鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

バランス・スコア・カード(3)

前回の配信で、BSCの4つの視点を説明

しましたが、今回は、その4つの視点の関

係について説明します。


ところで、バランス・スコア・カードの、

「バランス」とは、どういうことを意味し

ているのでしょうか?


それは、かつては、会社に対する評価が、

財務面に偏っていたということへの反省を

踏まえ、財務の視点と、非財務の3つの視

点(顧客の視点・業務プロセスの視点・学

習と成長の視点)を合わせた4つの視点の

均衡(バランス)をとるという意味です。


では、4つの視点の間で、どのように均衡

をとればよいのか、それぞれの視点の関係

を見ながら説明していきます。


(1)財務と非財務の均衡:BSCの最大

の特徴である、非財務面での評価を財務面

の評価と均衡させようとする関係性です。


会社の評価方法に、財務面での評価を欠く

ことはできませんが、財務面での評価を高

めるために、非財務の3つの視点での活動

で、どのように実現させるのかということ

を明らかにすることで、財務面と非財務面

の活動の均衡を図ることができるようにな

ります。


(2)短期的な活動と中長期的な活動の均

衡:財務の視点は、利益率や成長率など、

主に1年以内に達成されることを目指す活

動が主なものです。


それ以外の3つの視点は、1年以内に限ら

ず、数年間かけて達成しようとするものが

多く含まれることが考えられます。


例えば、学習と成長の視点で、「採用した

人材の能力を高めるための活動」を行って

いたとき、その成果は、数年後になって、

接客能力の向上などによって、財務面で現

れるものです。


このように、4つの視点から最適な活動を

検討することで、短期的な活動と中長期的

な活動の均衡を図ることができます。


(3)要因と結果の均衡:各視点から検討

される活動には、要因と結果の関係にある

ものがあります。


例えば、学習と成長の視点で「採用した人

材の能力を高めるための活動」を行った結

果、顧客の視点で「顧客満足度が向上する

ための活動」が実行できるようになり、さ

らにその結果、財務の視点で「利益率の向

上のための活動」が実行できるようになり

ます。


このように、各視点での戦略を個々に検討

するのではなく、「将来の業績向上ための

活動」→「直面している課題として取り組

む活動」→「結果としての実績を向上させ

るための活動」という、時間軸を念頭にお

いた因果関係を均衡させて検討することが

できるようになります。


(4)内部と外部の均衡:4つの視点で検

討する活動の働きかける対象は、内部に働

きかける活動と、外部に働きかける活動に

分けることができます。


前者は、社内のしくみを対象とする業務プ

ロセスの視点によるものと、従業員やノウ

ハウなどを対象とする学習と成長の視点に

よるものです。


後者は、顧客を対象とする顧客の視点によ

るものと、株主や銀行などの債権者を対象

とする財務の視点によるものです。


このように、4つの視点に基づく活動を検

討することで、内部からの評価と外部から

の評価を均衡させることができるようにな

ります。


このように、BSCは、単に、財務の視点

以外の視点からの評価を取り入れるという

だけでなく、さまざまな面からの均衡を図

ることができるようになるという点で、優

れています。


ここまで、3回にわたり、BSCに説明し

てきましたが、3回の説明でも、BSC全

体の、ほんの入り口部分しか説明できませ

んでした。


全部説明しようとすると、たくさんの回数

が必要になりそうなので、BSCについて

は、いったん、これで終わりにして、これ

以降の部分は、別の機会に説明したいと思

います。


なお、3回分のまとめとして、BSCのよ

さについて述べさせていただくと、事業戦

略というと、効果の高いものを実施しなけ

ればならないと考えている経営者の方は多

いと思います。


その考え方は誤りではないのですが、一方

で、効果の高い事業戦略を遂行するには、

それなりの経営資源(ひと、もの、かね)

が必要になります。


そして、多くの会社は経営資源が潤沢では

ないからこそ、効率的な資源配分が大切に

なってきます。


この資源配分の巧緻こそ、経営者の能力の

問われるところであり、事業の優劣の決め

手になると思っています。


極端な例ですが、経営自身が営業活動に熱

心で、どんどん受注をとってくるけれど、

それに着いていく従業員が疲弊していると

か、経営者は製品づくりに集中しているけ

れど、なかなか売れないか、採算が得られ

ずにいるため、業績はよくならないという

会社を見るときがあります。


このようなバランスの悪い事業活動をして

いる会社こそ、BSCを大いに活用できる

し、新たな事業を始めるよりも、確実に事

業を改善できるようになります。




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