鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

ミッションに共感している社員が財産

[要旨]

会員制ヘアサロン、ルパッチインターナショナルのオーナーの中谷嘉孝さんは、かつて、能力の高い店長が独立したために、一時的に業績は悪化したものの、新たに店長を引き継いだ若い従業員の方が、中谷さんの経営哲学を吸収し、懸命に働いたことから、顧客からも応援されるようになり、業績は前店長時代よりも向上したそうです。このように、従業員は財産と言われますが、会社の方針に沿って働いてくれる従業員でなければ財産とは言えないので、そのような従業員を育成することが経営者に求められているということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、ヘアサロン、ルパッチインターナショナルのオーナーの中谷嘉孝さんのご著書、「リピート率90%超!あの小さなお店が儲かり続ける理由」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、中谷さんによれば、上位20%の優良な顧客で売上の約80%を占めているというパレートの法則がありますが、プランド戦略の肝は、下位80%の顧客を捨て、上位20%の顧客との取引を深める、すなわち「狭めて捨てる」という手法であるということについて説明しました。

これに続いて、中谷さんは、社員が財産になる条件について述べておられます。「もう十数年も前になるが、僕の経営するサロンの店長が、立て続けに独立をするという時期があった。他でもない弟子たちの成功は、師匠である僕としても鼻が高く、当然喜びもひとしおであった。だが、突如としてビッグエース2人を欠いたサロンは大ピンチ。

あいにく次に続く人材が育っていなかったことに加え、新卒の募集もかけておらず、結局はごく最近スタイリストデビューを果たしたばかりの若い青年2人が、新店長として、それぞれの店の舵取りをすることになったのである。ベテランの域だった前店長たちに比ベ、経験の浅い新店長たちは、今思えば本当に大変だったと思う。それにより当初は、足が遠のいたお客樣もいたし、あまりよくない口コミも書かれたりした。

それが僅か2か月後、2大エースを失った上に人数的にも手薄になったはずの両店の売上は、あろうことか大幅に前年度比を上回っていたのである。この不思議な現象を冷静に分析すると、ピュアな2人の新店長は、右も左もわからぬゆえに僕の経営哲学を一心不乱に吸収し、周りも必死な2人に触発されて、彼らをなんとか盛り立てようと一致団結。そして何より、そんな空気を察してくれた常連のお客様たちが、文字通りサポーターのように優しく支え包んでくれたのだ。

力強くも美しいスパイラル。大人の優しさって本当に素晴らしい。若い2人を立派な店長に育てあげ、サロンのプランドを崖っぷちから救ったのは、蓋を開ければオーナーの僕などではなく、他でもないお客様だったのである。経営者になって30年以上経つが、この時ほど僕は、コミュ二ティーの素晴らしさ、力強さ、そして温かさを感じたことはなかったと思う。僕の知る限り、社員の気持ちに妨害されて前に進めない会社が多く存在する。

例えば新橋あたりの居酒屋で、延々と会社や上司の愚痴を並ベ立てているサラリーマンたちと居合わせる場面が多々あるが、これらの輩があなたの会社の社員だとしたら、それでも財産だと言えるだろうか。正直言ってて、僕ならいらない。経営者なら、これは認識しておいた方がいいと思うが、使う側と使われる側では明らかに立場が違う。使われる側にいる者は、多かれ少なかれ無意識に会社に依存しているがゆえに、たとえどんなに好条件を与えても、少なからず不平不満は出てくるものなのである。

所詮この世は、上見ればキリなし、下見てもキリなしだ。優秀な社員のやる気やスキルは、確かに会社の『資本』にあたるが、社員の愚痴やマイナス感情は、はっきり言って『借入金』である。経営者は、社員の不平不満などに、いちいち耳を傾けていては仕事にならない。そんな雑音は右から左でいいのである。経営者のやるべき仕事は『志』をブレずに持ち、勢いをつけることである。

ビジネスというのは結果がすベて。会社の業績アップが、自分の誇りや達成感、そして未来ヘの希望に繋がった時、すベてはOK、まるく収まるものである。つまり、人は城、人は石垣。というのは、ひとつの理念のもとに、一枚岩になった仲間であるからこそ使える表現だ。単純に『社員が財産』なのではない。経営者の掲げるミッションに、『共感し、わかり合えた社員こそが財産』なのである」(152ページ)

事業活動は組織的活動ですから、直接、事業活動を行っている従業員の方たちの足並みが揃うことによって、より組織的な活動ができるようになります。ですから、経営者の方は、事業活動の成果を高めるためには、従業員の方の足並みを揃える必要があるわけですが、その具体的な方法は、中谷さんが述べておられるように、ミッションを共感してもらったり、経営者自身や幹部従業員が、他の従業員の目標となるような行動を示すということでしょう。

もちろん、従業員の方の足並みを揃えるという働きかけは、頭で考えるよりも容易ではないでしょうし、また、1年や2年かけても効果は現れないかもしれません。ただ、強力なブランドをつくり、基本価値を高めるためには、従業員の方の足並みを揃えるための働きかけを避けることはできません。経営者の方からみれば気が遠くなるかもしれませんが、このような働きかけを継続できるかどうかが、現在の経営者に最も求められていると、私は考えています。

2025/9/9 No.3191