鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

製造業のサービス化

[要旨]

現在は、商品の機能や品質に大差がなくなり、価格競争に陥るコモディティ化に対応するために、製造業がサービス分野へと進出する『製造業のサービス化』も進んでいます。そこで、これからは、製造業であっても、製品そのものの性能を高める活動とあわせて、付帯するサービスの品質を高める活動の両方について注力していく必要があります。


[本文]

今回も、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員の鈴木隆さんのご著書、「御社の商品が売れない本当の理由-『実践マーケティング』による解決」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、Amazonのマーケットプレイス事業は、競合相手の商品も自社プラットフォームで販売するという、従来の考え方とは真逆のことをする事業であるものの、それは、顧客をより満足させるものであることから、その後、収益の柱になったという事例から、顧客を起点とする考え方が重要であるということを説明しました。

これに続き、鈴木さんは、「サービス化」の進展についてご説明しておられます。「商品の機能や品質に大差がなくなり、価格競争に陥るコモディティ化に対応するために、製造業がサービス分野へと進出する『製造業のサービス化』も進んでいます。(中略)ゼネラル・エレクトリック(GE)は、航空機エンジンの販売を主とし、それに付随するものとして部品販売やメンテナンス、ファイナンスなどを個別に提供していました。


1980年代半ばになって、それらをひとつのサービスとして統合し、稼働時間に応じた従量課金制に転換しました。その後、エンジンにセンサーを組み込んでリアルタイムでデータを収集分析し、故障を事前に予測して予防するだけなく、燃費のよい最適な飛行方法を提案して、燃費を削減するサービスを導入するなど、進化を続け、いまや、民間航空機のエンジンでは過半数のシェアを抑えて、GEの稼ぎ頭になっています。現在では、航空機エンジンにとどまらず、発電機や機関車などで、同様のサービスを全社的に展開しています」(63ページ)

自社製品を顧客に評価してもらうようにするためには、性能を高めたり、価格を下げたりするということが考えられます。しかし、現在は、製品そのものの評価を高めることには限界に来ており、製品に付帯するサービスでの評価を高めなければ、差別化が難しくなってきているのでしょう。それが「製造業のサービス化」ですが、現在は、さらにそのサービスの比重が高まってきていると思います。例えば、トヨタは、「『自動車をつくる会社』から、『モビリティ・カンパニー』、すなわちモビリティに関わるあらゆるサービスを提供する会社にフルモデルチェンジする」と宣言しています。

だからといって、これからはサービスにだけ注力すればよいということにはなりません。製品の本来の性能も高めなければならないことに変わりはありません。ただし、前述のことからも分かるように、製品そのものと、それに付帯するサービスの両方で、総合的に顧客に評価されなけれあなりません。したがって、経営者には、片方だけではなく、両方について関与し、総合的な評価を高めるようにしなければならなくなっていると、私は考えています。

2023/2/25 No.2264