[要旨]
事業に安定を求める方は、ルーティンワークなどに向いている場合が多いので、自らは起業せず、会社員として働くことが向いていると考えることができます。また、自ら起業した経営者の方は、従業員の方に対して、起業家精神を求め過ぎないことが妥当です。
[本文]
前回、ビジネスの経験の浅いビジネスパーソンは、確実に成功するノウハウを求めようとしてしまいますが、そもそも、ビジネスを確実に成功させることはできないので、そのような考え方でビジネスに臨んでいると、なかなか成功できなくなるということについて書きました。では、ビジネスパーソンは「確実に成功したい」と考えてはいけないのかというと、決してそうではないと、私(だけではないですが)は考えています。
というのは、安定性を求める人たちは、自ら起業しようとする人たちと比較して、ルーティンワークをうまくこなせることが多いからです。逆に、リスク耐性のある人たちは、ルーティンワークは退屈で苦手でしょう。したがって、安定性を求める人は、会社員として働くことで、自分の特性を活かして収入を得ることができます。もちろん、会社員として働く人は、経営者のようにたくさんの収入は得ることはできなくなりますが、その反面、安定性を得ることができるわけです。
ところで、私は、これまで、自ら起業した経営者の方が、自社の従業員の方に対し、「起業家精神」を求める例を何社か見てきています。このような会社は、すべてではないのですが、決して少なくないと感じています。そのような経営者の方が、自社の従業員の方に対し、起業家精神を持って欲しいと考える理由には、経営者自身が、起業家精神を持っていままで事業を拡大し、成功してきたという自負を持っているから、いっしょに事業活動に臨んでいる部下に対しても、同じ考え方を持ってほしいと望んでいるのでしょう。
その気持ちは理解できますが、私は、それをあまり期待し過ぎない方が無難だと思っています。なぜなら、起業家精神を持っている人は、そもそも会社員として働こうとしないし、仮に働いていたとしても、早晩、独立するでしょう。もちろん、従業員の方に意欲的に働いてもらおうと働きかけることはよいことですが、前述のように、自ら起業する人と、会社員になろうとする人は、考え方が異なるということにも注意が必要でしょう。
2022/2/18 No.1892