[要旨]
船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんによれば、PDCAにおける計画とは、目標を達成するために、何を、誰が、いつまでに、どうやって実行するのかが見えていなければなりませんが、多くの会社では、これらが明確でない計画が作成されるため、PDCAを実践しようとしても、うまく行かないということです。
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今回も、前回に引き続き、船井総合研究所のシニアコンサルタントの川原慎也さんのご著書、「これだけ!PDCA-必ず結果を出すリーダーのマネジメント4ステップ」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、川原さんは、マネジメント手法の1つとして、PDCAの実践をお薦めしているそうですが、これは多くの経営者の方が当たり前のことと考えている一方で、使いこなせているリーダーがほとんどいないという実態があることから、これを実践することで大きな効果が期待できるということについて説明しました。
これに続いて、川原さんは、多くの会社でPDCAを実践しようとしても、なかなかうまく実践できない原因は、「計画らしきもの」はつくられるけれど、「計画」はつくられていないからだということについて述べておられます。「では、『計画』と『計画らしきもの』は、どこが違うのでしょうか。PDCAにおける『計画』とは、目標を達成するために、『何を』、『誰が』、『いつまでに』、『どうやって』実行するのか、が見えていなければなりません。一方、『計画らしきもの』には、『何を』と『いつまでに』はあっても、『誰が』と『どうやって』がほとんど明らかになっていないのです。なぜ、このようなことが起きてしまうのでしょうか。理由は二つあります。
(1)計画を作るタイミングが悪い:一つは、計画を作るタイミングです。どんな会社であれ年に1回の決算というタイミングがあります。来期の計画を作るタイミングを振り返ってみてください。大体、決算月の1~2か月前になっているのではないでしょうか。この時期は決算に向けて最後の追い込みをかける時期でもあります。自ずと今期決算の着地に向けた業務が優先され、来期の計画についてじっくり考える時間が思うように取れない、というのが実態でしょう。よって、最低限の体裁を整えた『計画らしきもの』で何とか乗り切ろうという考え方になっていきやすいのではないでしょうか。
(2)計画を承認する組織構造に問題アリ:二つめは、計画を承認する組織上の問題があります。会社全体の計画をまとめていく上では、各部門の計画についてまで、一々上層部が検討するとはありません。全体戦略を推進する上でのヌケモレはないか、特に強化すベき施策に関する資源配分は十分か、といったレベルの方が重要な視点なのです。つまり、『何を』、『いつまでに』があれば議論するには十分なので、本来不可欠な要素である『誰が』、『どうやって』に関しては各部門単位で考えれば良いと考えているのです。
(1)と(2)の要素が相まって、『計画らしきもの』をあたかも『計画』のように位置づけたマネジメントが行なわれており、そもそもPDCAがスタートでつまずいているというのは、これらのことを指しています。まずは、『計画』そのものを作れていないという事実に気づくことが大切です」(20ページ)
川原さんは、「PDCAにおける『計画』とは、目標を達成するために、『何を』、『誰が』、『いつまでに』、『どうやって』実行するのか、が見えていなければならない」と述べておられますが、私は、これに「どれだけ」(数量や金額)を加えた内容を事業計画に加えなければならないと思います。そして、このような事業計画を作成することで、机上のシミュレーションを行うことができます。この机上のシミュレーションを行う理由は、分かりやすい例で言えば、目標に掲げた生産量が、自社の生産体制の能力の範囲内でなければ、実行する前から未達成になることが確実です。
また、販売数量を増やす計画を立てても、そのための従業員数が十分か、スキルは高いか、広告宣伝費は十分かといったことも確認できなければ、その計画は絵にかいた餅になりかねません。もちろん、計画が達成できなくなる要因には、外部環境の変化など、予見できない要因はたくさんあります。しかし、外部環境の変化などは自社でコントロールできないものである一方、机上のシミュレーションは、計画が達成できない要因を事前に確認できるわけですから、これを行うことは十分な意義があります。
ところが、このような机上のシミュレーションを行うには、川原さんもご指摘しておられるように、ある程度の労力が必要になります。そこで、机の上で作業をするくらいなら、現場で働く方がよい結果につながると考えられがちです。私は、このような考えは誤っていると思います。その理由は、現在のようなVUCAの時代だからこそ、闇雲に活動をしても、空振りが増えるだけで、成果を得ることが難しくなりつつあるからです。そうであれば、現場で働く時間が減少しても、精度の高い活動のために、机上での活動を増やすことが大切だと思います。
もちろん、机上での活動が多すぎることも問題ですが、少なすぎてもうまくいきません。そして、このような管理活動は、当然のことながら、会社の職位が高いほど、比重が多くなるものです。これはイメージですが、一般社員は10%程度、係長は20%程度、課長は30%程度、部長は50%程度、経営者は60%程度など、上位の職位に就いている人ほど、管理活動に労力を割かなければなりません。
ところが、管理活動そのものが苦手という方が、日本ではまだ多いのではないでしょうか。そこで、職位があがっても、「現場第一主義」という錦の御旗を掲げて、管理活動を避けてしまう人が多いのだと思います。繰り返しになりますが、私は、事業活動の現場を軽視してもよいとは考えていません。無計画な活動や根拠の薄い活動を減らすためには、きちんとした計画が大切ということです。
2026/3/20 No.3383
