[要旨]
中小企業の中には、経理事務があまり正確でない会社も少なくないようですが、会計データの正確さを重んじる会社は、製品の品質も優れていたり、顧客からの信頼も高いことが多いようです。
[本文]
私は、ときどき、顧問先の経営者の方から、現在の顧問税理士の方に物足りなさを感じるので、私が知っている優秀な税理士さんを紹介してほしいと依頼されることがあります。そのようなときは、幸い、私はたくさんの優秀な税理士の方を知っているので、よろこんでそのような税理士の方をご紹介させていただいています。
そして、かつて、ある顧問先に、私の知人の税理士の方を紹介したときのことだったのですが、その紹介した税理士の方から、新たに顧問契約をした会社について、「きちんと、会計ソフトの預金残高と、実際の銀行口座の預金残高が一致していて、ほっとしました」と言われたことがあります。
私は、税理士事務所で仕事をしたことはないのですが、その税理士の方の安心した表情から、税理士事務所が、顧問先の経理の正確さを維持させることに、とても苦心しているということを感じ取りました。会社の決算書は、銀行やコンサルタントなどの人たちは、いつも、完成したものばかりを見ていますが、実は、経理事務に携わっている人たちから見ると、会計取引を正確に記録することは、相当の労力がかかります。
現在は、会計ソフトの機能も高度化しているので、かつてよりは楽になっているとは思いますが、それでも、最終的には人の目で確認しなければなりません。そこで、会計処理を、単に、作業としか考えていない人が、経理事務を担当している中小企業では、会計ソフトの記録は正確になっていないことが多いようです。
これは、実践することはちょっとむずかしいかもしれませんが、会社の財務データをきちんと経営者や管理者層に伝えることが自分の使命と認識している人が経理にいれば、残高が合わないということはあまりないのですが、残念なことに、あまり使命感を持たずに、伝票を入力して終わりという感じの経理担当者しかいない中小企業の割合は高いようです。
とはいえ、そのような残念な会社は、しっかりした経理部長を雇ったり、経営者自らが経理担当者を指導・育成しない限り、正確な経理業務が行われるようにはならないので、最終的には、経営者の責任ということになるでしょう。だからといって、私は、経理業務の正確さだけが会社の課題とは思っていませんが、ちょっと話が飛躍するかもしれませんが、このような細部を詰めていない会社の経営社の方は、ほかの課題についてもそれなりにしか対応していないと感じています。
ちなみに、銀行は、1円の違算でも、夜遅くまで間違いを調べるということになっていますが、それは、もちろん、1円が惜しいからではなく、銀行は、自らの業務の信用性を重んじているからです。経理事務が正確な会社は、ほかの業務についてもきちんとしており、取引先、顧客からの信頼も高いのではないでしょうか?