[要旨]
スターバックスコーヒーは、かつての、単なる飲み物のひとつだったコーヒーを、おしゃれな飲み物、自分でカスタマイズできる飲み物といった、いわゆる、セカンドウェーブに変えていきましたが、そのために、品揃え、パンフレット、ウェブサイトなどで顧客教育を行い、商品のニーズをさらに深めて行きました。
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今回も、前回に引き続き、中小企業診断士の佐藤義典先生のご著書、「図解実戦マーケティング戦略」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、商品のニーズを深める手法として、こだわりの商品を開発するということをご説明しましたが、佐藤先生は、これに続いて、顧客の教育によるニーズの深め方についれご説明しておられます。
「(自社の商品の)こだわりを顧客に伝えることにより、顧客を育て、自分のファンにしていくという方法があります。スターバックスは、それまで『単なるコーヒー』にしか過ぎなかった飲み物に、イタリアンコーヒーというコンセプトで、独自のこだわりを付加しました。このようなこだわりは、黙っていては伝わりません。店頭の雰囲気、品揃え、パンフレット、ウェブサイトなどの、顧客との接点で、スターバックスのこだわりを伝え、顧客を『教育』したのです。スターバックスのホームページを見ればわかりますが、豆、焙煎などへのこだわりに加え、おいしいコーヒーの淹れ方を伝えています。
コーヒー店が、『おいしいコーヒーの淹れ方』を教育するというのは、典型的な顧客教育です。実際、スターバックスのCEOのハワード・シュルツ氏は、『顧客の知らない物や、最高級品を提供すれば、顧客の味覚が磨かれるまで、多少、時間はかかるかもしれないが、顧客に発見の喜びと興奮を与え、ロイヤリティを確立することができるのだ』(日経BP社『スターバックス成功物語』46ページ)と述べています。『顧客の味覚を磨く』という表現に、スターバックスの顧客教育方針がよく表れています」(165ページ)
佐藤先生もご指摘しておられる通り、スターバックスコーヒーは、かつての、単なる飲み物のひとつだったコーヒーを、おしゃれな飲み物、自分でカスタマイズできる飲み物といった、いわゆる、セカンドウェーブに変えていったことは、広く知られています。これは、引用文の中にあるように、単に、スターバックスコーヒーの商品を販売するだけでなく、楽しみ方についても、時間をかけて顧客に教育をしていったことが奏功したと言えます。
ちなみに、顧客教育の別の事例として、私は、イタリアの家電メーカーのデロンギです。同社は、金属の本体に密閉された難燃性のオイルを温めて、部屋全体に熱を伝える、オイルヒーターを開発しましたが、すぐには部屋を温められないという欠点がありました。しかし、「寝室に置いておくと、ひと晩中ホテルに泊まっているような快適さ」というコピーで、この製品の良さを伝えることで、人気商品となりました。
同社の製品は、ヒーター以外にも、トースターやコーヒーメーカーなど、ユニークな商品がありますが、高価なものであるにもかかわらず、顧客に製品の良さを伝えることで、人気商品となっています。したがって、こだわりの商品を開発した場合は、その良さを広く理解してもらえるようになるための「顧客教育」も重要ということです。
2023/2/7 No.2246