鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

良いものを安く売ることが企業の使命?

[要旨]

マーケティング戦略の多くは、広く浅くを志向するものか、狭く深くを志向するものかに分かれます。そして、広く浅くを志向するマーケティング戦略は低価格戦略でもあり、狭く深くを志向するものは高付加価値戦略でもあります。


[本文]

今回も、前回に引き続き、中小企業診断士の佐藤義典先生のご著書、「図解実戦マーケティング戦略」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回まで、ニーズの広げ方、深め方について説明してきましたが、佐藤先生は、マーケティング戦略の多くは、広く浅くを志向するものか、狭く深くを志向するものかに分かれるとご説明しておらえれます。そして、広く浅くを志向するマーケティング戦略は低価格戦略でもあり、狭く深くを志向するものは高付加価値戦略でもあると述べておられます。さらに、これらの価格戦略について、日米での違いについて述べておられます。

「狭くて深い市場には、外国のブランドが多く見られます。その1つの理由は、外国企業は、『良いものは高くて当然』という発想をしており、日本企業は、『良いものを安く売ることが企業の使命』という発想をすることが多いからだと、個人的には考えています。外国企業は、『良いものを高く売る』ために、様々な努力をしますが、特に、ブランドの作り方には長けています。日本企業は、『良いものが安ければ売れて当然』という発想があるのか、ブランドをあまり大切にしません。(中略)

日米摩擦も、いまは沈静化していますが、かつては、『ダンピング』(不当廉売)ということが、かつては、よく、問題になりました。日本人は、『なぜ良いものを安く売ってはいけないの?』と考え、米国人は、『良いものを、なぜ、そんなに安く売るのだ?』という、元々のすれ違いがあったのではないかと、個人的に想像しています。最近の流れは、日本企業もデフレを経験し、『良い物を高く』という方向に動いているようです」(173ページ)

私も、佐藤先生と同じことを感じていました。大企業がローコストオペレーションによって競争を優位に進めようとする場合は別ですが、経営資源の小さな中小企業でも価格競争していることが珍しくありません。しかし、現在は、原材料費や人件費の上昇という要因があるとはいえ、ユニクロでさえ値上げをせざるを得ない時代なので、低価格戦略を継続することは、あまり賢明とは言えなくなりつつあると思います。

では、これまで、なぜ、日本の会社があまり高い価格で商品を販売してこなかったのかという理由ですが、ひとつには、「高値をつけてもうけすぎると、社会から批判される」というようなプレッシャー(それが本当に存在するかどうかは明確に証明できませんが…)があったのかもしれません。でも、それだけでなく、品質などでの勝負を避けて、価格で勝負しようという、安易な考え方も多いのではないかと、私は考えています。ただ、現在は、価格での競争は難しくなっているので、品質での勝負しか選択肢がなくなりつつあると思います。このことは、ある面で、事業を成功させることができる人は限定的になってきているということでもあると言えるでしょう。

2023/2/12 No.2251