オペレーションを改善し、人の配置を変えるのだ」(246ページ)
引用部分で使われている、「5段階利益」、「販売利益」や「ABC利益」は、木下さんが独自に定めて使っている言葉です。このうち、5段階利益についての説明は割愛します。「販売利益」は、売上総利益から、受注によって発生する費用(ショッピングモールの手数料、キャッシュレス決済手数料等)と、販促費を差し引いた額を指すようです。「ABC利益」は、「販売利益」から、木下さんのいう「ABC」を差し引いた額を指すようです。
また、「ABC」とは、活動基準原価のことですが、木下さんの場合、商品ごとに要した人件費を指すようです。木下さんは、従業員の方に、毎月、どの商品にどれくらいの時間を割いたかを、割合で報告してもらい、人件費をその割合で商品ごとに案分して賦課(ふか、費用を割り当てること)しているようです。これは、厳密な活動基準原価計算ではありませんが、単に、人件費を総額だけで管理する方法よりも、精緻な管理ができる方法だと思います。
そして、木下さんのいう「ABC利益」では、商品そのものの原価だけではなく、その商品の販売に要した費用、広告費、人件費を加味した費用と利益を把握できるので、より正確な経営判断ができるようになります。これについて木下さんは言及していませんが、あまり正確な原価を把握していない中小企業では、商品の販売数量で、自社の利益に貢献している商品と判断してしまう傾向にあります。
しかし、販売にともなう費用や人件費まで勘案すると、最も売れている商品は、実は多くの費用が必要になっており、利益はあまり多くなかったり、不採算であったりすることもあり、売れば売るほど利益を減らす、または、赤字を増やすことになっていこともあります。したがって、せっかくの販売のための努力が無駄になってしまうことのないよう、木下さんのように、商品ごとの原価を管理することは重要だと思います。
また、商品ごとの原価だけでなく、顧客ごとの原価を管理することも大切です。例えば、自社の大口取引先は、販売額が多いので、自社の利益に貢献する相手だと考えられがちですが、価格や取引条件が厳しいため、実際は、取引を解消することの方が、自社の利益増加に貢献することになるということもあります。そこで、繰り返しになりますが、利益の多寡は、売上の多寡と必ずしも比例していないという前提で、利益管理や経営判断を行うことを、私はお薦めしています。
2026/4/26 No.3420
