[要旨]
公認会計士の林總さんによれば、事業活動で費用を支出しなければ利益を得ることはできないものの、費用をかけすぎると赤字になってしまうため、費用を的確に分析することが重要であり、そのために、費用について、変動費と固定費、直接費と間接費、管理可能費と管理不能費といった切り口で分類を行い、より精緻な経営判断ができるようにすることが大切だということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、公認会計士の林總さんのご著書、「騙されない会計」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、林さんは、ワインがすきなので、ある百貨店のワインの試飲会に参加し、タダでワインを試飲しますが、その結果、安いワインではなく、高いワインを購入することになり、百貨店側は、試飲用のワインのコストを十分に回収することができるということですが、このように、「タダ」ビジネスは、「タダ」の部分を誰かが負担していますが、利用者にはお得感を打ち出すことができ、効果的な販売方法だということについて説明しました。
これに続いて、林さんは、管理会計の重要性について述べておられます。「費用をかけなけれぽ利益は生まれません。しかし、かけすぎると赤字になる。この塩梅が大切なのです於、なにしろ費用は目に見えません。会計が経営情報といわれる所以は、見えない用の可視化にあります。『およそ企業の内部には、プロフィットセンターはない。内部にあるのは、コストセンターである。技術、販売、生産、経理のいずれも、活動があってコストを発生させるということだけは、確実である。
しかし、成果に貢献するかどうかはわからない』(ダイヤモンド社刊『新訳創造する経営者』より)P.F.ドラッカーの有名な言葉です。会社の中ではいろいろな活動が行われています。しかし、どこからも利益は生じません。営業部が利益をもたらしている、と信じている人もいるようですが、技術、販売、生産、経理といった部門同様、費用を消費するコストセンターにすぎない、とドラッカーは言っているのです。では、真のプロフィットセンターはどこか。
『組織のなかには、コスト・センターがあるにすぎない。プロフィット・センターとなるものは、不渡りにならない小切手を渡してくれる顧客である』(ダイヤモンド社刊『明日を支配するもの』より)とはいえ、会社を構成する部門はただ費用を消費しているだけではありません。費用を使いながら価値を創造しています。こうして会社全体で作り上げた価値の総額が売上です。その売上代金を顧客が支払ってくれる。売上高が費用を上回った額が利益です。請求書見れば、何を、どの得意先に、いくらで売ったのかは簡単に分かります。しかし、費用は簡単には分からない。
そこで管理会計の出番になるわけです。まず、費用を分類する。材料費なのか、部門費なのか。部門費なら、給与なのか、動力費なのか、交通費なのか。これらの費用が売上に対して変動的か固定的か。あるいは、価値を付与される側(直接費)か、付与する側(間接費)なのか。その費用は部門責任者が管理できるか(管理可能費)、できないか(管理不能費)、といった切りロで分類、集計して、経営の判断に利用するのです。どんぶり勘定は、費用が見えないまま、勘と経験と度胸で意思決定を行うこと。危険というほかありません」(136ページ)
プロフィットセンターとは、もともとは、利益獲得に責任を負う部門という意味であり、事業部制を導入している会社の、単位組織である「事業部」のことを指します。ドラッカーは、「会社内部にプロフィットセンターはない」と述べているということですが、彼は、本来の意味でのプロフィットセンターの意味ではなく、利益が発生する場所という意味で使っているのだと思われますので、ご注意いただきたいと思います。
話を本題にもどすと、林さんは、費用について、「(事業活動で発生した)費用が売上に対して変動的か固定的か。あるいは、価値を付与される側(直接費)か、付与する側(間接費)なのか。その費用は部門責任者が管理できるか(管理可能費)、できないか(管理不能費)、といった切りロで分類、集計して、経営の判断に利用する」と述べておられますが、費用を精緻に分析することは、精度の高い経営判断を行うための重要な要素です。会社の業績が悪い時、その対策として真っ先に思い付くことは、費用の一律削減です。でも、ドラッカーが「技術、販売、生産、経理のいずれも、活動があってコストを発生させるということだけは、確実である。
しかし、成果に貢献するかどうかはわからない」と述べているように、「成果に貢献する費用」を削ることは、かえって業績を悪化させてしまいます。だからこそ、「どんぶり勘定」ではなく、精緻な費用の管理が重要になるということです。中小企業経営者の方の中には、「机の上で数字とにらめっこするよりも、現場に出る方が利益に結び付く」と考える方が多いと私は感じていますが、現在は、「空振り」を減らし、確実にヒットで出塁できるようにするためのデータ収集が重要になりつつあると、私は考えています。
2026/2/8 No.3343
