[要旨]
会員制ヘアサロン、ルパッチインターナショナルのオーナーの中谷嘉孝さんによれば、融資はなるべく利用しない方が望ましいものの、融資を受けざるを得ないこともあるので、そうであれば、業績が好調なとき、すなわち、融資を受ける必要がないけれど銀行が融資をしたくなるタイミングで融資を受けることが、パワーバランスの観点からも有利な条件で契約できるということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、ヘアサロン、ルパッチインターナショナルのオーナーの中谷嘉孝さんのご著書、「リピート率90%超!あの小さなお店が儲かり続ける理由」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、中谷さんによれば、従業員は財産と言われますが、会社の方針に沿って働いてくれる従業員でなければ財産とは言えないので、そのような従業員を育成することが経営者に求められているということについて説明しました。
これに続いて、中谷さんは、銀行からの融資は、業績がよいときに契約するとよいということについて述べておられます。「かつて、事業の借金が増えるたび『借金も財産のうちだよ』などと慰められてきた。だが、おそらくこれはパブル時代の幻想だ。確かに、借金の利子を遥かに凌ぐぐらいに地価が上がっていた時代はそれも通用したかもしれない。有望な若者に投資するという『気分』もこの時代にはあっただろう。時代も国も、どんどんよくなる。おそらくそんな前提のもとでつくられたのが『借金も財産』という薄っペらい格言だった。
しかし、言うまでもなく借金は借金だ。経営者にとっては、重荷以外の何ものでもない。借金は、しないで済むならしないに越したことはない。だが、ビジネスをしていれば当然、そうもいかないことも多々あるだろう。その場合は、理想的なお金の引っ張り方というものがある。お節介かもしれないが、これも一応お伝えしておこう。率直に言うと、借金は、資金が全然必要のない時にこそ借りるベきである。銀行は、会社や商店を助けるために融資をしたいのではなく、あくまで銀行側の都合、もしくは融資担当者の都合で融資したいのだ。
ゆえに、こちらが借りたいタイミングではなく、銀行側が貸したいタイミングである時が、一番パワーバランス的にも優位に立て、金利も優遇されるケースが多い。現在のローン残額が残り僅かになった時、必ずといっていいほど取引銀行からのアプローチが来るはずである。その時に、たとえ使う予定がなくとも低金利で借り、寝かせておくのが得策だ。資金というのは、いざ借りたい時には、なかなかいい条件で借りられないものである。反対に、使うアテのない現金が口座にあることで、気持ちに相当ゆとりを持つことができるだろう」(174ページ)
銀行の融資姿勢は、しばしば、「晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる」と揶揄されます。理想は「雨の日に傘を貸す」ことなのですが、現実的に、大企業は中小企業と比較して、経営環境の影響を受けやすいことから、銀行としても「雨の日に傘を貸す」ことが難しいという面があります。また、中谷さんもご指摘しておられるように、「晴れの日」の方がパワーバランス的に優位に立つことができるという面があります。さらに、これも中谷さんが「使うアテのない現金が口座にあることで、気持ちに相当ゆとりを持つことができる」とご指摘しておられますが、不測の事態への備えるということにもなります。
したがって、やや納得できない面もあると思いますが、「晴れの日に傘を借りる」ことが得策と言えるでしょう。ただ、雨の日に傘を借りる方法はあります。それは、当座貸越契約を結ぶことです。例えば、極度額(限度額のこと)1億円の当座貸越契約を銀行と結んでおけば、会社はいつでも銀行から1億円までの融資を受けることができます。この当座貸越契約は、契約を結ぶ時点で融資審査をしているので、実際に融資を受けるときは融資審査は行いません。むしろ、契約上、銀行は会社の請求を断ることはできないことになっています。
とはいえ、このような当座貸越契約は、逆に言えば、どんな会社でも契約できるわけではありません。ある程度、会社の経営基盤がしっかりしている必要があります。ですから、「雨の日に傘を借りたい」経営者の方は、まず、経営基盤が固まるまでは、「晴れの日に傘を借りる」ようにし、徐々に経営基盤を固めていくという手順を踏む必要があるでしょう。もちろん、それと同時に、会社自身も、経営環境が「雨の日」にならないようにする努力も必要となるでしょう。
2025/9/10 No.3192
