鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

コンサルタントと対立することは無意味

[要旨]

コンサルタントが、顧問先の従業員から、「現場を理解していない人の提案を受けることはできない」という主張を受け、対立することがありますが、そのような主張は現状を変えたくないという考えによるものであり、従業員がそのように考えていると、コンサルティングを受けることは無意味になってしまうということに注意が必要です。


[本文]

前回は、良品計画の元社長の松井忠三さんによれば、経営戦略策定や人材育成など、社内やでは解決できない問題が出てきた場合、コンサルタントに頼ることを考える経営者がいると思いますが、新たな気づきや最新の情報を仕入れるために相談することは有益ではあるものの、仕組みづくりや組織改革の実行をコンサルタント任せにしてはならず、自分で問題点を発見し、それをどう直せばいいのかを考えない限り、自分のものにはできないということについて説明しました。

これに関連し、事業企画・事業開発領域の支援を行っている、株式会社グロースドライバーの社長の、三浦慶介さんが、東洋経済オンラインに寄稿されている記事を思い出しましたので、ご紹介したいと思います。「『現場のため、現場のためとか言って、結局は自分が動きたくないだけなんですよ』あるIT企業で業務委託のコンサルとして働いていたKさんは、吐き捨てるように言った。

それは老朽化したシステム基盤の刷新を検討する会議での出来事だった。そのプロジェクトは3年も前から『検討』が続けられており、誰も意思決定をしないままに時間だけが過ぎているという状態だった。プロジェクト推進のスペシャリストとして案件を受けたKさんは、社内の状況をスピーディに把握し、システム基盤の刷新が必要不可欠であるという見解と、進めるための計画案を提出した。

すると、情報システム部長がいきなり激怒したのである。『もっと現場を見てからモノを言ってくださいよ!コンサルだかベンチャーだかで経験を積んできたか知らないけど、こっちは現場を必死で回してるんですよ!』言っていることはもっともらしく聞こえる。しかし前述のとおり、3年間も停滞している案件であり、いまだに現場を言い訳にするのは明らかにおかしい。

その本音は要するに『これまでどおり、何も変化したくない』ということだ。通常なら怖気づく人も多いだろうが、Kさんは非常に肝の据わった人である。即座にこう言い返した。『それはつまり、部長としてシステム刷新をしない決断をするということですね?3年間ずっと案件を寝かせてきたと聞いていますが、今後もやらないという選択を、部長の判断のもとでするんですよね?』『現場が大変ということでしたら、いつになれば着手できるのか、部長さんから計画をご提示ください』

こう言うと、部長は黙ってしまったという。結果的に、システム部長を蚊帳の外において、システム刷新は独立したプロジェクトとして進められることとなった。特に日本企業では、このように『やらない理由を必死で主張する人』というのが多数いる。Kさんのように辣腕を振るうことができる人ばかりでもないので、多くの組織ではこの『やらない理由』のせいで物事が進まずに困っている」

私も、経営コンサルタントとして顧問先の事業改善のお手伝いをする中で、改善内容は異なりますが、Kさんと同じ経験をすることがあります。Kさんの顧問先の会社のシステム部長の、「もっと現場を見てからモノを言って欲しい」と主張は、現場にいる人の判断が正しく、現場にいない人の判断は誤りということです。そうであれば、Kさんとしては、そもそもKさんにコンサルティングを依頼せず、最初からシステム部長が主導権とってシステムの刷新を行えばよいと考えるでしょう。

こういった、コンサルタントに支援を依頼する一方で、コンサルタントの支援を否定するという矛盾は、システム部長自身に自覚があるか自覚がないかはわかりませんが、システム部長が現状を変えたくないという防衛反応から起きてしまうことであるということは、Kさん、並びに、三浦さんがご指摘する通りです。

前置きが長くなったのですが、冷静に考えれば、顧問先とコンサルタントが対立することは、単に無意味でることにとどまらず、現状は変わらないのにコンサルティングフィーが発生するという無駄な結果になってしまいます。もちろん、コンサルタントコンサルティングを依頼する時点で、すべて、顧問先とコンサルタントの意見が一致するということは難しいですが、両者の意見は一致しているという前提でコンサルティングが行われなければなりません。

このことは、繰り返しになりますが、当たり前のことであり、ほとんどの方がご理解されることであるにもかかわらず、Kさんがコンサルティングの依頼を受けた会社のシステム部長のように、コンサルタントと顧問先の従業員が対立してしまうことが起きることは珍しくないと、私は感じています。では、なぜそのようなことが起きるのかという理由については、次回、説明いたします。

2026/1/7 No.3311