鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

2,500万円の金利で得られるもの

[要旨]

普段から銀行と良好な関係を維持し、余裕をもった資金調達を行うことは、コロナ禍のときのようなピンチになったときに、果敢な事業展開を行うことができ、ライバルとの差を広げることができます。そして、資金繰に余裕を持つために融資を受けることによって、支払金利も多くなりますが、それは、ピンチへの備えるためのコストとして妥当と考えることができます。


[本文]

経営コンサルタントの小山昇さんのラジオ番組を聴きました。小山さんによれば、小山さんの経営する、武蔵野(ダスキンフランチャイズ事業、および、経営コンサルティング事業などを営んでいる会社)の、2020年の売上は、小山さんが社長に就任した、1989年以降で、初めての減少したそうです。ちなみに、減少額は10億円だったそうです。もちろん、売上減少の要因は、新型コロナウィルス感染症拡大の影響によるものだそうです。

そこで、小山さんは、従業委員の方の雇用を100%維持し、また、給与の100%の支給も続けると確約した上で、売上を再び増加させるよう、従業員の方に努力を求めたそうです。その結果、(恐らく月間売上高と思いますが)過去最高額に匹敵する売上や、過去最高額を超える粗利益を得るまでに回復したそうです。ここまでの内容は、雇用と給与額を維持することで、従業員の方のモチベーションを高め、業績を回復させたという、単純明快な内容です。

ただ、このような時代に、雇用維持、給与支給額維持を名言できる会社は、それほど多くないのではないでしょうか?実は、小山さんの会社は、手許流動性(現金や預金など、すぐに支払いにあてることができる資産)が約17億円あり、現在の給与を支給し続けても、1年半は事業を継続できるということを計算した上で、小山さんは前述のような約束をしたようです。しかし、17億円の手元流動性のために、支払利息額は2,500万円もあるそうです。2,500万円は決して少額ではありませんが、それが17億円の融資を受けたときの利息額とすれば、融資利率は約1.47%なので、それほど高い利率とは言えないでしょう。

そして、小山さんは、支払利息額は、会社の事業を確実に継続させるためのコストとしては、決して高くないとも述べておられます。小山さんは、小山さんからコンサルティングを受けている会社の経営者に対し、事業計画を作成し、銀行の支店長の前で発表することで、無担保、無保証人の条件で融資を受けられるようになるとご指導しておられます。でも、それは、無担保、無保証人という有利な条件で融資を受けられるようにするということを目指すというよりも、コロナ禍のようなピンチに備えて、多くの融資を受けられるように備えておくことが、本当の目的なのではないかと考えています。

もし、コロナ禍がなかったとしたら、2,500万円の支払利息は不要な資金調達コストと考えることもできますが、リスクに備えるという観点からは、小山さんは必要なコストと考えておられるし、事実、ピンチになっても果敢な事業展開ができ、その結果、売上や利益を回復できたのは、余裕のある資金繰の結果でしょう。安定的な資金調達という、一見すると地味に思える活動は、経営環境が厳しいときにこその、その大きな効果を発揮するということを、小山さんのお話を聴いて、改めて感じました。

2022/1/1 No.1844

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