[要旨]
阪神佐藤興産の社長の佐藤さんは、3か月ごとに、取引銀行に業績を報告に行っているそうです。これは、佐藤さんが、「お金を借りた人が、貸してくれた人の信用を得るには、お金の使い道をきちんと報告する必要がある」と考えているからであり、これを実践することで、同社は、無担保無保証で融資を受けることができる要因のひとつとなっているそうです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、阪神佐藤興産の社長の、佐藤祐一郎さんのご著書、「小さくても勝てる!~行列のできる会社・人のつくり方」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、阪神佐藤興産は、協力会社への代金支払いについて、支払手形での支払いを止め、また、当月末、または、翌月15日に振込みによる支払いにした結果、多くの会社が同社との取引を望むようになり、優秀な会社が同社と取引するようになったということを説明しました。
これに続いて、佐藤さんは、定期的な銀行訪問を行っているということを述べておられます。「(当社が)金融機関との関係をよくするものに、『銀行訪問』があります。4半期ごとに、各行へ数字を報告に行きます。多くの会社は、銀行からお金を借りても、そのお金をどのように使ったのかを報告しません。報告をしないから、銀行は安心できずに、担保や保証を求めるわけです。お金を借りた人が、貸してくれた人の信用を得るには、お金の使い道をきちんと報告する必要がある。
だから、銀行訪問によって、会社の現状、売上、経費、利益、今後の事業展開などについて報告すると、先方は、当社を信用してくださるのです。銀行訪問は、10年以上前から1回も欠かさず行っています。銀行訪問が苦痛だと感じる経営者もいるようですが、私はまったくそのような気持ちはありません。むしろ、銀行の担当者から、新たなお客様をご紹介いただけるので、私は営業活動の1つと位置付けています」
佐藤さんも述べておられますが、銀行を訪問することが苦手で、必要最低限のときだけ接触しているという経営者の方は少なくないと思います。そのような経営者の方が銀行を敬遠する理由のひとつは、銀行は、「晴れの日に傘を貸して、どしゃぶりのときに傘を取り上げる」と考えているからだと思います。事実、割合としては高くないですが、銀行は、業績の悪い会社に対しては、取引を縮小しようとします。
すなわち、雨が降り出したら(業績が悪化してきたら)傘を取り上げる(融資を回収する)のです。しかし、このような対応は、銀行だけに限らないでしょう。一般の事業会社でも、業績の悪い会社との取引は、売上代金が回収できなくなってしまうことを避けようとして、取引を縮小すると思います。
ですから、私は、「銀行は、いざとなったら、手のひらを返すのだから、あまり深く付き合っても意味はない」と考えている経営者の方がいるとすれば、それは、まったく逆だと思っています。本来は、銀行から手のひらを返されることがないようにすることが、銀行訪問の目的です。しかし、銀行との関係を疎遠にすれば、いざというとき、手のひらを返すような対応をされる確率が高くなるでしょう。
2023/12/24 No.2566