鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

早めの対応で自己破産は避けられる

[要旨]

事業再生コンサルタントの吉田猫次郎さんによれば、自己破産はあまり薦めていないということです。その理由のひとつは、事業管理をきちんと行い、早めの対応を行っていれば、業績を回復させたり、債務整理をしてもらったりするなど、もっと負担のすくない対応方法があるからであり、そのことによって、連帯保証人に債務を負担してもらったり、経営者が所有している自宅を失ったりすることを避けることができる可能性もあるということです。


[本文]

事業再生コンサルタントの吉田猫次郎さん(本名は吉川博文さん)のメールマガジンを読みました。吉田さんは、自己破産制度の利点を肯定しつつ、かつて、吉田さんが食品の貿易業を営んでいたとき、多額の負債を抱えていたにもかかわらず、自己破産をしない選択を行い、借金をすべて返済したと述べておられます。そして、事業再生コンサルタントとして活躍している現在も、自己破産はあまり薦めていないということです。私も、吉田さんと同感です。とはいえ、自己破産することを選ばないという判断は、考え方や価値観によるものなので、絶対に正しいということではありません。

本旨から外れますが、山梨県韮崎市に本社があった地場スーパーの株式会社やまとは、事業再生の途上であったにもかかわらず、当時の社長の小林久さんの意思に反して、2017年に105年の歴史に幕を閉じました。同社は、最盛期は16店舗を構え、年商64億円でしたが、破産したときは負債16億円を抱えていました。もし、やまとの事業再生を妨害しようとする人がいなかったら、同社はしばらく事業を継続できていたかもしれませんが、ちょっとしたことがきっかけで破産申請をせざるを得なくなりました。

ただし、私が同社の破産手続きで注目していることは、破産処理に関し、裁判所への予納金400万円、弁護士への費用400万円、小林さん個人の裁判所への予納金50万円、弁護士への費用50万円、その他の費用100万円、合計約1,000万円が必要だったそうですが、それらは、直ちに、「やまとファン」の人たちの寄付で集まったそうです。

会社の倒産というと、小林さんには失礼ですが、一般的には社会に迷惑をかけることなのですが、やまとの場合、応援する人がいるという、なかなか見られない倒産だったと思います。そして、このような例を見ると、自己破産という制度は必要だと感じます。それでも、吉田さんが自己破産をあまり薦めないのは、きちんと事業再生に取り組むことで、自己破産を避けることができると考えているからだと思います。

すなわち、自己破産に至る前に、自力での事業改善、銀行融資のリスケジュール、私的整理型の事業再生など、自己破産を避ける手段はあります。私がこれまで中小企業の事業改善のお手伝いをしてきた経験から感じることは、業績があまりよくない会社の多くは、業績が悪化し始まった時点では、直ちに改善に取り組もうとしません。それは、事業悪化は一時的なもので、しばらくすれば改善するのではないかという、楽観的な状況判断に基づくものだと思います。

そして、もうひとつは、きちんと事業管理をしていないことも判断を誤る原因だと思います。すなわち、銀行などは、「この会社の赤字は構造的なもので、将来、回復する可能性は低い」と分析していても、経営者は、肌感覚だけで自社の事業を判断していたり、また、会計そのものが不得手なために、資金繰が多少苦しくなっても、その状況を正確に把握できないからだと思います。

そのような会社は、やがて、銀行から追加融資を受けることができなくなり、いわゆる闇金から融資を受けたり、粉飾決算などを行ったりすることが多くなります。もちろん、そのような会社は、対応の選択肢が狭まって行き、あまり時間がかからずに自己破産しか選択できなくなる状況になってしまうでしょう。もちろん、望んで自己破産をする経営者はいないと思います。しかし、早めに適切な対応をしていれば自己破産を避けることができるという例も多いと思います。

このような例えはこのましくないことをお許しいただきたいのですが、身体の具合が悪くなった時、すぐに病院に行けばいろいろな治療法があり、助かる可能性があったにもかかわらず、まだ大丈夫だろうと先延ばしにしていたら、いきなり倒れ、大手術以外に手段はなくなってしまうというような状況に似ています。ここまでの内容をまとめると、自己破産の制度は必要であり、最終的にそれを申請することが妥当ということもありますが、事業管理をきちんと行い、早めの対応を行っていれば、業績を回復させたり、債務整理をしてもらったりするなど、もっと負担の少ない対応方法があるということです。

2026/3/17 No.3380