[要旨]
経営コンサルタントの今枝昌宏さんによれば、ブルーオーシャンは、顧客に提供する価値の要素の新たな組合せを提供することで新たな顧客セグメントを創造し、競合のいない新たな市場空間を作り出し、そこを独占して利益を上げるビジネスモデルで、例えば、俺のイタリアンなどを運営する俺のは、高級食材を一流シェフが調理した料理を提供する一方、立ち飲みにすることによって設備回転率を上げて低価格を実現するという新しい価値の組合せにより、業績を伸ばしているということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの今枝昌宏さんのご著書、「ビジネスモデルの教科書-経営戦略を見る目と考える力を養う」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、今枝さんによれば、デファクトスタンダードは、モノやその規格を自社で作成し、それが事実上の標準として世の中に受け入れられることによって更なる販売を確保し、利益を上げるビジネスモデルであるということについて説明しました。これに続いて、今枝さんは、ブルーオーシャンについて述べておられます。
「ブルーオーシャンは、顧客に提供する価値の要素の新たな組合せを提供し、それによって新たな顧客セグメントを創造して、競合のいない新たな市場空間を作り出し、そこを独占して利益を上げるビジネスモデルです。例えば、『俺のイタリアン』や『俺のフレンチ』などを運営する『俺の』は、高級食材を一流シェフが調理した料理を提供する一方、基本的に居抜きの店舗を使って設備投資を抑制し、立ち飲みにすることによって設備回転率を上げて低価格を実現するという新しい価値の組合せを提案して、従来の高級店とも立ち飲み居酒屋とも異なる顧客を惹きつけて急成長をしています。
長距離路線バスの運行事業者であるWILLER EXPRESSは、高速バスに快適なシートを設置して、今まで鉄道を利用していた長距離旅客の一部を取り込み、業績を伸ばしています。(中略)ブルーオーシャンは、新しい価値の組合せを作り出し、それを求める新しい顧客によって新市場を創造します。その新たに創造された市場には当然ながら競合がいませんから、存分に成長し、利益を上げることが可能となるわけです。
競合のいない空間を如何に確保するか、ということは戦略の基本ですがブルーオーシャンモデルでは従来市場とは違う新市場を今までの市場の周辺に新たに創造することによってそれを実現するのです。新市場を創造するためには、既存の製品やサービスと比較して、その価値の組合せの違いが十分メリハリの利いたもので、かつ従来にないものでなければなりません。
従来の製品・サービスとの違いが十分に出せないと、既存の市場との混同が起こり、競合のいない空間の創造とはならず、競合から逃れることができないからです。また、従来の顧客とは異なる顧客に訴求して市場を創造する必要があるので、その新たな顧客に対して目立っているものでなければならず、その意味で十分にインパクトのあるものである必要があります。
『俺の』では、『料理は今までのレストランに比べて格段に上質だが空間についてはかなり狭く立ち食いである』とか、WILLER EXPRESSでは『電車と比べてシートはゆったりとゴージャスであるが移動速度は遅い』というように、価値の組合せがマイケル・ポーターの説くような低価格と差別化というように二極化ではなく、ある要素については今までにないものであったり、あるいは今まで以上に顧客期待に応え、他の要素は抑制したり、提供を差し控えることによって価格を抑えるというようにメリハリを利かせながら、従来にはない価値の組合せを作り出します(109ページ)
ブルーオーシャンはあまりにも有名なので、改めて詳しい説明はいらないと思います。ただ、私は、ブルーオーシャンを狙って事業展開をすべきということは、多くの方が理解できると思いますが、その一方で、コロンブスのたまごのように、それを見つけることは難しいと感じています。最近の事例では、作業服を販売しているワークマンが、アウトドア製品は専門店で高級品ばかりが販売されているものの、低価格品は販売されていないことを見出し、アウトドア製品を販売するワークマンプラスを2018年9月に開店したところ、2020年3月期の同社のアウトドア部門の売上は、400億円になったということです。
これは、後から見れば、低価格のアウトドア製品の需要は多いだろうということは、ほとんどの人が考えますが、ワークマンプラスが出店されるまで、それに応える店がなかったということは、実は、ブルーオーシャンを見つけることは簡単ではないということだと、私は考えています。したがって、ブルーオーシャンについては、理屈で考えるよりも、日々、発見のための努力を重ねることが大切だと思います。
そして、ブルーオーシャンは、中小企業でも十分に事業展開が可能だと思います。例えば、東京都台東区にある、ホワイトローズという会社は、高級ビニール傘という需要を見出し、正社員2名、パート従業員7名という規模で、1億円の売上を得ているそうです。したがって、売上を増やしたいと考えている中小企業は、日頃からブルーオーシャンを探す試みを続けることをお薦めします。
2026/2/28 No.3363
