鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

採算管理を通して部下の士気を高める

[要旨]

会社経営者の多くは、部下たちに主体的に活動することを望みますが、それを実現するには管理体制を整えるだけでは足らないことから、例えば、京セラ創業者の稲盛和夫さんが考案した、1時間当たりいくらの付加価値を生んでいるかを中心に管理を行うアメーバ経営を参考に、部下たちの士気を高めながら、採算管理を高めることをお薦めします。


[本文]

前回は。税理士の大久保圭太さんのポッドキャスト番組のリスナーの方からの、「社長が各部門の主体性を発揮してもらいたいとの意図から、各事業部制から持株会社制に移行したものの、経理業務が複雑になったことから、持株会社制をやめてもとにもどして欲しいと思っているけれど、そのようなことは可能か」という質問に関連し、会社の事業の部門別管理は大切ですが、それだけでは、各部門が自主的に活動をするための決め手の要因にはならないものの、精度の高い経営判断のためには、部門ごとの業績の管理は大切であり、比較的事業規模の小さい中小企業では、損益計算書に関する項目を管理することが妥当と思われるということについて説明しました。

ところで、大久保さんに質問した方の勤務する会社の社長のように、部下たちに主体的に活動してもらいたいと考えている経営者の方は多いと思います。この課題の解決については、たくさんのアプローチの方法があるのですが、まず、思い浮かべるものは、京セラ創業者の稲盛和夫さんが考え出した、アメーバ経営です。京セラの黎明期、稲盛さんは、部下たちに自分と同じ考え方で事業活動に臨んでもらえるようにしてもらうにはどのように働きかければよいか思案し、アメーバ経営という仕組みを考えついたそうです。

この経緯については、稲盛さんのご著書、「京セラフィロソフィー」に書かれています。「『売上を極大に、経費を極小に』という経営を続けながら、会社をつくって数年経ったころ、『時間当たり採算制度』という考え方、つまり、『アメーバ経営』という経営管理システムのコンセプトが芽生えました。売上から原材料などの諸経費を引いた残りが、いわゆる付加価値です。

その付加価値を、残業代なども含めた社員の全労働時間で割ると、1時間当たり、いくらの付加価値をつくり上げたのかがわかります。京セラでは、これを、『時間当たり』と呼び、その数字を指標として経営を行なうのが、アメーバ経営のシステムです。全従業員の平均給与を働く時間で割れば、1時間当たりの平均給与が出ます。その1時間当たりの給与、例えば、それを1,000円とするなら、社員が1時間に1,000円の給与をもらって働き、いくらの付加価値を生み出しているのかを見る。

つまり、自分の労働を通じて、いくらの付加価値をつくり出すことができるかということを考えるのです。その付加価値が高いほど、会社により多くの貢献をしているということになります。もし、給料と同じ価値しか生み出していないとなると、プラスマイナスゼロで、会社には役立っていないことになるわけです。企業として社会的な貢献をしたり、または株主に配当などで報いていこうと思えば、従業員は会社が払う人件費よりもはるかに高い価値を生み出していかなければなりません。

アメーバ経営は、『1時間当たりいくらの付加価値を生んでいるか』ということによって、それを見ていくわけです。ですから、京セラでは、『私の部署は、これだけもうかった』というような言い方をしないで、『私の部署は、1時間当たり、何千円の付加価値を生んだ』と表現しています。これが『時間当たり』という言葉になって定着し、その時間当たりをベースとして、アメーバ経営は構築されてきたのです」(482ページ)

この稲盛さんの説明からわかるように、稲盛さんは、従業員の方が、自分が受け取る給料に対して、どれくらいの付加価値が生み出されているかを意識させ、従業員の方の士気を高めてきたようです。この方法については、管理会計を深く学んだ人からは物足りなさを感じると思いますが、まず、従業員の方たちの自主性を高めようとする方法としてはよい方法だと思います。

そして、この方法に物足りなさを感じた場合は、バランススコアカード(BSC)を導入して、KPIを設定し、より高度な目標管理を行うようにするとよいと思います。ただし、ここで気をつけなければならないことは、管理体制や目標設定だけでは、従業員の方たちが自主的に動くようになるには不十分です。これについては、組織開発やリーダーシップなどのアプローチも欠かせませんが、これらについては、また、別の機械に説明をしたいと思います。

2026/3/7 No.3370