[要旨]
経営者の方は、従業員の方にチャレンジ精神を求めがちですが、雇われる立場の人たちは、あまり、競争を好まない価値観を持つ人が多いので、キャリアパスを明示したり、独立支援制度などを整えることが必要でしょう。
[本文]
経営コンサルタントの相馬一進さんのブログを読みました。要旨は、「ある日、相馬さんが電車に乗っていたとき、同じ車内の近くにいた女性2人が、『結婚するメリットはないから、独身の方がよい』という話をしていた。恐らく、2人とも未婚か、離婚歴がある人ということが分かるが、このように、人の価値観は、『自分の現状を肯定するためにられる』」、というものです。
このことは、多くの方が理解できることだと思うのですが、しばしば、そのことを忘れてしまっていると思われることがあると私は感じています。相馬さんもご指摘していますが、能力が高い人は、競争を活発にして、努力が正当に認められる社会にすべき、すなわち、自分にとって有利な社会になるべきという価値観を持ちます。一方、あまり能力が高くない人は、富の再分配が行われ、人によって所得の差がない社会になるべき、すなわち、これも、自分にとって有利な社会になるべきという価値観を持ちます。
そして、会社経営者の多くは、能力が高い人なので、前者のような価値観を持つ人たちでしょう。ところが、そのような能力の高い経営者の方は、自分の価値観を、部下にも求めがちになってしまうことがあります。でも、会社に勤務しようとする人は、すべてとは言いませんが、どちらかというと、経営者になることを目指していないからこそ、会社に雇われるという選択をしています。そうであれば、あまり競争を望まない価値観を持っているわけですから、そこで摩擦が起きてしまいかねません。
もちろん、従業員の方は、競争を好まないという価値観を持ってもしかたないとは、私も考えていませんが、立場が異なれば、価値観も異なります。そこで、経営者の方が従業員に対し、経営者と同じ価値観を求めてばかりいれば、両者の距離は離れたままとなるでしょう。しかし、経営者の方が従業員に対して、競争に挑もうとする考え方を持ってもらおうとすることは、必ずしも誤りとは言えないと思います。ただ、その場合は、成果に応じたキャリアパスを明示したり、独立を支援する制度を整備することが前提でしょう。