[要旨]
経営コンサルタントの三條慶八さんによれば、かつて、短期融資を反復して契約し、金利だけを支払う短コロは、金融検査マニュアルで不良債権扱いされたため、あまり利用されなくなりましたが、現在は、金融検査マニュアルは廃止され、銀行も短コロ融資を増やしていることから、銀行から短コロの打診があった場合は積極的に利用することを薦めるということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの三條慶八さんのご著書、「社長のお金の基本」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、三條さんによれば、中小企業の金融機関、特に地域密着型の金融機関とつき合うといくつもメリットがあり、地域に溶け込むための人脈づくりなどに協力してくれたり、きめ細かな地域情報をもたらしてくれたりするので、最も頼りになる金融機関だといえるということについて説明しました。
これに続いて、三條さんは、なるべく「短コロ」融資を利用することが望ましいということについて述べておられます。「中小企業の多くは、返済能力以上の借入返済を抱えています。そのため、利益は出ているのに資金が回らないことがよくあります。その事情は金融庁もわかっており、金融機関に返済負担を軽くして、中小企業を支援するように求めています。このとき、使われるのが短コ口などの方策です。そうした策を知っておき、こちらから金融機関に願い出ると道が開けやすくなるはずです。
『短コロ』とは『短期継続融資』のことで、1年以内の融資契約をいいます。実際には元金を返済することはほとんどなく、金利だけを支払い、融資は継続的に借り続けられます。(このため、資金を『コロがす』イメージがあり、短コロと呼ばれています)元金分を返済しないため、資金繰りが安定する効果があり、中小企業や個人事業主にとってありがたい借入です。短コ口はかつてはよく行われていましたが、バプル崩壊で一時期、ほとんど行われなくなっていました。
しかし、2013年に金融庁が、金融緩和の一環として『正常運転資金に対して短コロで対応することはなんら問題ない』と認めたことから、最近、また短コ口が行われるようになってきています。短コ口で毎月の返済を減らせる資金を調達する短コ口は普通、『手形貸付』や『当座貸越』という形で行われます。『手形貸付』は貸付先から約束手形を出させ、その額面を融資するもの。『当座貸越』は、あらかじめ融資限度額を設定し、その範囲内であれば借り入れできるという融資です。
『当座貸越』は資金に余裕ができたときには、まとめて返済することができる、自由度の高い貸付です。また、社債を取引金融機関からすすめられたら、ぜひ取り組んでください。そうすることで会社の格付けが上がり、他行からさらに融資話がきます。短コ口が多少増えてくる傾向が見られるとはいえ、金融機関は、短コロではなく、利益が確保しやすいリスクの少ない信用保証協会付融資で長期貸付をすすめることが多く、本当の意味での中小企業の実情に合った資金需要に応えられているとはいえないのが実情です」(145ページ)
改めて短コロについて説明すると、短コロとは、短期融資の期限が到来したとき、融資を受けている会社は、金利だけを支払う一方で、融資元本は返済せず、その元本は新たな契約の融資元本として、次の期限まで融資期間を延長するという、日本独特の融資慣行を指します。これについて、金融庁検査マニュアルができた当初は、金融庁は「疑似資本」と解釈する、すなわち不良債権と見なしました。
しかし、融資相手の会社の業績がよい場合、短コロを「疑似資本」とすることは実態に合わないという金融機関からの意見もあり、短コロは、2015年に金融検査マニュアルが変更され、融資相手の会社が黒字であり、かつ、「正常運転資金」の範囲以内であれば、正常な融資であると解釈されることになりました。ちなみに、正常運転資金とは、売掛債権+棚卸資産-仕入債務で計算されます。
とはいえ、その金融検査マニュアルは2019年に廃止され、現在は、形式的には、銀行は金融検査マニュアルに縛られることはありません。そこで、三條さんの「最近、また短コ口が行われるようになってきている」というご指摘のようになっているのでしょう。私も、会社の資金繰の安定化のためには、短コロはメリットのある契約だと思います。ただ、前述したように、会社が黒字で正常運転資金の範囲内であるという条件があるので、注意が必要です。
2025/12/9 No.3282
