鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

トヨタの操業停止は意図的?

[要旨]

トヨタは、3月1日に、国内の14のすべての工場の操業を停止しました。その原因は、部品を供給する会社がサイバー攻撃を受け、システムが停止したためです。しかし、トヨタも、カンバン方式により、敢えて緩衝材的な在庫を持たないようにして自動車を製造していたことから、トヨタの操業停止の原因は、カンバン方式にもあると言えます。


[本文]

毎日新聞の報道によれば、トヨタは、「3月1日に、国内全14工場28ライン(日野自動車ダイハツ工業を含む)の稼働を停止」しました。そして、「トヨタの国内全工場が停止することによる生産への影響は、3月1日だけで約1万3,000台に達し、2022年1月の国内生産台数の約5%に相当する」そうです。この操業停止の原因は、トヨタへ部品を供給している小島プレス工業サイバー攻撃を受け、システムが停止したためということについては、すでに多くの方がご承知のとおりです。

そして、これに対し、いくつかの報道機関は、「セキュリティが脆弱な会社が狙われ、サプライチェーンが寸断された」という主旨の記事を書いています。このようなとらえ方は間違っていないと思うのですが、私は、別の観点からも考える必要があると思っています。これは、私の想像であり、トヨタには確認してはいないのですが、トヨタは「意図」して操業を停止したのだと思います。なぜなら、小島プレス工業が操業を停止したのは1日だけであり、それだけで国内のすべての14の工場の操業を停止しなければならない状態なのかというと、一般的には、それは考えにくいと私は思います。

でも、トヨタは一般的ではない方法で生産を行っています。それは、多くの方がご存知のカンバン方式です。このカンバン方式は、最低限の在庫しか持たないようにするための手法であることは言うまでもありませんが、裏を返すと、部品を供給する会社の工場が、1日だけも操業を停止すれば、自社の工場も操業を停止しなければならないリスクも含んでいるわけです。もちろん、トヨタはこれを承知の上でカンバン方式で生産しているわけです。でも、一般的には、工場の操業停止は避けたいと考える会社は多いと思います。そうであれば、ある程度の部品は工場で在庫として保有しておくでしょう。

しかし、前述のように、トヨタでは、そのような緩衝材的な在庫を持たないと決めていたため、小島プレス工業が操業停止すれば、自社も操業停止するということになったのでしょう。確かに、小島プレス工業が操業を停止した直接の原因はサイバー攻撃でしたが、部品供給をしてくれる会社が操業を停止する原因は、サイバー攻撃だけでなく、天災や事故による場合もあります。すなわち、部品を供給する会社の操業停止の原因が何であれ、トヨタは、部品の供給が停まれば、自社も工場の操業を停止することにしていることになります。

これは、工場の操業停止のリスクよりも、それを避けるための在庫を保有するコストの方が大きいという判断をしているからなのでしょう。ですから、今回の、トヨタの操業停止は、小島プレス工業サイバー攻撃を受けたことが直接の原因ですが、トヨタカンバン方式で生産をしているということも、原因の半分くらいを占めていると、私は考えています。だからといって、トヨタに部品を供給している会社が、セキュリティはあまり強化しなくてもよいということにはならないことも言及するまでもありません。

2022/3/2 No.1904

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