最近、大企業や地方銀行だけでなく、官庁
においても不祥事が相次いでおり、いった
いどうなっているのだろうかと思うことが
増えてきました。
特に、上場会社は内部統制を確立すること
が義務付けられているにもかかわらず、そ
れが形骸化しているのではないかとさえ思
えてなりません。
そこで、今回は、改めて内部統制について
説明いたします。
よれば、内部統制とは「企業等の、(1)
業務の有効性及び効率性、(2)財務報告
の信頼性、(3)事業活動に関わる法令等
の遵守、(4)資産の保全の4つの目的の
達成のために企業内のすべての者によって
遂行されるプロセス」と、定義されていま
す。
これを言い換えれば、内部統制は、会社の
事業が適切に行われるよう、ルールや業務
プロセスを明確にし、また、それを守るた
めの仕組みや活動を指します。
この内部統制の考え方は、1980年代の
米国で、多くの会社が不適切な財務報告を
行っていたことを背景に、それを防ぐため
の手法として1992年に米国の会計関係
者らによって公表されました。
2000年代になり、この枠組みを日本に
も採り入れることになり、2006年施行
の会社法によって上場会社等に内部統制が
義務付けられました。
このような経緯から見ると、内部統制は財
務報告に強い関連があると考えられがちで
すが、「経営者は、自社のすべての活動及
び社内のすべての従業員等の行動を把握す
ることは困難であり、それに代わって、経
営者は、企業内に有効な内部統制のシステ
ムを整備・運用することにより、財務報告
における記載内容の適正性を担保すること
となる。
また、内部統制システムの整備・運用を通
じて財務報告の信頼性を確保していくこと
は、業務の有効性及び効率性の確保による
情報処理コストの削減、さらには、市場に
おける資金調達機会の拡大や資金調達コス
トの削減等を通じて一定のメリットを企業
等にもたらす」と企業会計審議会は述べて
います。
これを言いかえると、経営者が適切な仕組
みを作ることによって、事業の適切さを確
保しようとする考え方といえるでしょう。
内部統制のポイントは、適切なプロセスづ
くりであって、それをきちんと整備するこ
とによって、信頼性や効率性を確保するこ
とが目的となっています。
ただ、私は、上場会社を含めて、日本の会
社の経営者が、この内部統制をどこまで理
解しているのかということに疑問を持って
います。
まず、内部統制が本当に会社の業績を高め
ることに有効なのかどうか、疑問を感じて
いる方も多いかもしれません。
しかし、上場会社は少なくとも、法律で義
務付けられています。
むしろ、上場するからには、内部統制を実
践できる会社でなければならないと理解す
べきでしょう。
もうひとつは、「ただでさえ利益を得るこ
とがたいへんなのに、内部統制もやらなけ
ればならないのか」と考える方もいると思
います。
この考え方もまったく逆であり、内部統制
すらできない会社は、経営が風任せであ
り、安定的、かつ、継続して利益を得るこ
とはできないでしょう。
私は内部統制を支持しますが、とはいえ、
内部統制を実践しさえすればそれでよいと
は考えていません。
上場する規模の会社は、社会的にも大きな
存在であり、そうであれば、それに足り得
る信頼の確保は必須です。
そのための内部統制であり、内部統制の確
立は上場会社のスタートラインに立つため
の要件です。
ただ、日本では、事業は「しくみ」である
と認識している経営者は、残念ながら少な
いと思います。
ですから、事業の柱のひとつである内部統
制の「しくみ」は軽視されがちなのだと思
います。
もちろん、内部統制だけですべてが解決す
るわけではありませんが、まず、これが改
善されなければ、ほかの改善は無意味にな
ると私は考えています。
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