[要旨]
アスクル前社長の岩田彰一さんによれば、かつて、同社の名古屋の物流センターの設備の不具合により稼働停止になったとき、東京の本社の従業員の方、約100人が、自主的に「義勇軍」として、終業後に新幹線で名古屋に向かい、ピッキング作業などの支援を行いましたが、これは同社がラグビー型組織になっているから実現したことであり、このような組織づくりは一朝一夕にはできないことから、経営者の方は早めに組織づくりに取り組まなければならないということです。
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今回も、前回に引き続き、アスクルの前社長の岩田彰一郎さんのご著書、「起業家になる前に知っておいてほしいこと-経営の難問を乗り越えるたった一つの考え方」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、岩田さんがアスクルの社長時代、会社内での知識やノウハウの共有も大切と考え、例えば、MDの合宿を行い、今のカタログに対して顧客がどう評価をしていて、その結果がどのような数字になっているか、それを踏まえて次のカタログの企画をどうするかを、200~300人の前で発表してもらって、知識やノウハウを共有するとともに、優秀な発表をしたMDを表彰し、モチベーションアップも図っていたということについて説明しました。
これに続いて、岩田さんは、物流倉庫に不具合があったときは、本社の従業員の方が支援をしていたということについて述べておられます。「アスクルは、社名の通り、『明日来る』をお客様との約束にしていましたが、まれに、設備の不具合などで、物流センターがストップすることがありました。その時、本社の社員が『義勇軍』として、自主的に手伝いに行ってくれたのです。名古屋のセンターがストップした時は、終業後に100人ほどが東京から新幹で名古屋に向かい、夜中に商品のビッキングを手伝って、翌朝に現場の人に引き継いで帰る、といったことをしてくれました。
有志が集まった急ごしらえのメンバーなので、リーダーシップをとる人は自然発生的です。物流部門の社員から管理部門の社員まで、皆が自主的に手を挙げてリーダーを決めていました。役員も現場の若い係長クラスの社員の指示に従い、全員が一丸となって物流センターのビンチを乗り切ったのです。会社のために、今、自分が何をすベきか、何ができるかを考えて行動するのはまざにラグビー型組織です。
埼玉県の物流センターの大火災が起きた時も、のべ約4,600人の社員が物流センターに『義勇軍』として入り、出荷作業をしてくれました。もちろん、『義勇軍』は社員に時間外労働をしてもらう行為なので、残業代も支給しましたし、代休を取得できるようにもしました。ただ、参加した社員の評価は高くし、参加しなかった社員の評価は低くするといったことはせず、人事評価にはいっさい反映させませんでした。
介護、子育て、体調など、さまざまな理由で参加できない社員もいます。もしかすると社員のなかには、当事者意識を感じて自主的に参加したのではなく、周囲の人が行くので仕方なく参加していた人もいたかもしれません。しかし、現場で働く『義勇軍』を見ていると、モチベーションが高く、嬉々として働いていました。そうやって大勢の社員が自主的に動き、楽しそうに働いてくれたことは、率直にいって、とても嬉しいkとでした。
また、スタッフ部門の社員が『義勇軍』に参加することで、日常では触れることのない物流センターの業務やその大変さを知り、自分の業務に活かせるようになったり、部署や役職に関係なく協力して作業をすることで社員同士の横のつながりができたりと、副次的な効果もあったようです。振り返ってみると、ラグビー型組織をつくるのは簡単にはいかないと感します。
オフィスをフラットにしたり、役職をなくしたりするぐらいでは、そうした組織はつくれないでしょう。週1回の朝礼を20年以上続けたり、さまざまな立場のスタッフが『知を共有する仕組み』を回したりと、経営者も社員も意識し続けながら時間と労力をかけて、ようやく実現することだと思います。また、他の会社を見ていて思うのは、創業当初に生まれた自律的な組織の文化が崩れていくのはあっという間だということです。組織が成長し始めたら、早い段階から取り組んだほうがいいと思います」(226ページ)
アスクルの「義勇軍」については、他社でも同様のことが行われることは珍しくないと思います。ある会社のある部門がピンチになったとき、他の部門がその部門を助けるということは少なくないでしょう。しかし、岩田さんがお伝えしようとしていることは、東京にある本社の従業員の方が名古屋の物流センターの義勇軍になったことは、そのほどんどが会社からの指示ではなく、自らの意思だったということだと思います。
というのは、アスクルの「義勇軍」では、「自主的に手を挙げてリーダーを決め」て支援を行ったり、「役員も現場の若い係長クラスの社員の指示に従」ったりしたというのは、「明日来る」という提供価値を維持するという志のもとに活動しているのであり、会社や上司の指示という面は薄いでしょう。そして、大切なことは、このような活動ができる組織が「ラグビー型組織」であり、そのような組織は一朝一夕ではつくることができないので、経営者の方が時間と労力をかけなければならないということだと思います。
この役目は、アスクルでは社長であった岩田さんが担ったわけですが、繰り返しになりますが、時間と労力を要することであるから、岩田さんはご著書で、「組織が成長し始めたら、早い段階から取り組んだほうがいいと思」うと強調しておられるのでしょう。アスクルが競争力の高い会社になったのは、「明日来る」という提供価値をつくっているからであり、その提供価値をつくるのは、ラグビー型組織であり、そのラグビー型組織をつくったのは岩田さんを始めとした経営者だということです。ただ、組織づくりという課題は難易度が高いために、それに消極的である経営者の方も少なくないと、私は感じています。
2026/4/16 No.3410
