今回は、多くの方に知られているようで、
意外と知られていない、ISO9001に
ついて述べたいと思います。
ISO9001は、品質マネジメントシス
テム(Quality Management System→QM
S)の規格のひとつで、国際標準化機構
(International Organization for Stan-
dardization→ISO)が定めた規格です。
QMSとは、品質を管理するしくみのこと
で、管理の対象は製品を生産したりサービ
スを提供したりする工程です。
これは、よい品質の製品やサービスは、工
程を管理することによって生産されたり提
供されたりするという考え方、すなわち、
プロセス・アプローチ( Process Approa-
ch )に基づくものであり、これはQMSの
大きな特徴となっています。
なお、厳密には、日本では、ISO900
1を日本語に訳した、日本工業規格Q90
01(JISQ9001)に基づいてIS
O9001が認証されていますが、ここで
は、便宜的に、JISQ9001をISO
9001として記します。
ところで、ここでいう品質とは、「この製
品の品質は高い」などと一般的に使われて
いる意味での品質ではなく、顧客からの要
求にどれくらい応じているかということを
指します。
この顧客からの要求とは、具体的には、顧
客が要求する製品やサービスの機能、納期
までの期間、価格、環境への配慮、安全性
などを指します。
このQMSを導入することで、よりよい製
品の生産やサービスの提供ができるように
なるわけですが、これが国際規格であるI
SO9001の基準を満たしていれば、国
内や海外の会社から、自社の製品やサービ
スの品質に対する信頼を得ることができる
ようになります。
そのため、日本でも、自社製品の取引相手
を増やす目的で、ISO9001を採り入
れる会社が増加しました。
また、大企業の中には、自社が購入する商
品の信頼性を高めるために、購入先はIS
O9001の認証を受けた会社に限定して
いるという会社も少なくありません。
ところで、私が問題と感じていることは、
ISO9001の認証を得るこが目的と
なっている会社も少なくないということで
す。
私は、ISO9001を高く評価していま
すが、それは、ISO9001の規格通り
に工程を管理できれば、間違いなく製品の
品質が高くなるからです。
そして、自社単独で、徒手空拳によってプ
ロセスを決めていくよりも、すでに世界的
な規格として確立しているプロセスをその
まま導入する方が、短期間でよりよい製品
づくりが実現できます。
とはいえ、実は、このISO9001の定
めるプロセスを導入し、維持することは、
それほどやさしいことでもないようです。
それは、高品質の製品を生産するために
は、それなりのプロセスも必要になるとい
うことから、容易に理解できるところで
しょう。
そして、ISO9001の導入をした会社
の中には、規格通りのプロセスを維持する
ことが大きな負担となり、高品質の製品づ
くりではなく、ISO9001の認証の維
持そのものが目的になってしまっている会
社もあるようです。
そのため、ISO9001については、認
証や更新に費用がかかったり、不要なプロ
セスがあるといった批判的な見解もきくこ
とがありますが、実態としては、維持する
ことがむずかしいことから、そのような批
判的な意見が出てくるのではないかと、私
は考えています。
しかし、ISO9001を導入しているか
どうかにかかわらず、よりよい製品を造る
会社では、結果として、ISO9001の
定めるプロセスに近いものになっていくと
私は考えています。
ですから、高品質の製品を製造している会
社は、ISO9001を批判することには
至らないでしょう。
繰り返しになりますが、ISO9001を
批判している会社は、規格への批判ではな
く、難しいプロセス管理を行うことに音を
上げているということが、実態なのでしょ
う。
そこで、もし、少しでもISO9001に
ご関心のある経営者の方は、認証を得るこ
とそのものを目的とすることなく、それを
定着させ、より質の高い製品を産み出すこ
とができるプロセスの確立を目指して、ぜ
ひ、導入していただきたいと思います。
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