鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

マーケットインを意識したプロダクトアウト

[要旨]

ニッチな商品は、市場全体からみれば需要は相対的に小さいものですが、中小企業から見ると1つのロットになるものもあります。したがって、需要な小さな商品は、インターネットによって受注することで、収益を得ることも可能な場合があると考えられます。


[本文]

日経ビジネスに掲載されていた、ビニール傘メーカーのホワイトローズの社長の、須藤宰さんへのインタビュー記事を読みました。この記事には、参考になる示唆に富んでいるのですが、「マーケットインを意識したプロダクトアウト」という言葉が最も印象に残りました。同社は300年前の1721年に創業し、須藤さんが10代目の社長なのだそうですが、ビニール傘を開発したのは、前社長の須藤さんのお父さんだそうです。

そのお父さんは、「高級なビニール傘を必要とする人は必ずいる」という信念を持っていたそうで、須藤さんはその信念を引き継いで、高級ビニール傘を販売しているそうです。もちろん、その需要は多くありませんが、「売上高は8,000万円から1億円の間をずっとうろうろしている」そうで、正社員2名、パート7名の会社としては、事業を維持できる売上になっているそうです。では、具体的に、どうやって売上を得ているかというと、高級ビニール傘は、政治家やお坊さんにニーズがあるそうです。

そこで、「一度に売れる数は少ないかもしれないけれど、ほかにも同様のニーズはあるかもしれない。昔ならそのお客様にたどり着けなかっただろうけど、インターネットを使えばつながることができます。各都道府県にお客さまが2~3人ずついたら、ぎりぎり1ロット分にはなる」すなわち、需要の少ない製品を、インターネットを使って1つのロットにするというロングテール戦略を取っているということだと思います。

この戦略は、インターネットがなければ実現できないものですが、「高級なビニール傘を必要とする人は必ずいる」という、須藤さんのマーケットを意識した信念がなければ、実現はできなかったでしょう。いま、コロナ禍で、既存製品の需要が減少している会社が少なくないと思いますが、小さな需要を集めるという、須藤さんの戦略は、事業改善のヒントになると私は考えています。

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