[要旨]
不正検査が行われていた三菱電機では、外部調査委員会の実施したアンケートに回答する前に、上司が部下の回答内容を確認することが起きるくらい、深刻な状況にあったようです。このような風土は、不正検査が行われる温床であったわけですが、このような状況に至ることを避けるためには、まず、経営者自身が、自らを厳しく律する必要があると言えるでしょう。
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東洋経済オンラインに、12月23日に、三菱電機の外部調査委員会が報告した、品質不正についての、2回目の調査に関する記事が載っていました。記事では、調査委員会が全社員に対して実施したアンケートから浮かび上がった、「ものが言えない風土」が中心に書かれていました。そのアンケートについては、「社員が、調査委員会に、回答を、直接、提出するはずなのに、上司が事前の確認を求めるという事態が複数の拠点で起こっていた」というほどだったようなので、ものが言えない状況が、相当、深刻であることが容易に想像できます。
また、東洋経済社の、直接、社員に対する取材によれば、「(製品に不具合が発生した際の)調査や対策が一通り済んでも(どうすれば本社の事業本部長に怒られないかを必死に考え、延々と報告書の文面を考え続けるので)、報告を作るのに何日もかかる。上長からの命令は絶対だから、本社からの叱責が、一番怖い、まるで軍隊のようだ」という言葉を得ているようです。このよう企業風土が、上層部が事業現場に矛盾を押し付け、その結果、事業現場では不正検査をせざるを得ない状況に追い込まれたことは明白でしょう。
ここまでは疑問の余地がないことなのですが、では、同社ではどうして、このような企業風土が出来上がってしまったのか、そして、同社と同様の会社が、日本にはいくつか存在するということについては、とても残念な心持になります。多くの経営者、管理者なら、「ものが言えない風土」は、不祥事が起きやすい状況になることは容易に理解できるであろうに、それを抑止するどころか、助長してしまう経営者、管理者が現れてしまうのはなぜなのでしょう?不祥事が起きてしまえば、会社や自分への評価を一気に落としてしまうのに、それを避けられないのはなぜなのでしょう?
これについては、管理者、経営者であっても、人間としての限界があり、一部の人は自らを律することができずに慢心してしまい、自分の地位を利用して、部下に無理難題を押し付けてしまうからとしか説明ができないのでしょうか?そうであれば、とても悲しいことです。このような、企業風土の劣化は、完全に避けることができないのかもしれませんが、会社の事業改善を働きかける役割をなりわいにしているもとして、「経営者とはどうあるべきか」を経営者の方たちに強く意識してもらうために、私も微力ではあるものの、これからも問題提起を続けて行きたいと思います。
2021/12/31 No.1843