鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

『GOOD&NEW』で繋がりを強める

[要旨]

北の達人コーポレーションの社長の木下勝寿さんによれば、黎明期の同社では、朝礼のときに、部下の方たちが、自分には直接関係のないことは木下さんの話を聞いていなかったことから、朝礼で、全員が、24時間以内に起きたよいこと、新しい発見を話しをしてもらうようにしたところ、従業員同士のつながりが強くなり、自分以外のことにも興味を示すようになったということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、北の達人コーポレーションの社長の木下勝寿さんのご著書、「売上最小化、利益最大化の法則-利益率29%経営の秘密」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、木下さんは、カスタマー業務担当者の中には、電話対応はうまいが、メールは苦手という社員がいる一方で、わかりやすいメールは書けるのに、いつも電話では緊張してしまい、予期せぬ質問をされると、しどろもどろになる人もいたことから、「しゃベらない接客業」というコピーで求人を行ったところ、予想を超える応募があり、優秀な人を採用することができたということでについて説明しました。

これに続いて、木下さんは、朝礼で「GOOD&NEW」を実践すると、会社内のコミュニケーションが活発になると言うことについて述べておられます。「創業間もない頃、朝礼に『GOOD&NEW』と『クレド』を導入することにした。当時は私とアルバイト3人の計4人だった。『GOOD&NEW』は24時間以内に起きた『よかったこと(GOOD)』や『新しい発見(NEW)』を1人1分ずつ話して全員で共有し、拍手をする取り組みだ。組織やチームの活性化、アイスプレイクなどを目的に、アメリカの教育学者ビーター・クライン氏によって開発された。

導入には理由があった。毎朝4人で打合せをしていたが、私とAさん、私とBさん、私とCさんという『社長と各アルバイト』の1対1の関係になってしまうので、個人的に直接指示された業務はきちんとやるが、全体への指示には関心が薄く、自分以外の人への指示は聞いていないという問題があった。たとえば、『今日はこんな注文が入るから気をつけてね』と言っても、『聞いていなかった』と言い出す。『いや、あなたの目の前で言いましたよ、Aさんは聞いていましたよね』、『はい、聞いています』、『自分には関係ないと思ったので、聞いていませんでした』こんな光景が日常茶飯事だったのだ。

『GOOD&NEW』の手順は次のとおりだ。(1)3~5人のグループに分かれる。(2)ボールなど手に持てるアイテムを誰か1人が持つ。(3)ボールを持っている人が話す。(4)話し終わったら話し手以外が拍手する。(5)話していない人にボールを手渡す。(6)全員が話すまで繰り返す。(7)最後の人が『今日もよろしくお願いします!』と言って終了する。

『GOOD&NEW』をやり始めると、3日くらいで社内の雰囲気が変わった。それまで同僚に対する興味がみんな薄かったが、『GOOD&NEW』で情報共有すると、互いを仲間として認識し始めた。今までは私から指示されたことだけをやっていたが、アルバイト同士で会話をするようになった。

『Aさん、この商品はどうなっていた?』、『それは昼に納品されるよ』と質問や確認ができるようになり、ガラッと雰囲気が変わった。私は、スタッフがコミュニケーションを図る仕掛けは、会社が準備すベきことだと気づいた。『GOOD&NEW』には『何事もなかった日でも物事のよい面を見つける癖をつける』という目的もある。当社の場合、24時間以内に起きた面白かったことを共有するネタ合戦のようになっていたが、スタッフ間のながりも強くなった。

現在でも、朝礼の時間に全社員が6、7人のチームに分かれて『GOOD&NEW』を行っている。朝礼のときにタイマーを使い、1人1分ずつ話し、みんなで拍手する。最近では、多くの職場で人の動きが流動的だ。あまり知らない人、初めて出会った人と即席のチームをつくって働くこともある。そのような場合でも、『GOOD&NEW』をやってみると、コュニケーションが取りやすくなる」(281ページ)

人は社会的な要因で動きが左右されるということは、誰でも理解されると思います。このことは、約100年前に行われたホーソン実験で広く知られています。ホーソン実験とは、1927~1932年にかけて、米国のシカゴ郊外にあるウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われた実験です。実験の内容は、端的に述べれば、賃金、休憩、室内温度などの条件によって生産性がどのように変わるのかを調べようとしたものの、結果として、それらは生産性とあまり関係がなかったということがわかったというものです。

むしろ、データ収集を目的に、職場の監督者が、従業員たちと自由な会話を行ったことで、監督者と部下の相互理解が深まり、生産性が改善したということがわかりました。すなわち、生産性は、賃金や温度などの物理的な要因ではなく、人間関係などの社会的な要因が大きく関わっているということが、すでに、90年以上前に分かっていたということです。木下さんの会社の場合、GOOD&NEWによって、従業員同士の相互理解を深めることに成功したわけです。

そこで、木下さんは、「スタッフがコミュニケーションを図る仕掛けは、会社が準備すベきことだと気づいた」と述べておられるのだと思います。ところが、経営者によっては、このようなことは無意味であり、部下たちはちゃんと上司の指示をきいて、その通りに動けばよいとしか考えない方もいるようです。でも、人は有機的な存在であり、感情で動く面があります。

むしろ、感情で動くからこそ、士気が高まれば、自律的で能動的な活動ができるようになります。それは、前述のホーソン実験で証明されています。したがって、まだGOOD&NEWを実践していないという会社の経営者の方は、木下さんに倣って採り入れることをお薦めします。

2026/4/30 No.3424