[要旨]
株式会社識学の社長の安藤広大さんによれば、ビジネスではどうしても競争は避けることはできず、顧客から相対的評価を受けることになります。そこで、リーダーは、部下に対して、その事実に目を向けさせることで、部下が社会を生き抜く力を身に付ける機会を得るになると考えているそうです。
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今回も、前回に引き続き、株式会社識学の社長の安藤広大さんのご著書、「リーダーの仮面-『いちプレーヤー』から『マネジャー』に頭を切り替える思考法」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、安藤さんによれば、個人と会社で利益相反が起きるときがありますが、それが起きないようにするには、従業員の方が成長するというメリットを追求すると、会社は利益を得られるようになり、利益相反は起きないようになるということについて説明しました。
これに続いて、安藤さんは、会社内で部下同士を競走させるときには、「可視化」することが大切だと言うことについて述べておられます。「競争をわかりやすくする工夫も大切です。方法はなんでもいいのです。簡単なのは『可視化』することです。営業であれば、『成績を一覧にする』という方法は効果的です。『成績を可視化したら、みんながギスギスする』と言う人もいます。しかし、考えでみてください。可視化されていなくても、みんなの心の中には、『自分はいま上から何番目だろう』というように順位を気にする気持ちがあるはずです。
それなら、いっそ見えるように出してしまったほうがよいのです。子育てであれば、子どもを可愛がるのに、順番なんて必要ないと思うでしょう。しかし、会社組織において、他と比較されない『絶対的価値』はないと考えたほうかスムーズです。『世界に一つだけの花』であろうと、花屋では売れていく順番があります。つまり、『相対的評価』を受け続けます。脱サラしてお店を出しても、近くのお店と競争になります。フリーランスになっても、他のフリーの人と仕事の取り合いになります。競走から逃れることはできません。その現実を、メンパー全員に受け入れさせるベきです。
可視化した上で、それでも『人と比ベなくてもいい』、『自分らしく生きればいい』と考えて生きるのは、個人の自由です。そこに対して、『最下位じゃないか』、『1位を目指せ』と押し付ける必要はありません。あくまで、数字としての現実を突きつける姿勢が、リーダーには必要だと思うのです。まさに仮面の力が発揮される場面でしょう。堂々と、現実を見る機会を与えましょう。そのほうが、部下にとっても社会を生き抜く力がつくはずですから」(184ページ)
しばしば「競争はよくない」という意見を耳にすることがあります。私も、過度な競争によって、敗れた会社やその役職員が不幸な状態に陥ることが起きることはあまり好ましくないと思います。では、競争のない社会がよいのかというと、それは非効率な活動ばかりになってしまうので、これも好ましくありません。いわゆる独禁法がカルテルなどを禁止しているのは、そのような理由が背景にあることは容易に理解できます。
この競争をどう考えるのかということについては、テーマが大きすぎるので、ここではこれまでとしますが、自由主義経済のもとでは、競争は避けることができないという現実から、私たちは逃げることはできないということは、安藤さんのご指摘の通りです。そうであれば、経営者の方は、部下に対して、競争に目を向けさせ、それを自分の成長の糧にしてもらうことの方が得策だと思います。そして、次に大切なことは、透明性を高めることだと思います。すなわち、競争の「可視化」です。
これに対しても、「人間を数字で評価することは問題だ」という批判もあると思います。これについても大きなテーマなので、あまり深入りしませんが、ビジネスでの評価は数字に占める部分が大きいという現実は受け入れなければならないと思います。そして、ビジネスでの評価は、その人のビジネスパーソンとしての評価であり、仮に、ビジネスパーソンとしての評価が低いからといって、その人の人格のすべてが劣っているということにならないことは明らかです。
そして、数字だけで評価できないからこそ、数字で評価するときは、数字だけで評価されていることを強調しなければならないと私は考えています。その方法のひとつが「可視化」であり、評価の過程を可視化することで、数字での評価が高い人は特定の数字だけで評価されていることが明確になります。もし、これが不明確であれば、高く評価された人は、「あの人は上司に気に入られているからだ」という邪推をされることになります。すなわち、可視化は数字の評価の弊害を抑えるための手段ということです。
2025/7/7 No.3127
