自ら創業した経営者の方に多いタイプが「自分が若いときは、寝る暇もなく働いたのに…」とことあるごとに話をし、残業を嫌がる従業員に不満を漏らす方です。これについては、改めて言及するまでもなく、創業経営者と従業員の方の間では立場が違う訳ですから、そのような不満を持つこと自体がおかしいのですが、やはり、かつて苦労した方はどうしてもほかの人にもその苦労を経験して欲しいと望んでしまうのでしょう。
ところが、このような考え方は大きな会社でもいまだに見られます。有名な例では、居酒屋チェーン店を経営する会社や、広告代理店で従業員の方が自死ことが社会問題になりました。これは、かつての経営者や幹部社員が猛烈に働いたことから、それを部下にも強いるという悪しき伝統が続いてしまったのでしょう。
私が理解できないのは、100歩譲って自ら起業した方が自らの意思で長時間働くというのであれば、それは自己責任になるわけですが、雇用契約を結んでいる従業員に対して、法律違反をしてまで長時間の労働を強いる理由です。雇用したのであれば、労働法規を守るという前提で働いてもらうこになるはずです。
大手電機製品メーカーで不適切会計を経営者が法令に反して指示していた例もありますが、労務管理についても経営者が法令違反をするという例が日本に見られることは悲しいことです。法令を違反してまで業績を上げなければならなくなった時点で、経営者の方は潔く経営能力のなさを認めるべきでしょう。