鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

マーケティングの各要素はすべてが連動

[要旨]

中小企業診断士の佐藤義典さんによれば、差別化を図る戦略を選定すると、自ずと、標的顧客も絞られるということになるということです。例えば、手軽軸を選んだ瞬間に、「早い、安い、便利」を好む顧客が標的となり、密着軸を選んだ瞬間に、「自分のことをよく知り、密着してほしい、わがままを聞いてほしい」という顧客が標的になるそうです。これは、逆にいえば、差別化軸を選ぶときには、標的にしたい顧客の求める価値を考えて選ぶ必要があるということだそうです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、中小企業診断士の佐藤義典さんのご著書、「ドリルを売るには穴を売れ」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、佐藤さんによれば、「手軽軸」、「商品軸」、「密着軸」の差別化戦略を実践するときには、いずれかひとつに絞り込まなければ、価値の高いベネフィットを提供できなくなるということについて説明しました。

これに続いて、佐藤さんは、「すベての差別化戦略を実行できないのと同じように、すベての顧客ターゲットを狙うこともまず不可能だ。資源は有限だということだけでなく、あるセグメントに売れるものは他のセグメントには売れないからだ。90年代後半以降、渋谷は10代の若者であふれかえった。

そうなると、大人の顧客が表参道や青山へと流出して、渋谷一帯の客単価が軒並み下がってしまったそうだ。大人は落ち着いた雰囲気の街がいいだろうし、若者は活気のある街がいいだろう。両方の価値を同時に満たすことはできないので、顧客を絞る必要がある。ではどのように絞るかということになるが、その基準のひとつが『自社の強みを生かす』ということだ。同じように、自分の選ぶ差別化軸によっても絞るベきターゲットは決まる。

手軽軸を選んだ瞬間に、『早い、安い、便利』を好む顧客がターゲットとなる。密着軸を選んだ瞬間に、『自分のことをよく知り、密着してほしい、わがままを聞いてほしい』という顧客がターゲットになる。逆にいえば、差別化軸を選ぶときには、顧客の求める価値を考えて選ぶ必要があるということになる。マーケティングの各要素は単独で存在するわけではなく、すペてが連動しているのだ」(117ページ)

佐藤さんは、差別化を図る戦略をどれにするかによって、標的顧客も自ずと決まるということを述べておられます。このご指摘についても、ほとんどの方が容易にご理解されると思いますが、これを別の観点から見てみたいと思います。米国のマーケティング研究者のマッカーシーは、1960年にマーケティングの4Pを提唱しました。具体的には、製品(Product)に関する活動、価格(Price)に関する活動、流通(Place)に関する活動、販売促進(Promotion)に関する活動の、4つの活動ごとに最適の活動を選択し、それを組み合わせてマーケティング活動を行うことが大切という考え方です。

例えば、佐藤さんが例に挙げた90年代後半に、佐藤さんの指す「手軽軸」の商品を提供する飲食店を出店するとすれば、当然、商品(Product)は手軽に飲食できるもの、価格(Price)は低価格のものになり、場所(Place)は渋谷駅付近、販売促進活動(Promotion)は店頭で若者向けの音楽を流すなどということになります。

4つの活動は、この例以外にもあるかもしれませんが、大切なことは、4つの活動に齟齬(そご、互いにくいちがうこと)がないようにすることで、最も効率的な活動ができるようになるということです。この説明も理解は容易だと思いますが、実際には、4つの活動に齟齬が起きることがあります。私が齟齬で最も多い例は、お店の名前(Promotion)だと感じています。

高級感のある製品を販売する場合は、標的顧客を限定的にするので、店名から連想されるイメージが大切だと思いますが、手軽な商品を販売するときは、なるべく多くの顧客を標的にするので、店名から商品がすぐに連想されることが望ましいでしょう。例えば、「丸亀製麺」や「磯丸水産」などは、店名から商品をすぐに連想できますが、必ずしもそうではないことが少なくないと感じてます。話しが少しずれましたが、販売活動に関する戦略と、標的顧客は齟齬がないようにすることが大切です。

2025/8/6 No.3157