鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

監査

私は、かねてから、会社の事業に携わって

いる人たちの間で、「経営」という言葉が

曖昧に使われていると述べてきています

が、それと同様に「監査」も曖昧に使われ

ていると感じているので、今回は、監査に

ついて述べたいと思います。


とはいえ、監査も複雑な概念なので、簡単

に、監査の主な特徴について、ふたつ述べ

たいと思います。


ところで、監査の意味を分かりやすくする

ために、監査に似た「検査」とはどういう

意味かということを、最初に説明したいと

思います。


会社の運営で使われている、「検査」

( inspection )は、日常使われている検査

とほぼ同じ意味です。


例えば、規則通りに仕事が行われているか

どうかを確かめることが検査です。


最近の事例では、ある自動車会社が、資格

を持っていない人に、製品の検査を行わせ

ていたことが問題になりましたが、そのよ

うな規則違反がないかどうかを確かめるこ

とは、検査です。


また、国の機関や地方公共団体などの会計

の検査をしている、会計検査院の「検査」

も、この検査という意味でしょう。


一方、監査( audit )は、日常ではあまり

使われません。


デジタル大辞泉には、「監督し検査するこ

と」と、抽象的にしか書かれていないこと

から、これは、私の想像ですが、「監査」

は、英語の'audit'に対する訳語として造

られたものではないかと思っています。


では、具体的に、監査の説明に移ります

が、そのひとつめは、「保証をする」とい

う概念です。


この「保証をする」は、会計監査の例が分

かりやすいと思います。


上場会社などは、監査法人などに会計監査

を行ってもらうことが義務付けられていま

すが、その主な目的は、会社の作成する財

務報告書が信用できるものであることを、

投資家などに対して保証することです。


「確認する」ではなく「保証する」という

言い回しにしているのは、会社の『すべて

の』会計帳簿を検査していない」というこ

とです。


規模の大きな会社は、会計帳簿のすべてを

検査することは物理的に困難であることか

ら、監査法人は、監査する会社の会計シス

テムや経理規定・手順などを調査したり、

サンプルで会計帳簿を調査したりして、そ

の結果、会社の財務報告がほぼ適正にでき

あがる状態であろうと心証を得た場合、監

査法人はその会社の財務報告書の適正さを

保証します。


これが、監査法人による会計監査です。


ちなみに、監査役は会社の業務監査を行う

役割がありますが、取締役会に出席した

り、内部統制システムを調査したりして、

業務が適正であることを保証し、その役割

を果たしています。


つぎに、監査のもうひとつの意味ですが、

単純に検査を行って事業の不備を指摘する

ことに留まらないということです。


例えば、監査役などが会社の事業の調査を

行う中で、不備が多く発見されれば、その

原因は何か、改善するにはどうすればよい

かまでを、経営者などに提案する役割が求

められます。


また、現在は規則通りに事業が行われてい

るものの、現行の規則を守るだけではリス

クを防ぐことができない可能性がある場合

は、規則をより強いものにしたり、逆に、

現行の規則を守らなくてもリスクが発生し

ないと考えられる場合は、事業の効率化の

観点から、その規則を廃止したりすること

を提案する役割もあります。


このような役割から見れば、監査を担う立

場にある人、すなわち、監査役や内部監査

人は、一般的には「粗探しをする人」に思

われがちですが、本来は、会社の事業をよ

りよいものにする役割を担っています。


そして、だからこそ、会社の業務や、業界

の知識に精通した人でなければ担うことが

できない、重要かつ難しい役割でもありま

す。


ところが、現在の日本では、「監査」が形

骸化しているように思われます。


これは、日本では監査の重要性が認識され

ていないからだと思います。


このように書くと、多くの方からおしかり

を受けるかもしれませんが、「監査部門に

配属される→出世街道から外れる」と受け

止める方が多いと思います。


本来は、会社を発展させるために重要な役

割でありながら、実際には口に出さないだ

けで、内心は、「法令で定められているか

ら」とか、「株主を納得させるため」に監

査役や内部監査部門を置いていると考えて

いる経営者の方も少なくないと思います。


この理由だけではないとは思いますが、日

本の会社で不祥事がなかなかなくならない

原因のひとつは、監査部門の重要性の認識

が低いことだと私は考えています。

 

 

 

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