鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

中小企業でも貸借対照表の管理は重要

[要旨]

中小企業の事業管理では、損益計算書と比較して、貸借対照表に基づく経営判断を行う項目はあまり多くないようです。しかし、より効率的な経営を目指すためには、資産や負債の金額の妥当性を見直すことが大切であることから、中小企業であっても、適宜、貸借対照表の内容を見直したり、計画貸借対照表をつくって将来の状況を見通したりすることが大切です。


[本文]

税理士の大久保圭太さんのポッドキャスト番組を聴きました。番組では、「人工知能が発達してきている中で、会計事務所でも人工知能を使って顧問先の計画貸借対照表をつくることは可能だと思われるが、多くの会計事務所ではそれをつくらないのはなぜなのか」というリスナーの方からの質問に、大久保さんが回答していました。大久保さんは、中小企業では、計画貸借対照表をつくって欲しいという需要がないからだとご回答しておられましたが、私も大久保さんと同じ考えです。

これを言ったら元も子もなくなりますが、多くの中小企業では月次試算表は、数か月後でなければ作成されないし、作成されても、それを見て事業改善に活用する経営者も少ないので、仮に、会計事務所が顧問先の計画損益計算書を作成しても、関心を持たないのではないかとお思います。では、計画貸借対照表は作成しても意味がないのかというと、決してそうではありません。

売掛金や棚卸資産が計上されている流動資産の金額は妥当か、建物や機械が計上されてる固定資産の金額は妥当か、買掛金や短期借入金が計上されている流動負債の金額は妥当か、長期借入金が計上されている固定負債の金額は妥当かなどを検討することは大切です。しかし、資産や負債の大部分は、事業活動の結果として決まるものであり、売上や費用などが計上される損益計算書よりも、検討する頻度は少ないかもしれません。

例えば、売上が増えてきた結果として、棚卸資産が増加することはありますが、棚卸資産を増えすぎないようにするために、売上を抑えようとすることはほとんどないでしょう。(もちろん、売上の増加よりも、棚卸資産の増加が大きい場合は、何らかの改善策を講じることはあるでしょう)また、資産の額は、資本効率の観点からも検討されることがあります。資本効率の代表的な指標は、自己資本利益率(=税引後当期利益÷純資産)ですが、これが低すぎると、経営者の能力が問われます。

とはいえ、これは上場会社に対する投資家の目線によるものなので、いわゆるオーナー会社では、この観点で評価を行うのは、融資をしている銀行だけでしょう。そして、利益率が上昇すれば、自ずと自己資本利益率も改善されるので、中小企業では、直接的に、貸借対照表に関する指標である自己資本比率を改善というアプローチを行うことは少ないでしょう。

もうひとつ、これも、複数の事業を営んでいる事業規模の大きな会社に限られますが、経営資源を適切に配分しているか、また、預金などを多く持ったまま、事業活動に活用せず機会損失を生んでいないかといった観点で貸借対照表の内容の妥当性をみることがあります。しかし、このような観点での貸借対照表の検討は、事業規模が小さい中小企業では、あまり必要ではないでしょう。

ここまで長々と述べてきましたが、結論はどうなのかというと、中小企業では、貸借対照表によって経営判断をする項目は、損益計算書と比較して少ないということです。だからといって、中小企業では貸借対照表を見る必要がないのかというと、できれば3か月に1回程度、少なくとも、1年に1回は見直すべきでしょう。そして、より精緻な経営判断を行いたいということであれば、損益計算書と同様に、毎月、貸借対照表を見なおしたり、計画貸借対照表をつくって、将来の見通しが妥当であるかも検討するとよいと思います。

2026/3/9 No.3372