鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

部下の成長よりも仕事の仕組み化に注力

[要旨]

北の達人コーポレーションの社長の木下勝寿さんは、新人マネジャーが部下が成長しないことで悩んでいるときは、部下は上司によって成長するのではなく、部下自身が成長しようとして成長すると伝えるそうです。すなわち、部下の成長を待つよりも、業務の仕組み化を進め、あまり能力が高くなくても業務が遂行できるようにすることが大切であり、そのような仕組み化を行う能力がマネジャーには求められているということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、北の達人コーポレーションの社長の木下勝寿さんのご著書、「売上最小化、利益最大化の法則-利益率29%経営の秘密」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、木下さんは、ベテラン社員が退職したとき、その方の業務は判断業務が多く、引き継いでもらえそうな人が見当たらなかったため、いったん、木下さんが引き継いだものの、マニュアル化することで他の人にも任せることができることが分かったことから、マニュアル化は効果が高いと考えるようになったということについて説明しました。

これに続いて、木下さんは、業務を円滑にするには、部下の成長を待つより、業務プロセスを変えることに注力すべきということについて述べておられます。「業務がスムーズにいかない場合、マネジャーは担当者の能力のせいにしがちだ。だが、実際には『このやり方でいいのか』と考えたほうが解決は早い。私は新人マネジャーに『自分を変えることはできるけれど、他人を変えることはできない』と話してい。マネジャーになると、部下に仕事を与える。

たとえば、採用業務をしていたマネジャーがその仕事を部下に引き継いだとしよう。部下がなかなか仕事ができないときに、『いつまで経ってもできない』、『変わらない』とイライラする。そんなとき、私はこんな話をする。『あなたは成長したけれど、私に変えられて成長したわけではないでしょう? 自分で成長したと思っているでしょう?』人は自分の意志でしか変わらない。人が劇的に変わるのは多くて10年に1回。

普通は20年に1回くらい。それが今年起きる確率は10分の1か、200分の1。そんな10分の1の確率にかけて仕事をするのはおかしい。『人は変わらない』という前提で、仕事の仕組みを考えるベきだ。一人に全部やってもらおうとしてもできないなら、その人が得意なことだけやる仕組みにする。部下が変わるのではなく、マネジャーが仕事を仕組み化する能力をつけることだ。

採用業務には、『求人媒体社と商談する』、『応募者の反応がいい求人広告をつくる』、『大量の応募者を説明会、面接に振り分ける』、『面接して人の資質や能力を見極める』などの実務があるが、それぞれ求められる能力は違う。それを一人の部下に任せるのではなく、4つの業務に分け、それぞれに適した人に振り分けてみる。常に業務を俯瞰的にとらえ、仕組みを再構築する能力がマネジャーには求められるのだ」(269ページ)

経営者や幹部従業員とすれば、部下の方に成長して欲しいと考えるし、成長してくれれば業績が向上すると考えることも、当然のことだと思います。しかし、冷静に考えれば、木下さんが「部下の方は、上司に成長させてもらったとは考えておらず、自分で成長したと思っている」とご指摘しておられるように、どれだけ上司が成長させようと働きかけても、部下自身が成長しようとしなければ成長しないということも事実だと思います。

もちろん、部下の方自身が成長しようと考えることが望ましいし、上司が成長しようと考えるように働きかけることは大切ではあるものの、それをコントロールすることは難しく、事業活動を安定させようとする観点からは、別の方法にも注力することが望ましいことも事実だと思います。

それが、「仕組み化」ということであり、部下の成長を働きかけつつも、経営者としては、仕組み化に軸足を置くことの方が実践的であると、私も考えています。他社の事例では、例えば、サイゼリヤの元社長の、堀埜一成(ほりのいっせい)さんは、ご著書、「サイゼリヤ元社長が教える年間客数2億人の経営術」で、「当たり前品質」について述べておられました。

すなわち、国内1000店、従業員1万人の規模のサイゼリヤでは、オーナーシェフが経営するレストランのような魅力的な商品を提供することはできないので、「メニューブックがべたつかないように手入れをする」、「テーブルのガタつかないようにメインテナンスをする」、「ソファに穴があいていたら修理する」というようにすることで、顧客が求める「当たり前品質」を維持することで、同社の満足度を高めているということです。

繰り返しになりますが、顧客満足を高めようとすると、難易度の高いことをしなければならないと考えられがちですが、「仕組み化」を実践することでも、顧客満足向上は、ある程度は実現できるようです。むしろ、部下の成長やスキル向上を待っているよりも、仕組み化を行うことの方が短期間で業績が向上し、そのことが部下たちの士気を高め、成長意欲を醸成することにつながるという好循環をもたらすのではないかと、私は考えています。

2026/4/28 No.3422