鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

情報格差をなくすことで不満がなくなる

[要旨]

良品計画の元社長の松井忠三さんによれば、無印良品には毎朝、店に社員が出勤してきてパソコンを立ち上げると、画面にその日にやるべき業務や予算目標、伝達事頂が自動的に表示される「朝礼システム」があるそうですが、こうすることで、各店舗に朝礼で伝えられる内容にバラつきが出ることを防ぎ、情報格差が生じないようにしているそうです。このことによって、社員が、後から重要な情報を知らされるという不満を感じることがなくなるそうです。



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今回も、前回に引き続き、良品計画の元社長の松井忠三さんのご著書、「無印良品の教え『仕組み』を武器にする経営」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、松井さんによれば、無印良品では従業員自身が満足できる商品をそろえるよう心がけることにしたそうですが、それは自分が欲しいと思う商品であれば顧客にも胸を張って薦めることができ、そしてそれを購入した顧客に喜んでもらえると、それが従業員の喜びになるからであり、そのことは従業員のモチベーションを高めることになるということについて説明しました。

これに続いて、松井さんは、社内のコミュニケーションを密にすることで、従業員のモチベーションを高めることができるということについて述べておられます。「モチベーションを上げる2つ目のポイントが、『コミュニケーション』です。これは、とにかく伝達経路をシンプルにし、社員の意見や行動に対してしっかりフィードバックすることが力ギです。部下が3人いて、1人にだけ情報を伝えなかったら、その人には不満が生じます。すベての部下に等しく情報を伝えるのは社内でのコミュニケーションの基本です。無印良品には毎朝、店に社員が出勤してきてパソコンを立ち上げると、画面にその日にやるべき業務や予算目標、伝達事頂が自動的に表示される『朝礼システム』があります。

これを導入した理由は、各店舗に朝礼を任せると、店長によって伝える内容にバラつきが出てしまい、情報格差が生まれるからです。後から重要な情報を知らされると、社員は上司や組織に対して不満を感じてしまうものです。そのようなことが起こらないように、朝礼をシステム化して、情報伝達をシンプルにしました。無印良品の場合、会社全体でコミュニケーションを徹底するためにシステム化していますが、部署レベルならメーリングリストやLINEグループなどで一括して伝達事項を伝える方法で充分かもしれません。

また、無印良品では、『生産性を2倍に、またはムダを半分に』というWH運動(W=ダプル、H=ハーフ)を行っています。これもポトムアップの仕組みづくりの一環なのですが、各部門に改善のテーマを決めてもらい、成果を出せた部門には『松井賞』、『ホームラン賞』といった賞で表彰し、わずかではありますが金一封も渡しました。このように、『あなたの働きを認めています』というフィードバックもコミュ二ケーションの一つです。賞を与えるところまではしないにしても、部下の仕事を評価するよう心がけるだけでコミュニケーションは円滑になります。そして、部下のモチベーションも保てるようになるでしょう」(140ページ)

組織論研究の第一人者のバーナードが、組織の三要素として、共通目的、貢献意欲、コミュニケーションを挙げていることは広く知られています。その一方で、会社でコミュニケーションを活発にすることは後回しにされがちであるのではないかと思います。この件については、かつて、業績が低迷していたテーマパークのサンリオピューロランドの業績を回復させたことで知られる、サンリオピューロランドを運営するサンリオエンターテイメント社長の小巻亜矢さんのご著書、「サンリオピューロランドの魔法の朝礼」が参考になります。

同書によれば、小巻さんは、1回約10分の朝礼を、1日に12回行うようにしたことで、同社の業績が回復したということです。まず、朝礼を12回も行う理由について疑問に感じる方が多いと思いますが、これは、パートタイムの従業員の方はそれぞれ出勤時刻が異なるため、全員が朝礼に参加できるよう、12回行うことにしたということです。ですから、早く出勤する方は早い時刻に開かれる朝礼にだけ参加することになり、遅く出勤する方は遅い時刻に開かれる朝礼にだけ参加することになります。こうすることで、出勤する時刻が異なっても、全員が同じ情報を得ることができます。

そして、朝礼で情報を共有することは、当日のイベントなどをきちんと把握できるため、ゲストから質問されてもきちんと回答できるようになり、そのことがゲストからの評価を高め、業績の向上につながっているようです。また、朝礼では、接客の方法など、短時間の研修も行われており、そのことで従業員の方のスキルアップも行っているそうです。こうした頻繁な朝礼の実施によって、従業員のスキルアップ→顧客からの評価の向上→従業員のモチベーションアップという好循環が起きているようです。

一般的には、10分の朝礼を1日に12回も行うことは、2時間も朝礼を行うことになり、時間を無駄にしていると考える方も多いと思いますが、同社のように効果の大きい朝礼が行われるのであれば、2時間の朝礼は無駄ではなく、業績向上のために欠かすことができないものと考えることができます。繰り返しになりますが、朝礼などの時間は直接的に売上を得る活動ではないことから、なるべく短い方が好ましいと考えられがちですが、良品計画やピューロランドの例から、従業員の方のモチベーションを高めたり、サービスの質を高めたりするためには重要な要素であると思います。

2026/1/5 No.3309