鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

これからの銀行業界

先日、あるビジネスパーソン向けの雑誌の

読者投稿欄に、「日本の銀行は3時に閉店

するなど、過去の慣習をなかなか変えられ

ず、改革が進んでいない」という主旨の意

見が書かれていました。


私も、銀行に改善の余地は残っているもの

の、この投稿を見て、銀行に対する誤解は

まだまだ多いと感じました。


確かに、預金・為替業務は3時で終了する

ものの、それは、資金決済は時限を決めて

行うものだからなのであって、3時に融資

業務を含めたすべての業務が終了するわけ

ではありません。


ですから、銀行の閉店時刻を6時に延長し

たとしても、現状が改善することにはなら

ないでしょう。


また、別の誤解として、外国の銀行では、

遅い時刻まで銀行が相談業務を行っている

のに、日本では、相談業務があまり行われ

ていないというものがあります。


これは、恐らく、外国のプライベートバン

キング業務のことを指していると思います

が、プライベートバンキング業務は、それ

なりのまとまった資金を預けている人向け

の業務であり、場合によっては、銀行が顧

客に対して、最低預入残高以上の預金の預

入を求めたり、月間取引手数料を徴収した

りしています。


しかし、日本では、お金を預ける側が銀行

に対して手数料を払うという慣習になじん

でいません。


そして、単に、顧客から手数料をもらうこ

とのできない一般の銀行の窓口業務を遅い

時刻まで延長するということは、採算が合

いません。


話を本題にもどすと、最近、前述の読者投

稿記事よりも、私がもっと問題であると感

じることがありました。


それは、前金融庁長官の発言です。


いま、ある地方銀行が審査資料の改ざんを

行うなど、顧客をあざむいて融資をしてい

たことが問題になっていますが、そのこと

が発覚するまで、前長官は、その地方銀行

について、地方銀行のお手本として評価し

ていました。


(ご参考→ https://goo.gl/Cn7ZNg


金融庁は、まさに銀行の監督官庁であり、

銀行に対して検査を行うなどの監督権限を

持っています。


問題の地方銀行が隠れながら不正を行って

いたとはいえ、報道機関や評論家などの外

部の人ではなく、監督官庁のトップが評価

すれば、その銀行はすばらしい銀行である

と、多くの人が受け止めることは当然のこ

とでしょう。


そういった面で、前長官の発言は厳しく批

判されるべきです。


ただ、お手本に上げた銀行が不適切とはい

え、前長官の考え方は必ずしも誤っていな

い部分があると思います。


地方銀行の中には、銀行の事業の中核的な

部分であるリスク管理、すなわち積極的な

融資業務を怠っている銀行があり、私も、

それは改善すべきだと思います。


ところが、前長官がお手本として示してい

た銀行が、実は、不正を行っていたことか

ら、金融庁としては、銀行のあるべき姿を

示すことが難しくなってしまいました。


ここで、私が問題だと思っていることは、

この、金融庁があるべき銀行のイメージを

持っているものの、それを実現できている

銀行が存在しないということです。


それくらい、現在の銀行の現場の問題は、

難しい環境にあるということです。


ですから、冒頭で触れた、ビジネス誌の読

者のように、誤解をしたまま銀行を批判す

る人が存在することはやむをえないのかも

しれません。


では、これからの銀行はどうすればよいの

かということですが、文字数の兼ね合いか

ら簡単に書くと、私は、銀行が適正な金利

を融資先から得ることだと思います。


具体的には、預金金利に加えて、事務コス

トとして約1%、そして、融資先の信用度

合いに応じた金利を上乗せした金利を融資

先から徴収できるようにすることです。


しかし、それが実現できていない理由とし

ては、現在は、銀行の数が多いからでしょ

う。


そして、もうひとつの理由としては、現在

は中小企業にとって決して楽な経営環境に

はないことから、政府側の政策として、融

金利を上昇させることを実践しにくいの

でしょう。


しかし、現状が続けば、経営が立ち行かな

くなる銀行がたくさん現れ、結果として中

小企業の円滑な資金調達に悪影響がでるこ

とにもなりかねません。


私は、これは、中小企業支援にかかわる政

府機関が、表面的には公表してはいないも

のの、地方の金融機関の経営の合理化を促

すにあたっては、淘汰される融資先が現れ

ることを前提にしていると思います。


もちろん、ただちにそのような状況にはな

らないとは思いますが、これからは、中小

企業が銀行との良好な関係を維持するため

には、受け身でいることなく、銀行から見

て融資をしたいと思われるような会社にな

ることが欠かせないでしょう。

 

 

 

 

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