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良品計画の元社長の松井忠三さんによれば、同社は、「くらしの良品研究所」というサイトを立ち上げ、お客様とコミュニケーションをとりながら商品開発をしていく仕組みを整え、その代表例として、体にフィットするソファを開発し、あまりに快適すぎて立ち上がれなくなるなどとSNS上でも話題となり、累計で200万個以上も売れたそうです。このように、くらしの良品研究所では、自分の声がどう商品に反映されているのかがわかるので、お客様も積極的に参加してくれるようであり、こうした仕組みが無印良品の商品力を強化することに役立っているということです。
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今回も、前回に引き続き、良品計画の元社長の松井忠三さんのご著書、「無印良品の教え『仕組み』を武器にする経営」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、松井さんは、良品計画の社長に就任した当時、同社の業績は低迷していたため、全国の店をまわり、現場の意見をきいて事業改善に反映させたそうですが、このように、今の時代のリーダーに必要なのはカリスマ性ではなく、現場でも自由にものをえる言えるような風土をつくり、その意見を仕組みづくりに反映していく能力だということについて説明しました。
これに続いて、松井さんは、顧客の要望を商品の改善に取り入れる仕組みも大切であるということについて述べておられます。「よく『クレームは宝』といわれていますが、お客様の声を活用する具体的なシステムを整えている会社は少ないのではないでしょうか。『お客様の声を集める』仕組みは大事です。無印良品にも、電話やメールなどで、お客様からの要望が毎日のように寄せられます。『商品がほつれている』、『前に買ったものよりゴムが緩い』といったご指摘もありますし、『キャスター部分の交換はできるのか』という問い合わせもあります。
こうしたご意見は、『声ナビ』というソフトに入力し、毎週一回、関係者でチエックし、商品に反映するかどうかを決めています。同時に、『くらしの良品研究所』というサイトを立ち上げ、お客様とコミュニケーションをとりながら商品開発をしていく仕組みを整えました。くらしの良品研究所には、『蒸れない帽子をつくれませんか』、『このサイズの机をつくってほしい』など、さまざまなリクエストがあります。それも週一回、関係者で吟味し、商品化するかどうかを決めます。
お客樣の声から生まれた商品の代表格は、なんと言っても『体にフィットするソファ』でしょう。四角いポックス型のソファの中身に微粒子ビーズを使用し、伸縮性の異なるカバーをかぶせることで、よりかかっても上に寝転んでも身体になじむ仕様になっています。これは、『部屋が狭くてソファが置けないならば、大きなクッションにソファの機能を付けたらどうだろう』というお客様のリクエストから生まれました。
あまりに快適すぎて立ち上がれなくなるなどとSNS上でも話題となり、累計で200万個以上も売れている大ヒット商品です。くらしの良品研究所では、自分の声がどう商品に反映されているのかがわかるので、お客様も積極的に参加してくれるのでしょう。こうした仕組みも無印良品の商品力を強化することに役立っています。クレームもリクエストも、実際に役立ててこそ、本当の宝になります。そう考えると、どの企業にも、アイデアの宝が山ほど眠っているのではないでしょうか」(42ページ)
この、顧客の要望を商品開発に取り入れるということは、ある意味、どんな人でも思い付く改善方法です。したがって、業績を改善したいときは、顧客の要望を取り入れれば、すぐに業績を改善できそうなのですが、それを実践している会社はあまり多くないように感じます。とはいえ、私もその明確な理由は把握できていないのですが、その理由として考えられることは、顧客の要望を取り入れることに多くの労力がかかることが、それを実践する障壁になっているのではないかと思います。
良品計画でも「くらしの良品研究所」というサイトを立ち上げて、顧客の要望がどのように商品開発に反映されたかをレポートしていますが、このような労力を避けたいと考える会社も多いのではないでしょうか。そこで、私は、このような労力自体は避けることはできないものの、自社を支持する顧客が増えるための作業と捉えるひとつの方法と理解すればよいのではないかと考えています。すなわち、顧客の意見が反映されれば、顧客は必ずその商品を買ったり、知人に薦めたり、SNSに感想を投稿してくれたりします。
このような口コミ効果は大きく、くらしの良品研究所にかけた労力が十分に報われるのではないかと思います。同様の成功事例に、西友の「みなさまのお墨付き」というプライベートブランド商品があります。11月21日に宣伝会議のWebPageに掲載された記事によれば、「『みなさまのお墨付き』は、第三者機関が実施する厳正な消費者テストで80%以上の支持率を獲得した『良いのに、安い』商品だけを提供するブランド」です。
さらに、この記事には、西友を買収したトライアルが、メガセンタートライアル福岡空港店をリニューアルオープンした際、「みなさまのお墨付き」400品目を販売したそうですが、想定を上回る売上を記録したそうです。というのも、昨年九州から西友が撤退していたため、「みなさまのお墨付き」を買いたいというニーズがあったということです。繰り返しになりますが、顧客の要望を取り入れた商品開発は労力がかかるものの、効果は大きいことから、業績が低迷している会社の経営者の方には、その改善方法のひとつとして検討することをお薦めします。
2025/12/16 No.3289
