鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

自信のある商品は高価格の方が売れる

[要旨]

ある八百屋さんでは、農家から直接仕入れた極上のりんごを、3個1,500円で販売したところ、すぐに完売になったそうです。このことから、自信のある商品は、高価格で売った方が売れるということが分かります。もちろん、価値のある商品をそろえることは容易ではありませんが、中小企業では価格での訴求が難しいことから、付加価値で訴求することが成功の鍵になると言えます。


[本文]

今回も、中小企業診断士の渡辺信也先生のご著書、「おたく以外にも業者ならいくらでもいるんだよ。…と言われたら-社長が無理と我慢をやめて成功を引き寄せる法則22」を拝読し、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。渡辺先生は、同書で、成功を引き寄せる22の法則をご説明しておられますが、その中でも、「法則9:経営者の自意識がお金と人を引き寄せる」がとても参考になりましたので、ご紹介します。

「私の知人に、八百屋さんがいます。特に、果物がだいすきで、珍しい商品を仕入れるのが楽しくて、遠くの農家さんに直談判して仕入れさせてもうらうそうです。そして、そうした果物を、これは、誰が食べても美味しい!こんな美味しいものは初めて食べた!と言われるのが嬉しくて仕方がないそうです。そんな八百屋さんが青森から極上のりんごを仕入れました。甘いだけでなく、シャキシャキ感が半端なく、美味しいりんごです。いくらで売ろうか悩んで、最初、3個300円くらいで売ってみました。普通の値段なので、価値が伝わらず売れません。

そこで、打ち出し方を変えて、商品の特徴や希少性を前面に出して、愛情たっぷりのPOPを作って、3個1,500円で売り出しました。結果は、すぐに完売になりました。自信のある商品は、愛情を表現して、高価格で売った方が売れる。しかも、その方がお客様も喜んでくれるということを知りました。八百屋さんも、高い評価を設定するからには、中途半端なものは提供できないので、良いものを提供しようと覚悟が決まります。後日談として、お客様から、あのりんご、今まで食べたことがない美味しさで感激したというお声をいただき、良い物を提供するということが快感で、この方向で進もうと決めたそうです」(117ページ)

この八百屋さんの事例のように、よい商品をそれに見合った価格で販売すればうまくいくということは、ほとんどの方が頭では理解できると思います。しかし、よい商品と分かっていても、高い価格で販売することは、かなりの決断を要することが多いと思います。それは、価格を高くしたことで商品が売れなくならないか、値上げをしたことでお店の評価が下がらないかという懸念があるからだと思います。これについては、一部はあてはまると思います。すなわち、ある程度の顧客は、値上げによって自社から離れたり、不満を述べたりするでしょう。

しかし、価格面での不満を持つ顧客は、どんな店にとっても、あまりありがたい顧客ではありません。そういう顧客がまったく利益をもたらさないとは言えませんが、価格で訴求しないと利用してくれない顧客に対して労力を注ぐのであれば、価格にかかわらず自社を利用してくれる顧客に対してもっと労力を注ぐ方が、より多くの利益を得ることができるようになるでしょう。実は、自社に利益をもたらしてくれている本当の顧客は、経営者や従業員に聞こえるように不満を言ってくる顧客ではなく、いつも黙って自社を利用してくれている顧客です。

ただ、普段は、そのような顧客からの評価は、経営者や従業員は気づきにくく、すぐに不満をいう顧客にばかり目が行ってしまい、そういった顧客に対してだけ注意が向いてしまっているのではないでしょうか?ですから、値上げをすることは、本当に自社を支持してくれている顧客と、そうでない顧客を選別するよい手段になると思います。ただし、さらに問題なのは、商品を値上げしたとき、その価格に見合うだけの価値を提供し続けることができるかどうかということだと思います。経営者が値上げを決断できないもうひとつの理由は、これだと思います。

これは、確かに難しい課題なのですが、経営資源の小さな中小企業では、低価格戦略で大企業と勝負することはできません。したがって、高付加価値戦略しか選択できないのです。これができない中小企業は、価格競争しかできないので、大企業との競争に敗れるしかなくなります。ここは厳しいところですが、事例の八百屋さんのように、よい商品を仕入れてそれに見合った価格で販売するということを実践すれば、中小企業であっても事業を発展させることは十分に可能と言えるでしょう。

2023/4/5 No.2303