[要旨]
株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、そもそも、人間が集団をつくる理由は、集団でものごとを成したほうが得られる成果が大きくなるからだということです。しかし、現在は、将来の不確定要素があまりにも多すぎて、組織での成長を信じられなくなっており、日本中、全員が迷いながら仕事をしているということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「リーダーの仮面-『いちプレーヤー』から『マネジャー』に頭を切り替える思考法」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、現在は、「会社に使われるのではなく会社を使おう」と考える人が増えているということですが、「会社にうまく使われることを意識した方が成長は速い」と考えており、なぜなら、フリーランスになれば、結局、社会から直接評価を受けることになるので、会社から評価されない人は、社会からも評価されないと考えられるからだということです。
これに続いて、安藤さんは、組織の利益と個人のモチベーションについて述べておられます。「そもそも、人間が集団をつくる理由はなんでしようか。それは、集団でものごとを成したほうが、得られる成果が大きくなるからです。いつの間にか、終身雇用や年功序列があることが、組織のメリットのようになっていますが、いずれも二次的なものです。雇用を安全に守ってもらえることだけが組織のメリットではないのです。集団だからこそ、成し得ることがあります。大きなものを動かしたり、大きな利益を獲得しようとしたときに、人は集団をつくります。
はるか昔、人間は集団をつくり、みんなで狩りをすることでマンモスも狩れるようになりました。1人1人が小動物を狩るのではなく、自分たちよりずっと大きいマンモスを狩り、その肉を山分けするようになれたのです。集団で大きな利益を獲得し、獲得した利益を分配する。そうすることで、個々の人間が1人ずつ取り組むよりも、結果的に多くの利益、分配を獲得することができます。メンパーが適切に動けば利益は最大化します。利益を最大化するための方法が集団で動くということです。大企業になればなるほど給料が高くなるのも、そういう訳があります。大きい獲物を狩ると、個人の分け前が増える。それが正しい順番です。
『組織のメリットは仲間との結束感だ』と言う人もいます。もちろんそういう面もあるでしょうが、それは副次的な利益です。マンモスを狩った集団は、まさに同じ釜のメシを食ベることになり、結果的に仲良くなったことでしょう。肉が先にあり、仲間意識は、おまけでついてきます。昭和の時代や高度経済成長の頃は、日本の成長が信じられました。つまり、疑問を持大ずにマンモスと対峙できたのです。いまは、将来の不確定要素があまりにも多すぎて、組織での成長を信じられなくなっています。日本中、全員が迷いながら仕事をしています。(中略)
私たちの元には、『組織の利益より社員のモチベーションを上げることも優先すベきだ』などの考えを教えられてきて、迷子になっている経営者がたくさんやってきます。そうやってモチベーションマネジメントを推奨しているコンサルティング会社が多いのです。しかし、それによって立ち行かなくなって、私たち識学に駆け込んできます。識学では、全員を『組織の利益』に向かせるための仕組みを教えています。利益を最大化させ、全員の取り分を増やします。そして、現場レベルでメンバーをマンモスに向かわせるのが、リーダーの役割なのです」(155ページ)
安藤さんがご指摘するように、集団でマンモスを狩ることで、個人の成果も大きくなることが、集団をつくる理由ということは、ほとんどの方がご理解されると思います。ところが、現在、問題になっているのは、これも安藤さんがご指摘しておられるように、「将来の不確定要素があまりにも多すぎて、組織での成長を信じられなくなっている」ことだと思います。すなわち、会社の業績の見通しがよくなければ、そこで勤め続けようとする意欲も低くなることは、ある意味、当然です。
そこで、どうすればよいのかといえば、会社の業績を高めればよいわけですが、それができるのだったら、とっくにやっていると考える方が多いでしょう。では、会社の業績を高めることが難しくなっている理由は、私は、何をつくったり売ったりすればよいのかではなく、どのようにつくったり売ったりすればよいのかが問われる時代になっているからだと思います。かつての高度経済成長期は、ある意味、何かをつくれば売れた時代でした。でも、現在は、商品はつくるだけでは売れない時代なので、どう売るかが問題なのであり、そのためには、組織の力を高めなければなりません。
そして、組織の力を高めるには、個人のスキルアップが必要です。ですから、現在は、従業員の方のスキルアップをしていくことが、会社の業績を高めることになり、そして、従業員の方も会社に所属している意義を深めることができるようになるでしょう。ところが、この従業員の方のスキルアップによって会社の業績を高めるということは、易しいようで、実際にはそう簡単ではないようです。ここに経営者の能力が問われているのであり、同じ業種であっても業績の差になって現れているのだと私は考えています。
2025/7/5 No.3125