鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

タクシードライバーは地球防衛軍

[要旨]

岩田松雄さんによれば、スターバックスとそれ以外のコーヒーショップの間の接客の違いは、自分たちの仕事が、「コーヒーを通じて、人々に潤いと活力を提供する」という意識も持っているかどうかの違いだそうです。このように、経営者が事業に意義付けをすれば、事業の品質が高まります。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの岩田松雄さんのご著書、「今までの経営書には書いていない新しい経営の教科書」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、CSR(企業の社会的責任)は、利益を得る活動のほかに、さらに、会社が果たさなければならないものではなく、現在は、CSRを実践しなければ、利益を得ることができなくなっているということを説明しました。これに続いて、岩田さんは、CSRの意義を深く理解してもらうために、ミッションを明確にすることが重要ということを説明しておられます。

「ミッションは、自分たちの仕事に意義付けをしてくれます。スターバックスと、スターバックス以外のコーヒーショップであんなに接客に違いが出るのは、自分たちの仕事が、『コーヒーを通じて、人々に潤いと活力を提供する』意識で働いているのか、あるいは、『単にお金を稼ぐために、自分の時間を売っている』意識で働いているのかの違いから来ています。例えば、タクシーの運転手さんの場合、どうでしょう?かつてかなり荒っぽい運転手もいました。

私がタクシー会社の社長なら、こういうふうに意義付けします。基本的にタクシーの運転手さんは、困った人を助けるのが仕事です。急いでいる、荷物が重い、歩けないなど、何かお困りのお客様を助けるのが仕事です。これがミッションなのです。まるで地球防衛軍のような仕事なのです。こう考えていると、街を流していても、『誰か困っている人はいないか』という気持ちで走れると思います。タクシー運転手さんも、世の中を良くするために走っているのです」(48ページ)

前回、私は、「世の中の役に立つ事業をしたいという人がいるけれど、世の中の役に立たない事業はない」と書きました。そして、岩田さんも述べておられる通り、タクシー事業は、本当は、地球防衛軍のような事業なのです。ただ、経営者が、単に、お客を乗せて、運賃をもらえばいいとだけ考えていれば、社貢献とはあまり関係がないと感じてしまうかもしれません。

でも、岩田さんのように、「タクシーの運転手さんは、困った人を助けるのが仕事」と疑義付けをすれば、タクシー事業は社会に貢献する事業であることが明確になります。そして、事業の意義付けは、経営者の重要な役割です。したがって、仮に、自社の事業は世の中の役に立つ事業ではないと考えている経営者の方がいるとすれば、それは、経営者の方の考え方次第なのだと思います。

2023/5/28 No.2356