鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

直接金融制度は日本ではまだ未成熟

[要旨]

経営コンサルタントの三條慶八さんによれば、現在は、クラウドファンディングやエンジェル投資家からの出資など、かつてよりも資金調達の方法が増えてきたものの、日本では直接金融制度はまだ十分に成熟していないことから、基本的には銀行からの融資を利用することが望ましいということです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの三條慶八さんのご著書、「社長のお金の基本」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、三條さんは、ある経営者から、顧問税理士によって、決算書に多額の役員貸付金を計上されたため、銀行からの信用が低下したと相談されたそうですが、税理士の中には税務署から責められない会計処理をする方もいるため、顧問料を払っている顧問先を最優先し、顧問先を守ろうとする税理士を探して顧問契約を結ぶようにするとよいと回答したということについて説明しました。

これに続いて、三條さんは、クラウドファンディングだけを頼ることは避けた方がよいということについて述べておられます。「最近では銀行から借入をしないで、資金調達方法をする方法も出てきています。クラウドファンディングはその1つでしょう。クラウドファンディングとは、ある目的のためにネットなどでビジネス構想を発表して訴えかけ、多くの人々から資金を集めることをいいます。クラウド(crowd)とは大衆という意味。ファンディング(funding)は財政的に支援することを意味し、多くの場合、インターネットから呼びかけ、不特定多数の人々から比較的少額の資金を募り、それをもとに創業したり、事業展開したりするという仕組みです。

クラウドファンディングには、出資者が見返りを求めず、資金提供を受けた側はプ口ジェクトの進行状況や活動報告を行うだけという『出資型』、プロジェクトが完成したら製品やサービスを優先的に手に入れられる『購入型』、製品やサービスが完成し、得た利益から応分の配当を受ける『投資型』などの種類があります。アメリカではすでにかなり一般化しつつある資金調達法になっています。日本でも今後、盛んになる可能性は小さくないでしょう。キャッシュレス化が急テンポで進むなど、お金の世界にも新たな動きが現れ、加速しています。クラウドファンディングも今後はもっと大きな存在になっていくでしょう。

しかし、現段階ではクラウドファンディングに頼るだけでは、健全な経営はできにくいのが実情だと思います。私のところにも、こうした方法でお金を集めて起業した経営者が相談にこられるケースが出てきています。話を聞くと、事業の推移を見守るとか、結果が出るまでの時間を十分に見る姿勢がなく、とにかく、早く結果を出せといってきたり、事業についても、アレコレ勝手な口出しをされたりするというような悩みがほとんどです。個人の投資家が起業を助ける『エンジェル』にも同様の傾向が見られます。

少し前の話ですが、エンジェル投資家の支援を受けてエキナカに特化したフラワービジネスを起業したある社長がいました。この社長の場合は、事業は順調に推移していったのですが、ここが勝負時だというところにやってきたちょうどそのタイミングに、『1日も早く上場して、提供した資金を大きくふくらませてくれ』と矢のように催促されてしまったのです。仕方なく、準備不足のままマザーズ市場に上場を試みたのですが、無理がこうじて、ついには倒産してしまいました。

やがて、クラウドファンディングやエンジェルも成熟していき、起業家の実情に寄り添ってビジネスを一緒に育てていくという姿勢をもつようになれば、金融機関と並ぶ資金提供先になる可能性は大いにあると思います。クラウドファンディング、直接金融制度は日本では未熟であり、成熟を待つにはまだそれなりの時間が必要でしょう。私が相談を受けた場合は、すべての資金をクラウドファンディングに頼らず、資金の一部は銀行から調達し、銀行とのパイプをつくっておくことをすすめています」(82ページ)

三條さんが言及しておられる、最近は、クラウドファンディングという手法や、エンジェル投資家が現れるようになり、かつてよりも資金調達の方法が増えてきました。これを受けて、報道機関などは、「これからは銀行は不要だ」と報じていることもありますが、三條さんが、「クラウドファンディング、直接金融制度は日本では未熟である」とご指摘しておられるように、現在のところは、まだ、クラウドファンディングや直接金融制度は銀行融資(間接金融)にとってかわるほどの状況には至っていないようです。

一方で、「銀行は、融資を申し込んでも、いろいろ細かいことをきいてくるし、さらに、なかなか融資をしてくれないから、銀行以外のところから資金調達ができるのであれば利用してみたい」と考えている経営者の方もいると思います。しかし、三條さんが述べておられた生花店のように、エンジェルの都合で上場を迫られるということもあり、むしろ、エンジェルの方が、銀行よりも制約が多いようです。念のために言及すると、エンジェルが会社の経営に関与することが、必ずしも問題であるとは限りません。

経営者だけではなかなか解決法を見つけることができない課題も、出資者としての立場のエンジェルの助言によって、解決法が見つかることもあります。これは、出資者が銀行と同じ資金提供者ではあるものの、役割が異なることによるものです。話しをもどすと、クラウドファンディングについても、銀行融資と比較して十分とは言えない面があります。例えば、クラウドファンディングを募集したとしても、事業の魅力が少ないと、希望通りの資金が集まりません。

また、銀行は業況が悪化したときも融資をしてくれますが、クラウドファンディングでは、「業績が悪化したので、資金を提供してください」という使い方はできないでしょう。では、どうすればよいかというと、現在は銀行との良好な関係を維持することを基本とし、新たなプロジェクトを実施するときに、クラウドファンディングやエンジェル投資家からの出資を利用するとよいと思います。少なくとも、中小企業は、銀行融資を利用せずに資金調達を行うことは、現時点では難しいと、私は考えています。

2025/12/6 No.3279