鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

製品ではなく製品を開発する能力が重要

[要旨]

会社の競争力は、製品そのものからではなく、その製品を生み出す能力から生まれると言えます。例えば、ソニーのバイオは競争力の高い製品ですが、他社がバイオを真似た製品は製造することはできても、バイオのような製品を開発する能力を備えることは容易ではありません。したがって、競争力の高い製品を開発する能力は、マーケティング資産と言うことができます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、中小企業診断士の佐藤義典先生のご著書、「図解実戦マーケティング戦略」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、競争を優位に進めるためには、正しく「戦場」の設定を行い、適切な戦術を実践することが大切ということを説明しましたが、今回は、その競争に勝つためにはマーケティング資産が重要であるということを、佐藤先生がご説明しておられますので、それについてご紹介します。

「(マーケティング資産とは)コア・コンピタンスに近い概念で、他社にない、競争上、優位となる独自資産のことです。(中略)独自試算は、強みとは違い、その『強み』を支えるものです。例えば、商品の価格の安さを『強み』として競争しようとする場合、安い価格をつけること自体はどんな会社でもできます。

しかし、その安い価格で利益を得るには、他社より効率的に生産できる工場、他社より低価格で仕入れができる独自のルートなど、自分だけが持っている『資産』がないと実現できません。(中略)このように、『強み』は具体的な優位性であり、『資産』はその強みを自分だけが実践できるようにするためのしくみをいいます。概して企業の競争力は、製品そのものからではなく、その製品を生み出す能力から生まれると言えます。

ソニーのバイオやハンディカムは売れていますが、バイオ自体の競争力より、バイオのような優れた製品を組織的に生み出すことができる開発力自体が、企業の財産、コア・コンピタンスなのです。バイオのような製品は、他社がそれを真似して生産できるかもしれませんが、他社がソニーのような開発力を真似することは、非常に困難です。すなわち、このようなソニーの能力は、独自試算ということができます」(36ページ)

この、会社の競争力は、よい製品を販売することではなく、よい製品を開発する能力であるという、佐藤先生のご指摘は、容易に理解できることだと思います。ところが、よい製品を開発する能力を習得するということは、一朝一夕には実現できません。したがって、価格を下げることで競争力を高めようとする会社が現れ、そのような会社は、やがて体力が尽きて、事業が行き詰ることになるのだと思います。

そこで、会社経営者としては、時間がかかってでも、製品を開発する能力を習得するための活動が重要になります。もちろん、それが重要であることは分かっているけれど、日々の事業活動をこなすだけで精一杯という会社が多いことも現実だと思います。だからこそ、1日でも早く改善活動を始めたり、わずかでも少しずつ改善を積み重ねることが、さらに重要になっていると、私は考えています。

2023/1/27 No.2235