鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

強みは競合他社との相対的関係で決まる

[要旨]

スターバックスの強みや、高級感、本物志向と考えられますが、東京青山のように、高級カフェが林立しているところでは、同じ商品であっても、気軽さ、低価格が強みになります。このように、同じ商品でも、競合相手が変われば、強みが変わります。したがって、商品の強みは、絶対的なものではなく、相対的なものと言えます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、中小企業診断士の佐藤義典先生のご著書、「図解実戦マーケティング戦略」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回、会社の競争力は、製品そのものからではなく、その製品を生み出す能力から生まれると説明しましたが、それに続いて、佐藤先生は、その強みは、競合他社との相対的な関係によって決まるということをご説明しておられます。

「強みは、あくまで、競合他社との相対的な関係によって決まります。すなわち、戦場では誰が競合相手かによって、自社の強みや差別化のポイントが変わります。(中略)例えば、スターバックスの強みは、『高級感』、『本物志向のイタリアンコーヒー』です。ただし、これが強みになるのは、ドトールに対してです。すなわち、競合相手が低価格コーヒーチェーンの場合、『高級感』、『本物志向』が差別化のポイントになります。(中略)

一方、東京の青山、表参道などの、おしゃれなカフェが林立するエリアにおいては、スターバックスの強みは変わってきます。青山では、スターバックスだけが本格的なコーヒーショップとはいえません。他店も、みな、本格的なコーヒーショップなので、『本格さ』は差別化のポイントにはなりません。そこで、青山では、スターバックスの強みは、『気軽に入れる』、『低価格』となるわけです。つまり、同じ商品、店、品揃えであっても、戦場によって『強み』が違ってくるわけです」(43ページ)

事業活動は常に競争に晒されているとはいえ、日本中のすべての会社と競争しているわけではありません。引用の事例では、スターバックスコーヒーは、その店舗の近隣のコーヒー店と競合しているわけです。したがって、その直接的に競合している相手と比較して、相対的に優位でありさえすればよいのです。だから、当たり前のことですが、コーヒー店として利益を得るには、必ずしも日本一にならなければならないということではないのです。

そこで、極端なことを言えば、自社の製品の差別化のポイントが何なのかがわかれば、そこにだけ注力しさえすればよいのです。ちなみに、以前も説明しましたが、日本では980円の一蘭のラーメンは、ニューヨークでは、約2,000円で売られているそうです。この値段の違いの要因は、ひとつだけではないと思いますが、競合相手がほとんどいないという点もあると思います。同じラーメンであっても、競合相手がいなければ、価格は2倍にもなるのです。

2023/1/28 No.2236