鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

利益は顧客からの信任票

[要旨]

登山用品の製造販売をしているパタゴニアは、50年以上、業績を伸ば続け、また、環境保護のための寄付を続けています。そのような理念を貫くことができたポイントは、利益は顧客からの信任票と考え、顧客から支持を得られるための活動を忠実に実践していることのようです。


[本文]

米国の登山用品などの製造販売業である、パタゴニアの創業者の、イヴォン・シュイナードさんのご著書、「社員をサーフィンに行かせよう-パタゴニア経営のすべて」を読みました。同社は、財務内容を公開していないので、詳しい情報は分かりませんが、年間売上高は、米国通貨で約8億ドルと言われています。また、環境保護活動にも熱心で、これまで、1億4,500万ドルを寄付してきたことでも有名です。

では、業績も良好で、かつ、寄付活動も続けてこられた同社はどのような会社なのかということについて、私は興味を持ったのですが、シュイナードさんの本を読んでも、そのすべてを理解することはできませんでした。ただ、同書には、印象に残ったことが書かれてあったので、ご紹介します。

パタゴニアのミッション・ステートメントに、『利益』という文言は出てこない。我々は、事業を通じてよい行いをどれだけできたかが、最終損益だと思っているからだ。とは言いながら、私企業の場合、事業を継続し、さまざまな目的を達成するためには、まず、利益を上げなければならない。だから、我々は、利益は信任票であると考えている。

我々がしていることを、顧客が認めてくれている証である、と。(中略)ただし、(我々は)利益を目標としているわけではない。『すべてを正しく行えば』、結果的に利益が得られると、禅のように考えているからだ。そんなパタゴニアにとって、財務は、単なる金銭管理に留まらない。普通と対極にある、会社の舵取りを、普通の財務手法でなければならないのだ。リーダーシップの妙だと言えるだろう」(252ページ)

すなわち、シュイナードさんによれば、カスタマーオリエンテッドを実践することによって、事業活動の結果は利益を得られることになるということなのでしょう。これは、言葉だけを聞けば、至極当然なのですが、実践は難しいようです。例えば、役職員の方が、顧客のためにどれだけ努力をしても、結果として赤字になった会社は、顧客からの「信任票」を得られていないということにります。

では、どうすれば顧客から「信任票」を得ることができるのかということは、なかなか発見することが難しかったり、または、発見できても実践が難しかったりします。だから、会社経営の成否は、顧客から信任票を得る方法を発見し、実践できるかどうかということなのであり、経営者の能力は、それを発見し、実践できるかどうかということなのでしょう。

2022/10/8 No.2124