私は、事業活動は、従業員の方が組織的に
活動するからこそ、ひとりで事業をするよ
りも高い成果が得られるものであり、そし
て、組織的な活動ができるようなリーダー
シップを発揮したり体制の整備をすること
こそが、経営者の役割であると考えていま
す。
ところが、「組織的な活動」とはどういう
ことなのかということは、なかなかうまく
説明できません。
私は、「組織的な活動」を、「自己都合で
活動すること(部分最適)ではなく、組織
全体のことを考えて活動すること(全体最
適)」と説明していますが、これも抽象的
です。
ところが、先日、トヨタ自動車OGで、
「カイゼンコンセルジュ」の石井住枝さん
のご著書「世界一シンプルで世界一成果が
出るトヨタ流の仕事の教科書」
( http://amzn.to/2FTxUU2 )を拝読したと
き、「組織的な活動」を説明するために分
かりやすい言葉がありましたので、ご紹介
したいと思います。
それは、「前作業は神様、後作業はお客
様」というものです。
石井さんは、仕事は「点」ではなく、連続
する「線」として取り組み、仕事を滞らせ
ている要因は何かを意識するようにしま
しょう。
例えば、製造現場で、自分の担当する作業
の前作業はどんな作業なのか、後作業はど
んな作業なのかを意識しましょう。
自分の作業は、前作業の担当者がきちんと
作業をしてくれたからできるようになって
いるので、前作業は神様と考えましょう。
そして、自分の作業は、後作業の担当者に
きちんとバトンタッチできるよう、お客さ
まに対して仕事をするように渡しましょう
とご著書でのべられておられます。
これらのことは、至極あたりまえのことと
多くの方が受け止められると思いますが、
なかなか実践されていないと思います。
でも、このようなことができるだけでも、
会社がとてもよくなるということも理解で
きると思います。
とはいえ、このようなことは、簡単そうに
思えるからこそ、逆に実践は難しく、多く
の会社経営者の方は、従業員の方の育成に
苦心しているのではないでしょうか?
その、より具体的な方法については、ぜひ
石井さんのご著書をお読みいただいて学ん
でいただきたいと思います。
もうひとつ、石井さんがご著書に書かれて
おられた印象に残る言葉がありましたの
で、ご紹介したいと思います。
「トヨタは世界一の中小企業と言われてい
ます。
その理由は、自ら考え、自らのやり方を疑
い、もっとよい方法はないかと常に自問自
答しながら、社員一人ひとりが愚直にチャ
レンジしているからだと思います。
(中略)自動車1台の利益率も決して高く
ないからこそ、技術の改良はもちろんです
が、一人ひとりが原価低減の知恵を絞り、
市場によい製品を送り出すことに取り組ん
でいます。
(中略)トヨタは『ものづくりは人づく
り』をかかげて、いまもカイゼンし続けて
いる会社でもあります」(180ページ)
私は、ここに2つのポイントがあると思っ
ています。
トヨタ自動車は、年間2兆円という日本一
の利益を計上している会社ですが、その根
幹は、中小企業と変わらない、社員一人ひ
とりの工夫の積み上げによるものというこ
とです。
「トヨタは超一流企業だから」と考える人
も多いと思いますが、一流企業でないとで
きない高度な技術によるものではなく、実
は、中小企業と同じ工夫の積み上げという
ことです。
ふたつめは、「ものづくりは人づくり」、
すなわち、よい製品はよい人材を育成する
ことで製造されるということです。
製造業であっても、人材が大切という考え
方が大切ということを改めて感じました。
そして、それは、よい製品は、組織的な活
動ができる人材によって製造されるという
ことでもあるでしょう。
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