鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

四半期情報開示の廃止は無意味

[要旨]

2月18日に開かれた、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループでは、岸田総理大臣の方針に反し、上場会社の四半期情報開示の廃止に、委員全員が反対しました。岸田総理大臣の方針は、誤っていることから、このWGの決定は妥当です。


[本文]

日経ビジネスの鳴海崇記者が、四半期開示に関する記事を、日経ビジネスオンラインに載せていました。記事の要旨は、2月18日午後、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの会合が開かれ、テーマは「企業による情報開示の頻度とタイミング」だった。これは、岸田総理大臣が、四半期ごとの報告書開示の廃止の方針を打ち出していることを受けてのことだが、この日の金融審で開示の廃止に賛成した委員はひとりもいなかったどころか、岸田総理大臣への反発とも受け取れる意見が続出した、というものです。

私も、金融審議会の委員の方たちと同じ意見です。四半期開示の是非は、意見が分かれているようですが、そもそも、四半期開示の目的は、会社の財務の状況の透明性を高めるものです。岸田総理大臣は、「3か月ごとの業績を気にしていると、短期的な視点による経営につながり、目先の利益ばかり追求することになるので、人材育成や設備投資を怠れば企業は思うように成長できない」と考えているそうです。しかし、前述のように、四半期開示の目的は透明性を高めることです。

また、短期的な業績を求める投資家もいることは確かですが、すべての投資家が短期的な業績を求めているとは限りません。また、短期的な業績を求めている投資家であっても、3か月ごとの業績だけで投資判断をする投資家は希でしょう。したがって、繰り返しになりますが、四半期開示の是非はあるとしても、少なくとも、四半期開示を廃止することによって、経営者が長期的な視点で経営するようになるという考え方は誤っています。

もちろん、いまの日本の上場会社に問題がないとは言えませんが、それは、四半期開示を廃止することで解決するわけではありません。すなわち、岸田総理大臣は、自らの政策を成し遂げようとする手段を誤って選択しているわけであり、このままでは、いつまで経っても、彼の政策は空回りすることになります。岸田総理大臣は、かつて、旧日本長期信用銀行に勤務していたにもかかわらず、経済政策に疎いということは明らかであり、とても残念です。

2022/3/1 No.1903

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